【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

文字の大きさ
上 下
78 / 251
落ち葉降る

★1

しおりを挟む



「今度の休みにさ、電車に乗って紅葉見に行かない?」
「紅葉?」

 秋深まる11月下旬。
 りょーくんから意外な外デートのお誘いを受けた。

「もうモミジが紅いんだね。そんな時期なのかぁ……」

 確かに、朝晩はすっごく寒いのに昼間はポカポカとして寒暖差の激しさを肌で感じる。落葉樹の色づきにはもってこいの時期だ。

「今がちょうど見頃らしいよ。イチョウ並木なんて木だけじゃなくて地面も真っ黄色でとても綺麗みたいでさ。
 朝から歩き回ると疲れるだろうから昼間はゆっくり映画を観て、夕方から紅葉のお散歩ってどうかな?ライトアップされているモミジも綺麗だし、街灯に照らされたイチョウの木からはらはら葉が落ちるのを見るのも綺麗だと思うんだ」
「電車に乗って、映画と……紅葉のお散歩かぁ……確かに良いかも」
「あーちゃんもそう思う? 最近、大学の帰りをバイクで送れなくなったからスカート履く日も増えたでしょ? この前の広島帰省で秋服もだいぶ増えたし……」
「それってストレートな意味で『私の秋服が見たい』って話?」

 外デートのお誘いは嬉しいし、デートプランも素敵だと思うんだけど、りょーくんの口から出た「秋服」のワードに私は気付いてしまった。

「…………」

 途端にりょーくんの目線が私から逸れる。

「やっぱり! 気まずそうなリアクション取ってるし!」
「…………」

 確かに誕生日で色々服を貰っただけでなく、この前の広島帰省で私は沢山服を買った。
 高校時代の友達みんなに「似合う似合う」って持ち上げられてテンション上がっちゃって、購入した服を段ボールに詰めて宅配便で送らなきゃいけないくらい大量買いしてしまったくらい。
 今もその時買った服を身に付けてはいるんだけど、まだまだ袖を通してない服もあって……。
 
「りょーくん?」

 私はワザと、真澄がよくやるジト目を真似てりょーくんを見つめてみる。

「…………ほら、ミニスカートとかさぁ……せっかく買ったのに着ないのはもったいないっていうか」
「やっぱり! りょーくんのエッチ!!」

 頬を赤らめながら出た彼の本音に、私は頬を膨らませる。
 りょーくんは、私が勢いのみで購入した際どい丈のミニスカートを履いてほしいらしい。

「ミニのプリーツスカート、せっかく買ってたのにまだ履いてるとこ見てなかったからさ……見たいなーって思って」
「だってあのスカート、真澄がプレゼントしてくれたニットワンピよりも丈が短いんだよ? ロングブーツまだ買ってないから脚が余計に丸出しになっちゃう!」
「ブーツはあのショートブーツでも良いんじゃないかな? あーちゃんは脚のムッチリ感を気にしてるみたいだけど、俺はあーちゃんの脚キレイだと思ってるよ」
「真澄と比べたら太いもんっ!」
「比較対象が矢野だからだろ。もっと大勢の女性の脚と比較しなきゃ♪」
「その発言変態っぽいぃ~」

 確かに、サプライズ誕生日の日は白のニットワンピにショートブーツを履いた私の姿をみんな褒めてくれた……けど、流行りとはいえ膝上20㎝から足首まで生脚っていうのはちょっと恥ずかしい。だからサプライズ誕生日以後ニットワンピは着ていないし広島で買ったミニ丈のプリーツスカートも履いていなかった。

「映画はあーちゃんが1番観たい映画優先するからさぁ、ミニスカート履いてデートしようよ。ねっ♡」

 変態と私が罵っても堪える気配がないりょーくんは、甘えた声を出してスリスリと可愛らしく私に擦り寄る。

「でも、電車に乗るんだよね?」
「お姉さんがプレゼントしたっていうオシャレコート羽織れば大丈夫だよ。電車内は痴漢に遭わないよう俺がしっかりとあーちゃんをガードしてあげるから」
「コートでミニスカートが隠れるなら、そもそもミニスカートにする意味……」
「あるよっ! 映画みたいな暗いところならコート脱いでもミニスカート姿で居られるし、夕食は個室にしちゃえば俺しか見えないよ?」
「………」

 つまりは、りょーくんが間近で私のミニスカートや生脚を堪能したいという意味だ。

「紅葉見に行く観光客は誰が何着てるなんて目に行かないだろうし、ミニスカート履くなら絶好のタイミングだと思うんだけどなぁ~」
「確かに……せっかく買った可愛いスカートなのに履くタイミングを失っているかも……」

 りょーくんのよこしまな考えが気になるけど、彼の意見も一理ある。

「俺も可愛いと思うよ。あのスカートも、スカート履いてるあーちゃんも♡」
「そうかなぁ」

(黒髪になって以来甘え上手になっている気が……)

 今までの金髪ウェーブなりょーくんもかっこよくてドキドキキュンキュンしてはいたけど、この頃は特に別の意味合いでドキドキキュンキュンの頻度が増えたように感じる。
 今だってりょーくんの甘えたスリスリ攻撃やかっこ可愛い微笑みに私の気持ちが揺れているんだから。

 金髪時代からりょーくんの少年っぽさっていうか可愛らしさを時々感じてはいたんだけど、今の黒髪マッシュショートのヘアスタイルになって以降はこういう甘えシチュエーションが増えてほだされまくってるような気がしている。

(最近のりょーくんは甘え上手になってる気がして余計にドキドキしちゃうんだよね。ヘアスタイルが特に私のキュンを刺激するというか……)

「せっかく買った服も可哀想だよ。あーちゃんのお友達だって『似合う』って薦めてくれたんだからさっ♪」
「確かに……私の友達はみんな、そう言ってくれてはいた……し」
「ほら~広島のお友達も大絶賛だったんだろ?お墨付きもらってんじゃん♡
 地元のお友達に褒められたあーちゃんの服装見たいなー♪ あーちゃんの可愛いミニスカート姿を見たいなー♪」
「うぅ」

 甘えながら私の耳朶みみたぶに軽くチュッチュッとキスをしてくるりょーくんに脳も心臓もキャパオーバーになっちゃって

「も~……仕方ないなぁ」

 という声が自然と出て彼のお願いをきいてあげる。

「やった♡ あーちゃん大好き♡」

 りょーくんはリアルに喜んだみたいで耳朶のキスから甘い囁きに変え

「やあぁぁぁぁん♡♡♡」

 全身の力がクタッと抜け、彼に体を完全に預けた。

「喋っただけなのにトロトロ顔だねあーちゃん♪」

 りょーくんは私の顔を見つめてニッと笑うと、低い声で私を更に煽る。

「はうぅ♡」

 りょーくんの甘え声も低い声も大好き。

「あーちゃんの耳にいっぱいキスしたい♡」

 私は既にそうなっちゃってるけど、りょーくんもエッチな気分が高まっているのがよく分かる。

「映画観てる最中、耳にエッチなキスしないならいいよ……」

 私は胸もお尻も弱いけど、耳も結構弱い。

「分かった♡ 映画の時は囁いたり、耳にキスしたりしないよ♡」
「ああん♡♡♡」

 今日は耳責めから、エッチな時間が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。 地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。 ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。 イラスト提供 千里さま

処理中です...