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溶けて絡めて味わって
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「菜箸取ってくるよ」
りょーくんはサッと椅子から立ち上がって私の失敗をフォローしてくれる。
「ありがとうりょーくん」
りょーくんの手によって、チーズに溺れたパンが救出され私の取り皿に乗せられた。
りょーくんには、今の私の表情が「凹んでる」と感じられたのか、明るい表情を私に向けて
「早く食べて食べて♪ チーズたっぷりのパンは美味しいしワインにも合うよ……んで、次はしっかりフォークに刺してまたチャレンジしよっ!」
と言ってくれたんだけど
「確かチーズフォンデュって……そういう事したら罰ゲームあったよね?」
「……」
私の拙い記憶の中から「チーズフォンデュの罰ゲーム」を引き出して私が口にすると途端にぎこちない表情に変化させた。
「りょーくんどうしたの? マンガの『ギクッ』みたいな表情して」
「いや~……それは……なんていうか、その……」
私の指摘にりょーくんはしどろもどろとなり、目を泳がせる。
「……」
(まさかりょーくん……私とチーズフォンデュ食べる前に罰ゲームの内容決めてたんじゃないかな?)
パンをチーズの中に落とすという失敗は、手先の器用なりょーくんよりも私の方がやりがちだ。
りょーくんはきっとチーズフォンデュの作り方をネットで詳しく下調べしただろうし、あやふや記憶の私よりも罰ゲームについての知識も頭の中に入ってるんだと想像する。
「りょーくん、もしかして事前に罰ゲームの内容を決めてて、食べ終わるまで私に内緒にしようとしてたんでしょ」
どう考えてもそうとしか思えなくなっちゃった私は、目の前の彼に頭の中で想像した事をそのまま声に出したのに
「っていうか……あーちゃん、思ったよりも早くパンを落としたから……」
りょーくんはまだゴニョゴニョと言葉を濁している。
「りょーくんの考えてた罰ゲーム、絶対にエッチな事なんでしょ」
拳を唇に押し当てて私から目を逸らすりょーくんに、更にそう詰め寄ってみると、彼は頬も耳も紅く染めながら、子どもみたいに可愛らしくコクンと頷いた。
「あーちゃんの言う通り……エッチな罰ゲームは考えてた」
「やっぱり! りょーくん絶対そういうのすぐに思いつきそうだもんっ!!」
「でもさぁ、あーちゃんやらかすの早過ぎない? こういうのはさぁ、もっとお互いがワインでほろ酔いになった辺りからそういうゲーム始めるもんだしっ!」
「そんな事言われても落としちゃったのは仕方ないもんっ!」
「仕方ないなぁ罰ゲームは考えていたけど、今のはノーカンにしといてあげるよ」
りょーくんはふぅと息をつきながら私の落とした一回分をチャラにしてくれた。
「なんで?」
「だってこういうのは、もうちょっとあーちゃんの酔いが回った辺りから始めたいし♪」
「酔いが回ってから……?」
りょーくんのその言い方が何か引っかかる。
彼はかっこいいし素敵だけど変態さんだ。だから彼の考えたという罰ゲームとやらもエッチなものに違いない。
「だって酔いが回ってからの方がお互い楽しいと思わない?」
更に「酔いが回った方が楽しい罰ゲーム」という意味合いで、ますますその罰ゲームの内容が気になってしまった。
「ちなみに、その罰ゲームの内容って何?」
私はフォークにパンを突き刺してチーズフォンデュ鍋の中に浸しながら、気になる内容をりょーくんに訊いてみると
「落とした食材の数×1分間裸エプロンで食器のお片付け。勝った方はその間何しても OK♡」
「!!!!!!!!」
彼の口から発せられた斜め上な内容に私はまたパンを鍋の中に沈めてしまった。
「ちょっとあーちゃん! また落としてる!!」
「だってりょーくんがめちゃくちゃ変な事言うんだもんっ! 今のもノーカンだよっ! ノーカンっ!!」
「当たり前だよもうっ……ほら、またお皿出して」
りょーくんは呆れながらまた菜箸で鍋の中からチーズまみれのパンを私の取り皿に置いてくれる。
「でもでもっ! りょーくんの罰ゲームの内容がエッチ過ぎるのが良くないんだからねっ!」
チーズがひたひたに染み込んだパンを美味しく頬張りながら私が言い返すも
「これでもフェアになるように内容を考えたんだよ。最近はあーちゃんからも積極的にしてくれるようになったからキス関連だと大した罰ゲームにならないし、エッチな下着っていきなり提案したところであーちゃんは準備出来ないし俺がエッチな下着つけたってあーちゃんの得にはなりそうもないし。
酔った後の片付けなんて単純にダルいだけじゃん。だから罰ゲームとしてちょうどいいと思ったんだ」
「なるほど……確かにこの後片付けするのは面倒って感じちゃうかも」
「普通の格好で片付けするのはつまらないからこその裸エプロンなんだ。それなら準備の必要ないから♪」
りょーくんの話に納得したものの、やっぱり「裸エプロン」の部分はりょーくんの得にしかなってない気がした。
りょーくんはサッと椅子から立ち上がって私の失敗をフォローしてくれる。
「ありがとうりょーくん」
りょーくんの手によって、チーズに溺れたパンが救出され私の取り皿に乗せられた。
りょーくんには、今の私の表情が「凹んでる」と感じられたのか、明るい表情を私に向けて
「早く食べて食べて♪ チーズたっぷりのパンは美味しいしワインにも合うよ……んで、次はしっかりフォークに刺してまたチャレンジしよっ!」
と言ってくれたんだけど
「確かチーズフォンデュって……そういう事したら罰ゲームあったよね?」
「……」
私の拙い記憶の中から「チーズフォンデュの罰ゲーム」を引き出して私が口にすると途端にぎこちない表情に変化させた。
「りょーくんどうしたの? マンガの『ギクッ』みたいな表情して」
「いや~……それは……なんていうか、その……」
私の指摘にりょーくんはしどろもどろとなり、目を泳がせる。
「……」
(まさかりょーくん……私とチーズフォンデュ食べる前に罰ゲームの内容決めてたんじゃないかな?)
