【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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【番外編】ネコの彼女

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「うん、パーカーは長袖でも下はショートパンツだったでしょ?」
「まぁそうだったけど……」
「りょーくんは夏のエアコンの設定温度低めにするから長袖が一番ちょうど良かったんだよ。脚なら出しててもいいし寒かった時は膝掛けかけて過ごしてたの知らない?」
「いや……あんまり気付いてなかったかも」

 私の話にりょーくんは更にビックリしたような表情をしていて、目なんかこれ以上開かないんじゃないかってくらいに見開かせている。

(そんなに驚くような事かなぁ……?)
 
「じゃっ……じゃあ、エアコンの温度設定を25度くらいに上げればあーちゃんはまた黒ネコを着れるって事に」
「真冬とはいえ設定温度25度は上げすぎだし、そもそもりょーくんが汗かいちゃうっ」

 テーブルの上に握りこぶしを作って私に今以上のエアコン温度上昇を提案するりょーくんがちょっとおバカに見えた私は、即答でそれを一蹴いっしゅうしたんだけど

「あぁ~~……そっかぁ……」

 と、りょーくんはめちゃくちゃへこんで項垂うなだれていて、「そんなにあのパーカーを気に入ってくれていたんだなぁ」と知る。

「また暖かい季節になったら着るね。5月とか」
「えー……4ヶ月も待たなきゃいけないのかぁ~~~~」

 今もりょーくんは頭を抱えて本気でガッカリしている。

「確かあのパーカーとショーパン、シリーズ化してて別バージョンもあるとは思うんだけど冬用もあるかどうかは知らないなぁ」
「ええ??! 冬用あるの??!」
 
 項垂うなだれりょーくんを気の毒に感じた私は、あの黒ネコパーカーが「ネコ彼女」という名でシリーズ化してるとネット情報にあった事を思い出し、コーヒーを飲みながらポロッと彼に漏らしてみた。

「多分ね」
「それなら今すぐ調べなきゃ!」

 りょーくんは鼻息を荒くして、スマホをサッと手に取りネット検索を始め……

「ある! 冬用、あるっ!! しかもふわふわモコモコした生地っぽいし白ネコさんだし可愛いっ!!」

 りょーくんはスマホ画面に釘付けになっちゃっている。


「……じゃ、私はそろそろ支度して出掛けるね」

 当然のこと、私は先に朝食を食べ終えてしまい、食器をシンクに置いたらりょーくんに一言声を掛けた。

「これも可愛いし、このグレーのも可愛い♪ ……あっ、うん、あーちゃんいってらっしゃい。気をつけて」

 りょーくんはスマホ画面に向かって目を輝かせ、私に目配せする事もなく気持ちのあまり入ってない返事を返すだけだ。

(もうっ……いつもなら玄関のところまで見送りしてくれるのに、ルームウェア見るのに夢中になりすぎだよぉ)

 毎回丁寧に見送りしてもらわなくても別にいいんだけど、今みたいな簡素過ぎると少し寂しい。

「……じゃあ、行ってきます」
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