87 / 251
【番外編】スープ
2
しおりを挟む
「どうかな? あーちゃんのお口に合ってるかな?」
不安そうに彼が私の顔を覗き込むから
「美味しいよ、ありがとう♡」
私は御礼を言い、彼の頬に軽いキスをする。
「あっ……」
私のキスは想定外だったみたいで私の唇が触れた部分は途端にピンク色が広がり、彼の頬どころか耳や首までもその色で染まっていった。
「キス、嬉しい?」
「もちろんっ!!」
私の問いに即答し、ピンク色の首や耳をコクコクと前後に動かす彼の様子は可愛らしくて私は体だけではなく心までをもポカポカほわほわとさせていた。
食べ終わった後は彼が膝枕をしてくれて、そのまま私を寝かしつけようとしてくれる。
「スープ作ってくれて本当にありがとう。すっごく助かっちゃった」
私は目を閉じた状態で改めて御礼を言うとりょーくんはすぐに「感謝されるほどでもないよ」と謙遜する。
「そんな事ないよ……りょーくんが今日用意してくれたトマトスープ飲んでたら『スープって凄いな』って改めて感じちゃったんだもん」
「あーちゃんだって毎日お味噌汁やスープを食事の度に用意してくれるのに?」
「自分が作るってだけじゃ気付かなかったんだよ……」
謙遜りょーくんに言い返すつもりで言った「スープって凄いな」は、大袈裟な表現のつもりで口にした訳ではなかった。
スープってなんか不思議で、自分で食事を用意する時は「なんとなく汁物はあった方がいい」って感覚で、なんとなくお味噌汁やお吸い物などを作っていた。
暑い日に温かいものを飲むのは冷房の効いた店の中でずっとバイトしている私的にはアリだけど、りょーくんみたいに暑がりな人だと飲みたがらなかったりしていたし……絶対必要な位置付けって訳でもないんだろうなと感じていた。
だけど今日りょーくんが作ってくれたスープは簡単ではあれど、一口だけで空腹の体にスーッと染み渡っていき食材の美味しさや香りがじわじわと広がって何もかも癒してくれる感じがして、今まで私の抱いていた汁物に関する考え方がその瞬間で一気にガラッと変わってしまったんだ。
「俺もいつも思ってたんだけどさ、あーちゃんって夏の暑い時でも生理で体がしんどい時でも必ず決まった日に珈琲豆を焙煎するでしょ。あれって本当は大変なんじゃないの?」
するとりょーくんが優しい口調で私にそんな質問を投げかけてきた。
「んー、焙煎は趣味と勉強を兼ねているからなぁ……大変と思ったことはないなぁ」
1人暮らしを始めて以来2日に1回、定期的に行う私の珈琲豆焙煎は既に生活の一部になってきている。
(アパートでのキッチン焙煎は「早くお店で出している豆の特徴を覚えたい」という強い気持ちがあったこそ始めた訳なんだし、そもそも「大変」とか「苦労」とか感じた事そのものがないんだよねぇ……)
「あーちゃんにとって焙煎は仕事のうちなんだね。使命感があってかっこいいなぁ」
私の返答にしみじみとした雰囲気でりょーくんは納得してる様子だったんだけど
「勿論今はりょーくんに喜んでもらいたくてやってる部分があるよっ!りょーくんに私の珈琲を飲んでもらいたいって気持ちとか、私の『好き』を知ってもらいたいって気持ちとか……仕事の理由の他にも色々あるからっ!」
私は彼に今の私の想いを知ってほしくて、それまで閉じていた両目をパチッと開くなり彼の顔を一心に見つめる。
「フフッ」
私の両目パチッにりょーくんは一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに笑って
「俺も、さっきは『あーちゃんに喜んでもらいたい』って思いながらスープを準備してみたんだよ。
俺はあーちゃんみたいに料理が上手じゃないけど、俺の出来る事であーちゃんに何かしてあげたいなって思いがあったから」
私の頭をよしよししながら、やわらかな微笑みや優しい言葉をシャワーのように注いでくれる。
「おこがましい気もするんだけど、今日の俺のスープはあーちゃんのコーヒーと同じ想いで頑張ってみたつもり。
俺はあーちゃんのコーヒーにいつも癒されていて元気ももらえるから」
シャワーのように降り注ぐりょーくんの沢山の愛情に私は身も心もとろけてしまって……
「ありがと……りょーくん……」
幸せな気持ちで胸いっぱい頭の中もお花畑みたいになっていき、私は大した言葉も言い返せないまま眠りについてしまったのだった。
「おやすみ、あーちゃん♡ 大好きだよ♡♡」
