【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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【番外編】ネコの彼女

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 私は彼の口にした表現の通り、全身をつるつるピカピカにしてバスルームから抜け出した。
 湿度100%の暖かな空間から這い出た私の肌はキュッと冷たく引き締まり、バスタオルでその緩和と保護をしながら脱衣所内に置かれている棚の引き出しに手を掛ける。

「…………」

 そこには勿論、私の下着類が収納されているんだけど

「やっぱり、この前買ったヤツの方がりょーくん喜ぶよね?」

 私は、広島帰省時にランジェリーショップで購入した白のTバックショーツの存在を頭に思い浮かべて、バスタオルを体に巻いただけの状態で自分の部屋に向かう。

「りょーくんに履いてるとこバレないように……」

 彼にささやかなサプライズがしたくって、こっそりと真新しいショーツに脚を差し入れて再びバスタオルを体に巻き直して素早く脱衣所に戻り、白ネコさんのふわふわモコモコパーカーとショートパンツを身に付ける。

 
(きっと私は今から、りょーくんに全身をさわさわと優しく触れられ、白ネコさんのふわふわ生地を堪能したらパーカーのファスナーを下まで引き下げられて、エッチな事をいっぱいされちゃうんだ……)

(ショートパンツも脱がされて、おニューのショーツを目にしたりょーくんはセクシーに笑って喜んで……それから…それから……)

 私は、2週間前にされたイチャイチャを思い出し「今夜もそれと同じか、よりエッチな行為をさせられるに違いない」という考えで脳をいっぱいにしながらベッドルームの扉を開く。

「あれ?」

 でも、そこにりょーくんは居なくて

「あーちゃん、こっちこっち」

 リビング側から彼の声がしたから、別の意味で恥ずかしくなりながらリビングに続く引き戸の方をカラカラとゆっくり開けた。

「りょーくんお待たせ」
「お風呂でゆっくり出来た?」

 既にベッドの上で待っているものだとばかり思っていた彼は、私の予想に反してソファにかっこよくゆったりと腰掛けていて、もうすぐ実施されるゼミ試験用の本に目を通していた。

「りょーくんは試験勉強してたんだね」

 お風呂で目にして唇にもプチュッと触れたあの大きなおちんちんはどうなったんだろう?という疑問を抱きつつ、冷静な表情で真面目に本を読む彼の姿に驚く。

「うん、ちょっと本に目を通したくなっちゃって……でももう大丈夫」

 りょーくんは本を閉じてテーブルの上に置くと、私に向かって両手を広げ

「おいで♡」

 と小声で呼び掛けた。

「ん……」

 彼の「おいで」にキュンときた私は、素直に彼に抱き締められにいく。

「脚、寒くない?」
「平気だよ。ルームシューズ履いてるから」
「ルームシューズもふわふわモコモコだもんね」
「うん」

 脚は丸出しだけど、体温の高い彼の体に包まれているから、ルームシューズに頼らなくても全然寒くない。エアコンもいつもより設定温度を上げてるんだろうと思う。
 だからなのか、りょーくんもいつもより薄着でロンTに足首がスッキリとしたお洒落スエットパンツを身に付けている。
 ラフな格好だけど本に目を通していたりょーくんの顔が結構かっこ良くって、「声を掛ける前にりょーくんのイケてる姿をじっくり見ておけば良かった」とちょっとだけ後悔した。

「そうだあーちゃん、そこのクッションに座って」

 りょーくんはハグを解き、私にソファではなく彼愛用の大きなクッションに座るよう指示された。

「クッション……普通に座れば良い?」
「ううん、出来れば可愛らしくペタン座りで♪」

 座り方を確認したら彼の好きなペタン座りを指定され、私はその通りにペタリとクッションの上に座る。

「それじゃあーちゃんは今からネコだから。ちゃんとパーカーのフードをかぶって……それから、俺に何をされても喋っちゃダメだよ。声を出していいのは『ニャー』だけ」

(はわわわわわわわ!!! 予想とはちょっと違う指示がりょーくんからきた!!!)

 白ネコ姿をただ優しく愛でるのではなく、ネコっぽい扱いされるとは思わなくて私はドキドキし始める。

「に……にゃ、にゃあ?」

 ドキドキしながら、彼の指示通り「ニャー」を言おうとしたんだけど声が上擦うわずって余計に恥ずかしくなった。

(猫の真似って意外と照れ臭いなぁ……「ニャー」も、思ったよりちょっと難しいかも)

「可愛い♡」

 上擦った「ニャー」でもりょーくんは喜んでくれているようで、ソファからスッと立ち上がって斜め下の私に指先を近付けてきて……

「にゃっ……ニャア」

 彼の指先が私の胸元に向かっていると知ると緊張が走る。

(うわわわわわわわわわわわわ!!!!
 ファスナーを!! ファスナーを下げられちゃう!!!!)

 これから起こる事にドキドキして、私は目をギュッとつぶっていると、りょーくんの指が私のパーカーのファスナーにとうとう触れて……!!

 グイッ

(……え?)

 妄想とは逆に、ファスナーは首元までしっかりと上へ上げられてしまった。

「ニャ?」

(どういう事??! りょーくん、今から私とエッチな事するんじゃないの???)

 濃厚なエッチを出来るのは2週間振りだったし、てっきりりょーくんは「その気」でいるものだと思ってて、私もそれなりの覚悟をしてつるつるピカピカに磨いたから正直肩透かしを食らっている。

(ファスナー下げるんじゃなくて上げるの?)

 胸元が全く見えないように1番上まで上げられ、更に手招きされる。

「もっとこっちにおいで」
「ニャ……」

 小さく声をあげて四つん這いになり、顔をりょーくんに近付けると

「いらっしゃい」

 りょーくんはそう言って私の体を優しく抱き寄せた。

「ニャア」
「可愛いね。とても良い子だよ」

 りょーくんの髪からシャンプーの良い匂いがする。
 同じシャンプーを使っているはずなのに男性用の香水のような魅力があって……私はその香りを思いきり鼻から吸い込んだ。

「可愛いネコには名前を付けないとね。アサカにしようか」

(アサカ……)

 普段は「あーちゃん」だからいきなり名前で呼ばれてすごくドキドキする。

「いい子だよ、アサカ」

 りょーくんは私の頭を優しく撫で、喉も指でコショコショくすぐる。

「ニャアン」

 普通の状態だとくすぐったくてたまらないはずなのに、何故かその指遣いが心地良かった。

「アサカはお腹が空いてない? ごはんあげようか?」

 りょーくんはコーヒータイムで私が食べ残してしまっていた甘いチョコレートの包みを開けて見せつける。

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