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溶けて絡めて味わって
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「それは絶対にないです。だって彼、包丁やキッチン鋏が使えませんから」
私は夕紀さんを追いかけ、観葉植物を店内に入れながら夕紀さんの予想を否定する。
「えっ?!」
「夕紀さんご存知無いんでしたっけ? りょーくんがまだ10代の頃、刃物を持って危険な行動取ってしまう事が何度かあったらしくて上原さんが彼に包丁の類いを触らせないようにしてたんです」
「……そうなの?」
夕紀さんは本当に知らなかったみたいで、物凄くビックリしていた。
(夏休み期間中に私が長沢金物店に包丁と鋏を預けていた事……長沢さんは夕紀さんに内緒にしていたんだなぁ)
長沢さんは夕紀さんとランチタイムに話をするのが何よりも楽しみにしているような方だ。
それなのに金物店店主としてお客の私のプライベートな情報を簡単に漏らさなかったんだなと私も夕紀さんと同じくらいビックリしていた。
「はい、今は隠さなくても自制きくようになったんですけど、数ヶ月前までは私もその点をすごく気を付けていて」
「刃物で危険行為……そっか……亮輔くん、そうだったんだ……」
私の話に夕紀さんの表情が曇ったので、私は必死に「夕紀さんの所為じゃない」と伝える。
「夕紀さんのあの言葉が原因とかじゃないと思いますよ。彼、家庭環境とか精神状態とか……結構色々あったみたいですし」
「そう? 刃物振り回すようになったのって絶対に皐月が死んだ後でしょ?」
「それは……彼が一人暮らしを始めて刃物が手に届きやすくなったから……かも?」
夕紀さんの指摘にギクッとしたものの、慌ててそう返す私。
「そっか……それで、朝香ちゃんがなるべく手料理作ってあげたりとか色々家庭的な事してあげてるのね」
けど、大人の夕紀さんは私の表情に色々と察してくれたようだ。それ以上深く突っ込まないでいてくれた。
「お掃除や洗濯は彼の方が上手なんですけど、料理は全くやらないっていうか、やれないんで。
ですからクリスマス料理の準備っていうのは無いんじゃないかと」
「そっかぁ~……チラッと見た限りだと食料品っぽい買い物袋だったからてっきり『朝香ちゃんの為に亮輔くんがクリスマス料理作るんだ』って思い込んじゃった。朝香ちゃんごめんなさいね」
「いえいえ」
「やっぱり朝香ちゃんはもう帰りなさい。亮輔くんが朝香ちゃんの帰りを待っているのは間違いないんだもの。
亮輔くんと過ごすクリスマスイブ、2人きりでのんびり過ごしてね」
夕紀さんの方が絶対に疲れているだろうし私としてはいち早くお隣のもりやま青果店へ夕紀さんを帰らせてあげたかったのに、結局私の方が定時で上がる羽目になってしまった。
本当は無理矢理にでも勝手に居残って閉店作業を手伝う気でいたんだけど、19時半になった途端夕紀さんにバックヤードまで背中をグイグイ押されてしまい、エプロン脱いで着替えたかの確認を外側から声掛けされ、渋々私服で出てきた途端に今度は勝手口まで背中をグイグイ押されて店の外へ出されて「また明日ね」なんてバイバイ手を振られてしまった。
「追い出されちゃった……」
夕紀さんはこういう時頑固になるから抵抗しても仕方がない事は当然理解している。
けど解せない。
「そういえばりょーくん、あの時何の買い物してたんだろう?」
私は自転車に跨り、寒い空気をガンガンに浴びながら、彼が30分前にこの辺を行ったり来たりしていたという謎の行動の意味を考えてみた。
(夕紀さんの言う通りりょーくんが手に持っていたのが食料品だったなら、「材料買ったからお料理よろしく」って私にお願いする為に買いに回ったとか?
