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【番外編】可愛い友人(智樹side)
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しおりを挟む夕方になって頼んでいたオードブルを取りに行き、笠原にフェイスペイントしてもらってパーティー用のとんがり帽子をおちゃらけて身に付けたらますみんとの打ち合わせ時間となった。
「そろそろむらかーさんとますみんがここに来る時間だなっ笠原っ! むらかーさんも大変身して可愛いプリンセスになってるかもだね!」
「そうだな……あーちゃん絶対に可愛くなってるだろうから楽しみだ」
笠原は一応楽しみなセリフを言うものの、まだ自分の今の見た目に不安を抱えているように見えた。
「大丈夫だよ! 今の笠原の姿を見たらむらかーさん一層惚れ直すんじゃないかな。
さっきますみんからメッセージきたんだけど、むらかーさんも笠原に好かれるような女の子になりたいって言ってたみたいだよ!」
だから俺はついさっき届いたますみんからのメッセージの内容を伝え笠原を元気付けてやる。
「それホント?!」
笠原は真剣な表情に変わって俺の手をガシッと掴んでくる。
「ほんとほんと! むらかーさんが寝起きに拒絶したのは笠原の事が嫌いになったんじゃなくて、単に女の子としての自信がなくなっちゃっただけなんじゃねーの?
ますみんが、『笠原くんに振り向いてもらいたい』みたいなこと言ってたってメッセージきたし」
「ほんと?! あーちゃん本当にそんなこと言ったの?!」
「ほんとだって! ますみんからきたメッセージ画面見る?」
信じられないようだったので、それに該当するライン画面を笠原に見せてあげた。
「ほんとだ……本当にあーちゃん俺のこと好きなんだ……」
笠原は目をキラキラと輝かせながら嬉しそうな表情をしている。
「しかもヘアスタイルを村川さん好みにしたんだし、嫌われる要素ゼロじゃん! 良かったな笠原!!」
俺の呼び掛けに笠原は何度も頷いていた。
そこからしばらくしない内にますみんとむらかーさんと合流して、楽しく誕生日パーティーが始まった。
笠原もむらかーさんも幸せそうで……ますみんもとても楽しそうだった。
俺も勿論楽しかったけど、今日1日ずっとここで起きていた事を見てきた俺にとってはもう、今この2人を見る目がだいぶ変わってしまった。
俺はずっと笠原に積極的に話し掛けたりして……言葉は少ないけれど、それなりにちゃんと友人関係を築いているものだとばかり思っていた。
大学での笠原はポーカフェイスでありつつもほんのり温もりのある塩対応をするキャラだ。
でも本当の笠原は彼女がテレビを観てキャーキャー言うだけでヤキモチを妬いたり嫌われてるかもしれないと静かに泣いたり甘いチョコレートをバカ食いしたりする可愛い面を沢山持っていて、笠原を盛大に勘違いしていた事に気付く。
今日1日だけでこの1年半がひっくり返ったのは正直ショックだったけれど、幸せそうな2人を見ていたら笠原の素は元々後者の方でそれを引き出してあげたのはむらかーさんなんだという事に気付かされる。
マンションをますみんと一緒に出て電車で俺の家へ向かう途中、ますみんに「笠原の素の部分を見たかもしれない」ということを話した。
「亮輔くんはトモとは違ってすごく繊細なところがあるんだから、からかったりしないでよ! 今日見たことも周りに言いふらしたりしないでよ!」
ますみんに強くそう言われたけど、分かってるよ。今日の事は多分、ますみんにも言えそうにない。
今日の笠原は、俺の心の中に留めておくつもり。
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