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【番外編】ネコの彼女
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しおりを挟むほとんど寝返りを打たずに眠ってしまった私は、目が覚めて起き上がってもまだネコのアサカの姿のままでいた。
「にゃーん……にゃーん」
りょーくんに向かって2度ほど鳴いて、前足でりょーくんの胸板をカリカリ掻く。
りょーくんはゆっくりと目を開け、ネコの私を見るなり
「おはようアサカ」
と頭を撫でた。
「にゃーん」
夜にしてあげたように、上半身を起こしたりょーくんの頰をペロペロと舐める。
「うん……ありがとう」
りょーくんは私のフードを下ろして、再び人間のあーちゃんに戻す。
「本当にごめんね、あーちゃん。最初はごく普通に飼い主とネコのプレイをするつもりで、楽しみにしてたんだけど……いざやってみるといろんな感情が噴き出ちゃってあんな感じになっちゃった」
りょーくんが頭を下げたのを見た私は首を左右に振って「謝らないで」という気持ちを示す。
「ううん私はすごく楽しかったよ。いつもの私に言えないようなりょーくんの一面を知ることが出来て、すごく嬉しかったよ。
言葉で大丈夫って言い合っても、不安になる時ってあるなって昨日の夜気が付いて……だから私にとってはとても有意義な時間だったよ」
そう気持ちを伝えると、りょーくんは寂しそうな顔をしながら
「また……俺が望んだ時にネコになってくれる?」
と訊いた。
「当たり前だよ! いつでも私はりょーくんのアサカになるよ!」
と私は答えて、りょーくんにキスをする。
「ほんと? いつでもいいの?」
「りょーくんがアサカに来てほしいって思ったら、いつでも呼んでね。いつでもアサカになってあげるから! ほんとだよ!!」
りょーくんに微笑みかけるとりょーくんは嬉しそうに笑って
「ありがとうあーちゃん」
と、私の腰を抱き その手がお尻に当たった。
「ん?」
りょーくんが首を傾げながら私のショートパンツをサワサワと触る。
「あーちゃん……お尻、なんか変じゃない?」
りょーくんの声に私もハッ気付いて
「忘れてた!」
と、思わず声を上げてしまった。
「『忘れてた』?」
私の反応にりょーくんはニヤリと妖しく笑ってて……
「あっ……忘れてたっていうのは、なんていうか」
私が慌ててお尻を両手で隠したから、りょーくんのニヤニヤが止まらなくなっている。
「あーちゃんなんでTバックなんか履いてるわけ?」
私の行動で確信をついたんだろう、りょーくんはそう言いながら私のショートパンツをずり下げて、お尻を丸出しにさせてしまった。
「きゃあ! あの……これはちょっと理由があって……」
弁解しようにも言い訳が見つからない。
「理由ってなんだよあーちゃん! もしかして俺が純粋に、あーちゃんにネコになってほしいと考えてる間、あーちゃんは俺がエッチなプレイするんじゃないかって思ってたわけ??」
「!!!!」
(ひゃあああああ!! ばれちゃった!!)
「違う違うっ! 違うんだってば!!」
(ええと……! 早く言い訳思いつかなきゃ! りょーくんがまた変態になっちゃう!!)
「だから何が違うの? 履いてるコレが証拠でしょ?」
「にゃっ!! にゃあああああああああん」
襲われる! と、そう察知した私はフードを自分で被ってネコになると
「あっ! こらっ!!」
ダッ!!
りょーくんの腕から逃げてベッドを飛び降りると真っ先にトイレに逃げ込んでドアの鍵を閉めた。
「ちょっと!! ズルいよあーちゃん!!」
トイレの前に立ってコンコンとりょーくんがノックしている。
「にゃっ……にゃーん」
(あわわ……本当にどうしよう……!!)
ネコの鳴き声をあげながら、私の身体は次第にピンク色になっていく。
「どうかりょーくんが落ち着いてトイレのそばを離れますように」と願ったんだけど、そんな簡単に引き下がる彼じゃない。
「観念しなさいアサカ。お仕置きされたくないだろ?」
トイレのドアをコンコンとノックしながら優しい口調でそう言うりょーくんの言う事を私は聞き
「ごめん……なさい」
私は頭のフードを脱いでゆっくりとドアを開けた。
「もう一つ、言う事あるよね?あーちゃん」
彼の口角がクッと上向きになっているものの、目は少しギラついている。
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