パンをチーズの中に落とすという失敗は、手先の器用なりょーくんよりも私の方がやりがちだ。
りょーくんはきっとチーズフォンデュの作り方をネットで詳しく下調べしただろうし、あやふや記憶の私よりも罰ゲームについての知識も頭の中に入ってるんだと想像する。
「りょーくん、もしかして事前に罰ゲームの内容を決めてて、食べ終わるまで私に内緒にしようとしてたんでしょ」
どう考えてもそうとしか思えなくなっちゃった私は、目の前の彼に頭の中で想像した事をそのまま声に出したのに
「っていうか……あーちゃん、思ったよりも早くパンを落としたから……」
りょーくんはまだゴニョゴニョと言葉を濁している。
「りょーくんの考えてた罰ゲーム、絶対にエッチな事なんでしょ」
拳を唇に押し当てて私から目を逸らすりょーくんに、更にそう詰め寄ってみると、彼は頬も耳も紅く染めながら、子どもみたいに可愛らしくコクンと頷いた。
「あーちゃんの言う通り……エッチな罰ゲームは考えてた」
「やっぱり! りょーくん絶対そういうのすぐに思いつきそうだもんっ!!」
「でもさぁ、あーちゃんやらかすの早過ぎない? こういうのはさぁ、もっとお互いがワインでほろ酔いになった辺りからそういうゲーム始めるもんだしっ!」
「そんな事言われても落としちゃったのは仕方ないもんっ!」
「仕方ないなぁ罰ゲームは考えていたけど、今のはノーカンにしといてあげるよ」
りょーくんはふぅと息をつきながら私の落とした一回分をチャラにしてくれた。
「なんで?」
「だってこういうのは、もうちょっとあーちゃんの酔いが回った辺りから始めたいし♪」
「酔いが回ってから……?」
りょーくんのその言い方が何か引っかかる。
彼はかっこいいし素敵だけど変態さんだ。だから彼の考えたという罰ゲームとやらもエッチなものに違いない。
「だって酔いが回ってからの方がお互い楽しいと思わない?」
更に「酔いが回った方が楽しい罰ゲーム」という意味合いで、ますますその罰ゲームの内容が気になってしまった。
「ちなみに、その罰ゲームの内容って何?」
私はフォークにパンを突き刺してチーズフォンデュ鍋の中に浸しながら、気になる内容をりょーくんに訊いてみると
「落とした食材の数×1分間裸エプロンで食器のお片付け。勝った方はその間何しても OK♡」
「!!!!!!!!」
彼の口から発せられた斜め上な内容に私はまたパンを鍋の中に沈めてしまった。
「ちょっとあーちゃん! また落としてる!!」
「だってりょーくんがめちゃくちゃ変な事言うんだもんっ! 今のもノーカンだよっ! ノーカンっ!!」
「当たり前だよもうっ……ほら、またお皿出して」
りょーくんは呆れながらまた菜箸で鍋の中からチーズまみれのパンを私の取り皿に置いてくれる。
「でもでもっ! りょーくんの罰ゲームの内容がエッチ過ぎるのが良くないんだからねっ!」
チーズがひたひたに染み込んだパンを美味しく頬張りながら私が言い返すも
「これでもフェアになるように内容を考えたんだよ。最近はあーちゃんからも積極的にしてくれるようになったからキス関連だと大した罰ゲームにならないし、エッチな下着っていきなり提案したところであーちゃんは準備出来ないし俺がエッチな下着つけたってあーちゃんの得にはなりそうもないし。
酔った後の片付けなんて単純にダルいだけじゃん。だから罰ゲームとしてちょうどいいと思ったんだ」
「なるほど……確かにこの後片付けするのは面倒って感じちゃうかも」
「普通の格好で片付けするのはつまらないからこその裸エプロンなんだ。それなら準備の必要ないから♪」
りょーくんの話に納得したものの、やっぱり「裸エプロン」の部分はりょーくんの得にしかなってない気がした。
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