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【番外編】彼のおトモダチ
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しおりを挟む「ただいまー……りょーくん、居る?」
鍵を開けてりょーくんの名前を呼んでみたけど、返事は返ってこない。
「よかった……まだ帰ってきてなかったみたい」
ホッとして靴を脱ぎ、紙袋の中を確かめようと自分の部屋に入る。
「そういえばこの紙袋、どこかで見た事あるんだよねぇ。
私、アクセサリーをほとんど身につけないからアクセサリーブランドを見聞きしてもピンと来ないんだけど」
アクセサリーに関してはど素人だけど紙袋のロゴに既視感があった私は首を捻った。
「こっちに来てちゃんとしたお店行ったのも、りょーくんのブレスレットを買った時とか…………って!! ああ!!!
そうだ! 上原さんにりょーくんの好きなアクセサリーブランドを聞いて買いに行ったじゃない!!!!」
ようやくその事に気が付き、スマホで紙袋に書かれているブランド名を検索してみる。
「やっぱりそうだ……」
ホームページに、見た事のある店舗の外観とボディピアスやシルバーアクセサリーの画像が映されていて、まさに去年りょーくんの誕生日プレゼントを買う為上原さんに教えてもらったお店そのものだった。
「っていうことはもしかして、コンビニの時よりも前にこのお店で陽介さんと会ってたって事?」
私が買いに行った日に陽介さんが勤務されてだかどうかまでは分からないけど、今日より前に2度も陽介さんと会っていた可能性が少なからずある事を知った。
中を開けてみるとネックレスが入っている。
「わぁ……素敵♪」
ピアッシングを専門にやっているお店だし去年りょーくんのプレゼント選びもしたからてっきり男性向けのアクセサリーばかり扱っている勝手に思っていたからこそ、目の前に現れたネックレスが繊細で上品なデザインである事にただただ驚いてしまう。
「わあぁ~♪ 今持ってる秋服やニットに合いそう♡」
早速鏡の前で着けてみると、その良さがますます感じられた。
チャームのデザインの素敵さと、細身のチェーンがとてもマッチしてて私好みだ。
「上原さんに御礼のメッセージ送らなくちゃ! クレーム対応から帰って来てるといいんだけど……」
文面を打ちながら、管理人さんのお仕事は本当に大変なんだなと溜め息をつく。
(夕食を食べる間もなくクレーム対応しに行かなくちゃいけないし、それ以外にも敷地内の整備とか外装工事の打ち合わせとか毎日忙しいって言ってたし……。
そうでなくても以前はコンビニ経営もりょーくんの事もやってて、上原さんにプライベートの時間ってあるのかなぁ)
メッセージを送信しながらそんな事を考えてて、ハッと思い出した。
「あー! 上原さんの彼女さんの事、陽介さんに聞いておけば良かった!!
私が……ってよりは夕紀さんの方が彼女さんの存在を気になってたし、本人に直接訊く事を前提に考えてたから陽介さんと二人きりになった段階でその事すっかり忘れてたよ!」
そう、激しく後悔をする。
陽介さんは毎朝上原さんの朝食を持ってきているって言ってたから、上原さんの恋人にも会った事あるに違いない。
「ああ~惜しい事しちゃったなぁ」
りょーくん関連の話を陽介さんと出来たのはとても有意義ではあったんだけど、やはり上原さんの恋人がどんな方かの確認が出来なかった悔しさが残っていて
「また来月、上原さんに珈琲豆を持って行くまではこの話題お預けになりそうだなぁ」
さっきとは違う意味のため息を大きくついて頂いたネックレスを外し、部屋着に着替えたのだった。
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