【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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彼の仮面

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 それは1年以上痴漢に遭っている私の状況が「集団的組織的に行われている犯罪なんじゃないか?」と危惧きぐする意味合いでの、りょーくんからの真面目な発言。

(あの時私は「まさか」って……思っちゃっていたけど、本当に私の事が連日ネットで書き込まれていて、毎日多くの人からお尻を触られていただなんて!)

 痴漢の現場に毎回居合わせた加害者。
 テンション高めのハイトーンや「ネット」のワードで私はこのりゅーさんが何者なのかを認識する。

「アサちゃんを狙うの中にはね、仕事合間にわざわざアサちゃんが帰宅する便の電車にに乗ってするも居たんだ。営業職だったんだって。
……羨ましかったなぁ~僕、SEしてたから無理だったもんなぁ。だからね、1年前にアサちゃんがあの電車に乗らなくなって余計に寂しくなったんだよ。ヨルちゃんしか楽しみがなくなって……でも、そのヨルちゃんも居なくなっちゃった。仕事辞めて実家帰ったらしいよー」

 常連さん
 猛者
 ……それから、痴漢行為をゲームと呼ぶ信じられない考え方

「ヨルちゃんはゲームの高尚さについていけなくなったのかも。
 僕達はあくまでゲームをしたいのであってイタズラをしたいんじゃないからね。衣服の上から肌質を想像して触れる事こそに意義があって、エッチな行為をしたいわけじゃないんだ。
 ……だからこそ、1年前に笠原くんが捕まえたの件はショックだったんだよ。
 アサちゃんの隣に今まで居なかった高身長イケメンが立ってるっていう、異常な状況っていうのかな……あの時はが漂っていたんだ。
 それなのにその空気を読み取れなかったは僕も常連さん達もショックだったんだよ。『あー、終わった』ってみんなガッカリだった」

 りゅーさんの口から出てくるもの全てがおぞましい。

「だからねー、営業職やってみようって転職したんだ。
 前の会社よりは給料下がるし、覚える事も山ほどあるんだけブラックじゃないしなんとなく頑張れそうかなーって思うよ」

「…………」
「営業の仕事に慣れたらさ、僕も猛者って呼ばれるようになるくらいゲームに参加するつもり。そしたらアサちゃんにもまた会えるかもしれないね。
 ……これだけ仲良くなったんだもん、アサちゃんが大学からあの商店街の駅まで乗る電車の便は把握済み♪」
「…………」
「僕達はお友達だし、僕はアサちゃんの気を無理に引いて笠原くんから奪おうとまでは思ってないよ。彼氏とか彼女とかそういう関係には全く興味ないし、向いてないと思うから」
「…………」
「僕の正義はただ一つ。アサちゃんの着ている服や下着をこうやってツーッと撫でて『あ~アサちゃんの肌のコンディションは最高だな』って愛でる事だけなんだ」
「…………」
「まぁ、僕も見た目はそれなりにイケてるから疑似恋愛的な事はしたいよ?笠原くんよりも僕の方がかっこよくて素敵ってアサちゃんが思ってくれるのも嫌な気分しないしさ♪」
「……っ」
「でもホント、は興醒めしちゃうんだよ。今だってアサちゃんのジーンズ脱がしちゃったけど、ショーツ越しよりはジーンズ越しの方がそそる♡お尻の形クッキリだと想像する為の余白がないのかもね」
「っ! もう、やめてっ!!」

 りゅーさんの口から出る言葉にただただ恐怖するしかない私は、『これ以上りゅーさんの声を聞きたくない』とばかりにバックハグを振り払おうとする。

「あー、ダメだよ急に暴れたら。ジーンズ落としたからアサちゃんが転んじゃう♪」

 けれども私の腕や体の払いをりゅーさんは簡単にあしらい、落としていたジーンズをスルスルと私にゆっくりと履かせ始めた。

 犯罪行為とは真逆で、一見「助けられてる」ようにも感じられるけど、それすらも気色悪くて涙が出てくる。

「ほぅら、の状態に戻ったよ♪」

 りょーくんに嫌気がさし「りょーくんと付き合う前の服」をわざわざクローゼットから探して身に付けたロンTもストレートジーンズも……私の素肌を包むもの全てがりゅーさんの前では全く違う意味に置き換わる。

「やっ……!!」

 私は、しゃがんで私にストレートジーンズを丁寧に履かせたりゅーさんを振り切って個室のドアノブに手をかけた。

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