【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

春は嵐

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　村山さんはいつも通り19時前に来店してきて、それを待ち詫びていたかのように夕紀さんも焙煎を終えてカウンターに出て来てくれたから、今日の19時台の試飲は今まで以上にお客さんが入店してくれて売り上げもかなり良かった。

「19時半になったので、約束通り彼に連絡してきますね」

　明日村山さんに連れて行ってもらうダーツバーの店名も最寄り駅も既に確認済みで、後はりょーくんにラインで伝えて了承を得るだけになっている。

「うん、僕はゆーきさんとまだ一緒にいるから」
「そうそう♪ 私もりゅーさんと2人で野球トークしたいから大丈夫よ♪」

　村山さんも夕紀さんもニコニコ顔で手を振り、バックヤードへ行く私を見送ってくれる。

（ゆーきさんとりゅーさんかぁ……この30分で仲良しさんになっちゃったんだなぁ。野球の力って凄いなぁ……）

　私もお父さんの影響で好きの部類に入るんだけど、夕紀さんと村山さんはそれ以上で「沼」って感じだ。


［村山さんからダーツバーの店名と最寄り駅名きいたよー！］

　バックヤードに入るなり、りょーくんにメッセージを入れると約束通り既読がすぐに付く。

（良かった……りょーくんちゃんとスマホ手元に置いてくれてる）

　私は続けて店名と駅名を入力して送信をタップすると、りょーくんからすぐに「OK」のスタンプが返ってきてホッとした。

「良かったぁ。これで明日村山さんとダーツバー行ける♪」

　私は明日の夜に3人で遊びに行ける事が嬉しくて、ニヤニヤが止まらない。

［じゃあ、仕事終わったら明日の予定の話しようね！］

　と、私はまた文字を打ち込んで送信し、すぐにエプロンのポケットにスマホを入れカウンターへと戻る。


「どうだった？ 亮輔くん、OKしてくれた？」

　明日のダーツバーの件、夕紀さんは参加する予定がないのに気になっていたみたいで、村山さんよりも先に私へ質問する。

「大丈夫でした！ 彼も明日行くって！」

　私の返事に、村山さんはとっても嬉しそうな表情を見せてくれた。

「良かったぁ～。これで明日は楽しい夜が送れそう♪
　僕を閉店時間後までここで待たせてくれたのもありがたいし、ゆーきさんもアサちゃんも良い人じゃね♪」
「も～、そんなんいくらでもしてやるけぇ、これからも遠慮なく言いんさいね！ 
りゅーさんがとっても良い人じゃけぇ、私らも優しく出来るんよ」

　そして村山さんも夕紀さんも広島弁が出てきちゃってて和む。

「あ、朝香ちゃんはこの後どうするん？ もう帰るん？」
「そうじゃね……彼が待っとるけぇ、すぐに帰らんといけんかなぁ」

　夕紀さんにつられ、私までくだけた広島弁が出てきてしまった。

「あっ♪ アサちゃんの広島弁可愛い♡」

　和み過ぎかな？なんて思っけど、村山さんに褒められると嬉しい。

「村山さん褒めんといて～！ ぶち恥ずかしいけぇ！」
「『村山さん』だなんてかしこまらんで。『りゅーさん』でええけぇ、これからはそう呼びんさい♪」

　しかも私の好きな俳優さんそっくりな甘いマスクで優しい広島弁を喋られるとなんか興奮する。

「ありがとう、りゅーさん♪」