【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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朝に香る

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「なんかいっぱいお土産頂いちゃって本当に良かったのかなぁ……」

 私達は行きの時よりも荷物をたくさん抱えて新幹線に乗り込んだ。

「まぁだいたいどこで買ったかは予想つくけどね。実家にいる時はよく食べてたものばかりだから何も珍しくないっていうか」
「でも俺にとっては珍しいものばかりだよ。帰って食べるのが楽しみ♪」
「それ本気で言ってる? 田舎っぽい漬物や佃煮がこの中にいっぱい入っているんだよ?」
「本気だよ! お漬物や佃煮があーちゃんとの食卓に出されるのかと思うと嬉しい気持ちになるし、いっぱいあるから夕紀さんや初恵さんにお裾分けしようよ!」

 田舎の土産物なんて恥ずかし過ぎで、都会的なりょーくんにニコニコされちゃうと私はどう反応してあげれば良いのか分からず言葉が出なくなってしまう。

(確かにお漬物や佃煮は夕紀さんも初恵さんも喜ぶとは思うんだけど、果たしてりょーくんのお口に合うものかどうか……)



「そういえばお父さんやお母さんはお互いを『パパ』『ママ』って呼んでるのに、あーちゃんは『お父さん』『お母さん』って呼ぶんだね。あーちゃんも同じように『パパ』『ママ』って呼べばいいのに」

 新幹線に乗って小一時間。
 広島県からどんどん遠ざかろうとしてきたところで、りょーくんはふと思い出したかのようにそんな質問を私にぶつけてきた。

「うちの両親ラブラブ過ぎるから見てて恥ずかしくて私までは呼べないんだよぉ」

 私が両親を敢えて「お父さん」「お母さん」と呼ぶ理由はごく単純。結婚して30年近く経つというのにまだ2人はラブラブアチアチな仲で娘としてはドン引きしちゃうんだ。

「羨ましいと思うけどね自分の親がラブラブなのって。俺のところは幼い頃から両親の仲がどうなのかサッパリ分からなかったし、俺はあーちゃんと何十年もラブラブでいたいけどなぁ♡」

 ……けど、そう言って私の手を握ってピンクの指輪を指でなぞるりょーくんの指先は熱く、次第に私の鼓動は早まって耳や頬まで彼の熱い体温が伝わってくる。

「私も♡ りょーくんとこの先も何十年先もラブラブでいたい♡」

 今回の帰省でりょーくんは私の両親に私との結婚を希望する言葉を述べた。
 お父さんもお母さんも一応は許可するという返事をしたんだけど「結婚は他人同士が一緒になって家族になる事だから、2人で納得のいくまで話し合って『本当に家族になりたい』『この人と一つの家族を築き上げたい』とお互いが強く思い合った時に籍を入れなさい」と私達に諭してくれた。


 本当に家族になりたい
 この人と一つの家族を築き上げたい

 その2つは深い意味が込められていて、簡単に決断しちゃいけない事をりょーくんも私も理解していた。


「これからも仲良く暮らしていこうね♡」
「うん♡」

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