【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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海デート

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 朝起きると、ダブルベッドに私しか居なくて

「りょーくん?」

(なんで居ないんだろう?もう起きてるのかな?)

 彼を探すついでに顔を洗おうと洗面台の鏡に上半身を映したら

「うそっ!!」

 ネコ彼女パーカーのファスナーから大胆に曝け出された胸元にめちゃくちゃビックリして息を呑む。

「りょーくん!! ちょっとりょーくん!!」

 リビングにもお風呂場にもトイレにも居ないからきっとあの場所で身を潜めている筈だ。

 朝っぱらなのにバンッとりょーくんの部屋のドアを開けて

「私が寝てる間にいっぱいキスマーク付けたでしょ!! 信じらんない!!」

 りょーくんのお腹にかかっているタオルケットを剥がしてポカポカと逞しい腹筋を叩きまくった。

「いたっ! いてっ!!」

 痛がりながらりょーくんは目を覚ましたんだけど、私が叩く力なんてたかが知れてるしそれの何倍もりょーくんがした事の方が罪は重いと思う。

「酷いよ! 首からお胸の下辺りまでキスマークの痣だらけじゃあんっ! 私の体をこんな風にしてっ着替えてるところを夕紀さんに見られたら私なんて言い訳すればいいのっ?!」

 キスマークが一個や二個なら夕紀さんも見逃してくれるかもしれないけど、ブラでは隠せない部分にまで数えきれないくらいキスマークされてるこの状況を見られてしまったら私は何て説明すればいいんだろうか?

「本当は俺も何もしないまま寝るつもりだったんだけどさ。全裸でスヤスヤ眠ってるあーちゃんを見てたらついなんていうか……ムラムラしちゃって」

 罪悪感から自分の部屋に移動(正確には逃走)したんだろうけど、言い訳がとにかく酷い。っていうか言い訳にすらなっていない。

「ムラムラしちゃってじゃないよ! ほら見てよ! ブラつけても丸見えなんだから! お胸に集中しすぎだよ!!」

 ベッドの上で座るりょーくんに紅い痣だらけの体を見せつけようと、私は下着姿で仁王立ちする。

「あー……ホントだねぇ。これはやばい数だねぇ」
「ねぇ、じゃないんだよぉりょーくんっ」

 眠そうな顔をしながらのんびりと「ホントだ」と言いのけるりょーくんにムッとしてさらに怒りつけようとしたら……

「でも俺的にはお胸よりもこっちを重点的にしたつもりなんだよなぁ~……」

 そう言いながら私のお股を指差した。

「へ?」

 ハッとしてショーツの周りを見たらお胸よりも小さな痕がおびただしい数残っていて

「ひゃああああああああああああああああああああああ!!!」

 早朝だというのも忘れて私は大きな悲鳴をあげたのだった。



「もー!!! 今日は朝ご飯も夕飯の準備もしない!!! 洗濯物もりょーくんがやってよね!!!」

 平手打ちしたりょーくんにそう言って支度すると早めに外へ出ようと玄関に向かう私。

「うん、ちゃんと洗濯しておく。あーちゃんの水着とサポーターも」

 反省してないのか玄関先でわざわざそんな事言うもんだから腹筋に向かって大きなパンチを入れてやって

「私の水着はネットから出さない状態で干して!!!」

 そう言い放って家を出た。


「もう!!! 変態!!! 変態変態変態変態!!!!!!!」

(一昨日も昨日もエッチな夜を過ごせなくてりょーくんを更に我慢させちゃったから、今日の夜くらいは仕事で疲れててもちゃんとエッチしてあげようなんて思ってたけど取り消しっ! しばらくエッチもキスマークも禁止にしてやるんだから!!!)

 私はそう決意して自転車を思い切り漕ぎ、ムカムカしながら朝ごはんを食べる為早朝から営業してる飲食店へと一直線に向かっていった。

(でも……真澄達4人で出掛けたとはいえ、海水浴デートはすっごく楽しかったなぁ)

 水遊びといえば川遊びばっかりで海水浴自体人生の内で1回あったかどうかっていう経験しかしてこなかったから、関東の広い海に全身を浸からせるのは心地良かった。

(りょーくん、すっごく優しかったんだよね。行きも帰りも運転してくれたし、私の水着をめちゃくちゃ褒めてくれたし、何より海に慣れていない私の為に浮き輪をちゃんと買ってくれたのも嬉しかったなぁ……)

 最初は私を子ども扱いして馬鹿にしてるんだと思っていたんだけど、あの浮き輪が無かったら海水浴そのものを楽しめなかった。
 りょーくんと私の身長差が30㎝もあるから彼の高さに合わせようとすると浮き輪で体を浮かしておかないと私だけ溺れてしまうから。
 
(なんだかんだいってりょーくんは優しいんだよねぇ……)

 飲食店でサンドイッチをパクッとしながら、彼の優しさや深い愛情を思い起こす私。

(私の熟睡中にキスマークいっぱい付けちゃうくらい変態ではあるんだけど、無理矢理エッチしたっていう訳ではないんだよね……いくらなんでもそこまで酷い事はしない人だから)

 段々と怒りはしぼんでいき、昼休憩になったら朝怒ったり叩いたりした事を謝ろうかなという気持ちになっていた。


(やっぱり今夜、りょーくんにエッチなお誘いしてみようかなぁ……)





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