【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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嵐は過ぎて……

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 私が大学へ行けるようになったのがゴールデンウィークから3週間が過ぎた頃で、周囲は既に夏の装いになっていた。

「本当にその服捨てていいの? パーカーなんか、『実家に居る時から着てるお気に入り』って言ってたのに」

 あの日着ていたロンTやストレートジーンズだけでなく、パーカーやベージュの下着、一分丈スパッツも全部、古い服は全て処分する事を私は決めた。
 
 私が下着をハサミでカットして黒いゴミ袋の中へ放り込んでいる最中、真澄は少し残念そうに私のパーカーを見つめていたんだけど

「いいの。とは、完全にサヨナラしたいから」

 「思い入れの強いパーカーであっても別れを告げて捨てるべき」という私の考えは揺るがなかった。



 真澄と一緒にタクシーに乗って、ほぼ1ヶ月振りの大学キャンパスに足を踏み入れると……

「あーちゃん……久しぶり」
「むらかーさんおはよう! ますみんもおは~♪」

 タクシーの乗降場にりょーくんと藤井くんが立って待っていた。

「おはよう」

 あんな事があって以来、真澄としか顔を合わせていなかったからとても緊張していたんだけど、りょーくんの優しい微笑みと明るく陽気な藤井くんの挨拶に気持ちが和らいで、私も笑顔で朝の挨拶をする事が出来た。


「あのね、あーちゃんと同じ授業のノートのコピーと……それからあーちゃんだけが受けてる授業の資料プリント」

 りょーくんは、私が休んでいた間の授業コマ分のフォローが出来るよう、綺麗にまとめられたノートのコピーや資料プリントを用意してくれていたり……

「学食はランチセットも良いけど、単品ならこれも結構美味しくてオススメだよ!」

 お弁当を持ってこなかった私の為に、学食のオススメメニューを詳しく教えてくれた。
 学食メニューに関しては、私が休んでいる間毎日違うメニューを選んで「どの料理が私の好みか」をリサーチしてくれていたらしい。

「ありがとうりょーくん……」

 真澄が話していた通り、会話の数は以前より少なめではあったんだけど、私の事をちゃんと考えてくれていた事が実感出来てとても嬉しかったし愛を感じた。
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