疲れてヘトヘトで正直手料理するのはしんどいんだけど、りょーくんがそれを望むならやるしかないよね……)
私は夕紀さんを追いかけ、観葉植物を店内に入れながら夕紀さんの予想を否定する。
「えっ?!」
「夕紀さんご存知無いんでしたっけ? りょーくんがまだ10代の頃、刃物を持って危険な行動取ってしまう事が何度かあったらしくて上原さんが彼に包丁の類いを触らせないようにしてたんです」
「……そうなの?」
夕紀さんは本当に知らなかったみたいで、物凄くビックリしていた。
(夏休み期間中に私が長沢金物店に包丁と鋏を預けていた事……長沢さんは夕紀さんに内緒にしていたんだなぁ)
長沢さんは夕紀さんとランチタイムに話をするのが何よりも楽しみにしているような方だ。
それなのに金物店店主としてお客の私のプライベートな情報を簡単に漏らさなかったんだなと私も夕紀さんと同じくらいビックリしていた。
「はい、今は隠さなくても自制きくようになったんですけど、数ヶ月前までは私もその点をすごく気を付けていて」
「刃物で危険行為……そっか……亮輔くん、そうだったんだ……」
私の話に夕紀さんの表情が曇ったので、私は必死に「夕紀さんの所為じゃない」と伝える。
「夕紀さんのあの言葉が原因とかじゃないと思いますよ。彼、家庭環境とか精神状態とか……結構色々あったみたいですし」
「そう? 刃物振り回すようになったのって絶対に皐月が死んだ後でしょ?」
「それは……彼が一人暮らしを始めて刃物が手に届きやすくなったから……かも?」
夕紀さんの指摘にギクッとしたものの、慌ててそう返す私。
「そっか……それで、朝香ちゃんがなるべく手料理作ってあげたりとか色々家庭的な事してあげてるのね」
けど、大人の夕紀さんは私の表情に色々と察してくれたようだ。それ以上深く突っ込まないでいてくれた。
「お掃除や洗濯は彼の方が上手なんですけど、料理は全くやらないっていうか、やれないんで。
ですからクリスマス料理の準備っていうのは無いんじゃないかと」
「そっかぁ~……チラッと見た限りだと食料品っぽい買い物袋だったからてっきり『朝香ちゃんの為に亮輔くんがクリスマス料理作るんだ』って思い込んじゃった。朝香ちゃんごめんなさいね」
「いえいえ」
「やっぱり朝香ちゃんはもう帰りなさい。亮輔くんが朝香ちゃんの帰りを待っているのは間違いないんだもの。
亮輔くんと過ごすクリスマスイブ、2人きりでのんびり過ごしてね」
夕紀さんの方が絶対に疲れているだろうし私としてはいち早くお隣のもりやま青果店へ夕紀さんを帰らせてあげたかったのに、結局私の方が定時で上がる羽目になってしまった。
本当は無理矢理にでも勝手に居残って閉店作業を手伝う気でいたんだけど、19時半になった途端夕紀さんにバックヤードまで背中をグイグイ押されてしまい、エプロン脱いで着替えたかの確認を外側から声掛けされ、渋々私服で出てきた途端に今度は勝手口まで背中をグイグイ押されて店の外へ出されて「また明日ね」なんてバイバイ手を振られてしまった。
「追い出されちゃった……」
夕紀さんはこういう時頑固になるから抵抗しても仕方がない事は当然理解している。
けど解せない。
「そういえばりょーくん、あの時何の買い物してたんだろう?」
私は自転車に跨り、寒い空気をガンガンに浴びながら、彼が30分前にこの辺を行ったり来たりしていたという謎の行動の意味を考えてみた。
(夕紀さんの言う通りりょーくんが手に持っていたのが食料品だったなら、「材料買ったからお料理よろしく」って私にお願いする為に買いに回ったとか?
疲れてヘトヘトで正直手料理するのはしんどいんだけど、りょーくんがそれを望むならやるしかないよね……)
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