【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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本当に欲しいもの

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 そうして迎えたりょーくんのお誕生日。
 今年の9月22日は金曜日で、次の日の土曜日は秋分の日で祝日。
 早朝に3人で皐月さんのお彼岸参りを済ませてお店の中で3人仲良く長沢家のおはぎを食べる……なんていう、1年前では考えられないひとときを和やかに過ごしていたら突然夕紀さんから「朝香ちゃんは今から三連休!」と告げられそのまま私は金土日の連休をもらってしまった。

 私も驚いたけど、もっと目を見開かせて驚いていたのはりょーくんで口をパクパクさせている。

(なんで私よりもりょーくんが驚いてるの?)

 そんな疑問はあったものの、ニコニコ顔の夕紀さんに背中をグイグイ押されて私達はあっという間に勝手口から追い出され……

「まぁ……お姉さんからのご好意と受け取っておこうか」
 
 夕紀さんからの誕生日プレゼントを持ち上げながらりょーくんが微笑むから

「そうだね」

 私も頷いて納得する事にし、まだ人通りの少ない静かな朝の商店街を2人で歩いて背にしていく。



「お部屋に着いたら勿論見せてくれるんだよね? その、りょーくんの眼鏡姿」

 マンションのエントランスまで戻ってきたところで私がその確認をすると

「そうだよ」

 と、見上げた先にいるりょーくんは短く返事をしエレベーターのボタンを操作する。

「私は別に、買ったその日から掛けてもらっても良かったんだけど……」
「まぁ、俺の為に買ってくれた誕生日プレゼントって事だから」

 真澄達に選んでもらったという眼鏡。
 実はまだ私に眼鏡のお披露目はしてくれておらず、今もりょーくんはコンタクトレンズを通して物を見ている状況になっている。

「勿体ぶるなぁ~真澄も藤井くんもりょーくんの試着してる様子を見てるっていうのにぃ」
「ごめんねあーちゃん。焦らすような事して」
「りょーくんの希望は通さないといけないって理解はしてるんだけどね、私も」

 それは「誕生日の9月22日にお披露目したい」というりょーくん本人からの希望であって私が突っぱねる訳にはいかなかったんだ。

「でも……」

 りょーくんは玄関扉を開けながら言葉を区切り……

「眼鏡って、家の中で掛ける事が多くなるから。バイク乗って外出る時はコンタクトにしちゃうし。
 だから俺にとって眼鏡姿は部屋ここの中での特別っていうのがあって……」

 靴を脱いでいる私にそっとバックハグをしてきて

「はぅっ♡」
「だから俺の特別な姿をあーちゃんにちゃんとしっかり見せたいなって思ったんだ。俺の誕生日、あーちゃんの手作りのごちそうを食べながらお披露目したくて♡」

 甘い感じで彼は囁いた。

 りょーくんのバックハグも甘い声も囁きも攻撃力が強い。

「はふうぅぅん♡」

 それだけで足腰の力が抜けてしまう。

「ちゃんと俺の話聞いてよぉ~」
「聞いてるよぉちゃんとぉ♡」

 りょーくんは「自分の話を私に聞いてほしい」って気持ちをちゃんと持っているんだろうけど意地悪で変態さんだ。
 ワザと私の口調を真似しながらも、お胸をふにふに揉んで私の力を更に抜いてその場にしゃがませる。

「ふふ♪」

 背後に彼の顔があるから確認出来ないけど私には分かる。りょーくんは今、「してやったり」って表情をしてるって。

「やん♡」

 りょーくんも膝を落として、私の耳たぶにキスをいっぱいして

「ちゃんと見せるから。だからもうちょっと待ってて♡」

 また勿体つけるような発言をして、耳の穴に舌を差し込んでくる。

「やぁん♡」
「しちゃおっか♪ あーちゃん、お休みもらえたし♡」
「やあぁ♡ まだ朝なのにぃ♡」
「朝日の光に照らされたあーちゃんの肌をじっくり眺めたいから♡ ねっ、誕生日だからいいでしょ?」

 誘い方もエッチでズルい。
 本当は朝から……とか、日の光を浴びながら……とかは恥ずかしいし嫌でたまんないんだけど、「今日は誕生日だからしても良いよね?」みたいな言い方をされると断れなくなる。

「それが……りょーくんの本当にしたい事なら……」
「やった♡ じゃあベッド行こ♡♡」
「うん…………♡♡♡」

 恥ずかしいし嫌だけど、りょーくんに触れられるのは心地良いし嫌いじゃない。

(誕生日だもん、りょーくんが私を求めてくれているのならそれはそれで……)

 メガネフレーム代を真澄達と出し合ったくらいしかりょーくんにしてあげられなかったから、余計に誕生日の今日はりょーくんの望む事をいっぱいしてあげようって気持ちになったし……。





「あーちゃん、とっても肌が綺麗だよ♪ 
お日様の光をいっぱい浴びて、汗も滲んでてキラキラしてる♡」

 ベッドルームの引き戸も、ベランダのカーテンも全開にさせられた状態でのエッチはとっても恥ずかしくて……

「やあぁんっ♡ そんな事言わないでぇ♡♡」

 いつも以上に感じてしまった。






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