【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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溶けて絡めて味わって

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 結局私は12個もチーズフォンデュ鍋の中に食材を落としてしまい、21時になった現在……私はりょーくんの指示通り全裸になってエプロンだけを身に付けるなんていう超恥ずかしい格好となった。

「あーちゃんすっごく可愛い♡」

 エプロンはいつも身に付けているものじゃなくて、真澄と藤井くんからクリスマスプレゼントとしてもらった白いフリル付きエプロン。

「もし……りょーくんが負けちゃったら、りょーくんがこの格好になる予定だったんだよね?」

 少しでも肌が隠れるようにと両手でエプロンの裾をなるべく引っ張って伸ばそうとする私の質問に

「ふふふー♡」

 と、りょーくんはニヤニヤとした表情で含み笑いだけを返す。

(絶対りょーくんは落とす気なかったんだ! 後半、なんとなく「食材を落とすまい」っていうりょーくんの本気が見えた気がしたもんっ!)

 りょーくんは本当に器用で、私よりもワインを飲む量が多かったというのに食材を一つも落とす事なく上品に食べていた……けど、目の表情は真剣そのものだった事を思い出す。
 対して私の手元は乱れまくりだった。二つ三つと落としちゃった辺りから冷静で居られずワタワタと焦ってしまいまた落とすの繰り返し。

「しかも12分間って食器洗いにちょうど良い時間になっちゃってるぅ……」
「あーちゃんの感覚は絶妙だね♪ 自ら後片付けをかって出たみたいな♪」
「そりゃあ後片付けは私がやろうって気持ちはあったよ? チーズフォンデュの準備はほとんどりょーくんがしてくれたんだもん」

 りょーくんは含み笑いをし続けながら使用済み食器を次々とカウンターに置いてくれるので、キッチン側に回った私はそれを受け取りシンクの中で食器洗いを始めた。

(裸エプロンだけど、カウンターキッチンだしりょーくんがテーブル側に居てくれるなら恥ずかしさは薄れるかも)

 てっきり変態りょーくんの事だから今からの12分間私の背中やお尻を堪能しようと食器洗い中の私の背後に回って視姦ちゃうのかと思っていた。
 ……けど、実際はそうではなくりょーくんはダイニングテーブル側にずっと居て、食器をカウンターに置いてくれたりウェットティッシュでテーブル拭きをしたり軽い床掃除をしてくれている。

(そもそもこのキッチンの構造で裸エプロンって、りょーくんの得にちゃんとなってるのかな?)

 今もきっと私の前面しかりょーくんの視界に入ってないはずだ。背中やお尻を丸出しにする意味合いってあるのかなぁ?なんて疑問に思ったんだけど……
 
「あーちゃん知ってる? 今から深夜3時までの時間って、日本人が1年で1番エッチしてる人数が多い時間帯なんだって。『性の6時間』っていう言い方するみたいだよ」

 突然セクシーな表情や甘いイケボで私にそう伝えてくる彼の態度に私はピクンと体を反応させる。

「えっ……せ、性?」
 
 それから私の目線はすぐにウォールクロックへと向けられた。

 現在時刻は21時7分。裸エプロンでの食器洗いがスタートしてまだ5分しか経過していない。

「うん♡ だから俺にとってもあーちゃんにとっても良い6時間がスタート出来てるんじゃないかと思っているんだ」

 セクシーで甘々ボイスのりょーくんの表情はとってもにこやかだ。

「でも……今はまだエッチしてない」
「けど、ベッドの上に居る妄想をあーちゃんもそろそろ始めちゃってるんじゃない?」

 りょーくんはにこやかなまま、私の言葉に自分の甘々ボイスを覆い被せてきて

「楽しみだなぁ~今夜のベッドタイム♡」
「!!!!」

 私の頭の中はりょーくんの引き締まった裸の映像でいっぱいになり、言葉だけでエッチに抱かれているような気分になった。

「あっ♪ あーちゃん今、ゴクってつばを飲み込んだでしょ♪ エロい♡」
「えっ! あっ……やあぁ♡」

 私は生唾を呑み込んだ自分の無意義な行動に動揺して食器を持つ手元が狂いそうになり

「あーちゃん危ないっ! やっぱり俺も手伝うよ」

 りょーくんが私の隣にサッとやってきて私の補佐をいきなり始めてくれた。

「あっ……ごめん」
「酔ってるし恥ずかしい格好させられてるんだから仕方ないよね」

 りょーくんの動きはスマートだし、一緒に食器片付けに専念するりょーくんの言動はハンサムさんそのものだとは思うんだけど

(でもやっぱり私の裸エプロンは継続なんだね……)

 罰ゲームはきっちり時間通りに継続されるみたいで、そこが更にりょーくんの変態性を浮き彫りにさせた。

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