不安そうに彼が私の顔を覗き込むから
「美味しいよ、ありがとう♡」
私は御礼を言い、彼の頬に軽いキスをする。
「あっ……」
私のキスは想定外だったみたいで私の唇が触れた部分は途端にピンク色が広がり、彼の頬どころか耳や首までもその色で染まっていった。
「キス、嬉しい?」
「もちろんっ!!」
私の問いに即答し、ピンク色の首や耳をコクコクと前後に動かす彼の様子は可愛らしくて私は体だけではなく心までをもポカポカほわほわとさせていた。
食べ終わった後は彼が膝枕をしてくれて、そのまま私を寝かしつけようとしてくれる。
「スープ作ってくれて本当にありがとう。すっごく助かっちゃった」
私は目を閉じた状態で改めて御礼を言うとりょーくんはすぐに「感謝されるほどでもないよ」と謙遜する。
「そんな事ないよ……りょーくんが今日用意してくれたトマトスープ飲んでたら『スープって凄いな』って改めて感じちゃったんだもん」
「あーちゃんだって毎日お味噌汁やスープを食事の度に用意してくれるのに?」
「自分が作るってだけじゃ気付かなかったんだよ……」
謙遜りょーくんに言い返すつもりで言った「スープって凄いな」は、大袈裟な表現のつもりで口にした訳ではなかった。
スープってなんか不思議で、自分で食事を用意する時は「なんとなく汁物はあった方がいい」って感覚で、なんとなくお味噌汁やお吸い物などを作っていた。
暑い日に温かいものを飲むのは冷房の効いた店の中でずっとバイトしている私的にはアリだけど、りょーくんみたいに暑がりな人だと飲みたがらなかったりしていたし……絶対必要な位置付けって訳でもないんだろうなと感じていた。
だけど今日りょーくんが作ってくれたスープは簡単ではあれど、一口だけで空腹の体にスーッと染み渡っていき食材の美味しさや香りがじわじわと広がって何もかも癒してくれる感じがして、今まで私の抱いていた汁物に関する考え方がその瞬間で一気にガラッと変わってしまったんだ。
「俺もいつも思ってたんだけどさ、あーちゃんって夏の暑い時でも生理で体がしんどい時でも必ず決まった日に珈琲豆を焙煎するでしょ。あれって本当は大変なんじゃないの?」
するとりょーくんが優しい口調で私にそんな質問を投げかけてきた。
「んー、焙煎は趣味と勉強を兼ねているからなぁ……大変と思ったことはないなぁ」
1人暮らしを始めて以来2日に1回、定期的に行う私の珈琲豆焙煎は既に生活の一部になってきている。
(アパートでのキッチン焙煎は「早くお店で出している豆の特徴を覚えたい」という強い気持ちがあったこそ始めた訳なんだし、そもそも「大変」とか「苦労」とか感じた事そのものがないんだよねぇ……)
「あーちゃんにとって焙煎は仕事のうちなんだね。使命感があってかっこいいなぁ」
私の返答にしみじみとした雰囲気でりょーくんは納得してる様子だったんだけど
「勿論今はりょーくんに喜んでもらいたくてやってる部分があるよっ!りょーくんに私の珈琲を飲んでもらいたいって気持ちとか、私の『好き』を知ってもらいたいって気持ちとか……仕事の理由の他にも色々あるからっ!」
私は彼に今の私の想いを知ってほしくて、それまで閉じていた両目をパチッと開くなり彼の顔を一心に見つめる。
「フフッ」
私の両目パチッにりょーくんは一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに笑って
「俺も、さっきは『あーちゃんに喜んでもらいたい』って思いながらスープを準備してみたんだよ。
俺はあーちゃんみたいに料理が上手じゃないけど、俺の出来る事であーちゃんに何かしてあげたいなって思いがあったから」
私の頭をよしよししながら、やわらかな微笑みや優しい言葉をシャワーのように注いでくれる。
「おこがましい気もするんだけど、今日の俺のスープはあーちゃんのコーヒーと同じ想いで頑張ってみたつもり。
俺はあーちゃんのコーヒーにいつも癒されていて元気ももらえるから」
シャワーのように降り注ぐりょーくんの沢山の愛情に私は身も心もとろけてしまって……
「ありがと……りょーくん……」
幸せな気持ちで胸いっぱい頭の中もお花畑みたいになっていき、私は大した言葉も言い返せないまま眠りについてしまったのだった。
「おやすみ、あーちゃん♡ 大好きだよ♡♡」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる