【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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【番外編】可愛い友人(智樹side)

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 藤井智樹ふじいともきまだまだ絶賛19歳。
 この1年半、ずっと笠原亮輔かさはらりょうすけの事を勘違いしていました。




 今日はむらかーさんこと村川朝香むらかわあさかちゃんのサプライズ誕生日パーティーを開く予定で、笠原と部屋の飾り付けをする為に2人の住むマンション最寄り駅に12時45分に到着した。
 むらかーさんは今、ここから離れた女子力高めのエリアにてますみんと13時からのランチをする予定になっていて、逆算したらほんの5分前にこの駅からますみん方向へと出発したばかりに違いない。
 ……つまり、むらかーさんが確実に家を開けた時間を狙って俺がこの駅に(ギリギリニアミスする事なく)シュバッ! と舞い降り笠原と黙々リビングの飾り付けをするっていう寸法だ。

「駅直近なのってやっぱり良いよなー家主付きじゃなくても迷わなくて済むし」

 笠原に駅まで迎えに来てもらっても良かったんだけど、ますみんの話を聞いたら駅から歩いてすぐらしいっていうんで、1人で来てみたんだけどさぁ……

「でけぇ」

 まぁ……3人でシェアするならアリかな?みたいな、絶対に学生は使わないようなマンションでちょっとビビる。
 ますみんの言う通り、これの一室をポンと買ったっていう20代の親戚とやらの顔が見てみたいと思った。

 時刻は12時48分。約束通りではこのエントランスに笠原のバイクがちょうどブブーンッて到着して……って、マジで時間ピッタリに黒い大型バイクを運転する笠原(らしきフルフェイス男)が俺の目の前で停まり……

「ああ……待った?」

 慣れた感じで駐輪場にドッドッドッドッというエンジンを切りながらバイクを入れ、フルフェイスヘルメットを脱いで首を揺らしながら中低音なイケボが俺の鼓膜を優しく揺らす。

「いや、待つも何も時間ピッタリに来なくちゃむらかーさんとニアミスしちゃうじゃん? 待ちたくても待てねーって」
「それもそうか」
「笠原どしたの? いつもよりちょっと天然ボケっぽくなってない?」

 鼓膜を優しく揺らすイケボは確かに笠原のソレで、俺はやや斜め下を向きながらフッツーに返事を返していたんだけど……

 「いつもならそんなバカみたいなやり取りすら俺としたがらないんだけどなー」なんて思いながら目線を上昇させていったら

「えっ??!!!!誰???????」

 どうやら俺は笠原とは全くの別人と会話のやり取りをしていた事に気付いてよろけそうになる。


(声は笠原っぽかったけどヘアスタイルも髪色も全然違うぞコイツ!!!! 笠原の親戚か誰かか?)

 身長183㎝の高身長に肩まで伸びた金髪ウェーブ、そこからチラ見えするイカツイ銀色チタンピアス20個っていうのが笠原亮輔の1番の特徴だっていうのに、目の前のこの男は真ん中の「肩まで伸びた金髪ウェーブ」だけが抜け落ちていて、代わりに「スッキリとした黒髪ショートマッシュ」になっている。

「えっ?誰って……俺だけど」
「だーから名前を名乗ってくれよ! マジで誰だよ!! オレオレ詐欺かよ!!!」

 当然の事、俺はそう言いながら目の前の男をピシッと指差したんだけど

「……ああ、この頭な。これはいつも世話になってるところでカットとヘアカラーを」

 笠原そっくりな声をしたその男はそう言いながら手で自分の頭を掻き上げたものだから

「!!!!!!!!!!!!!!!!なんで?????!!!!!!!!」

 思わず「マジで?」ではなく「なんで?」と理由を訊いてしまったのだが、この男が本当に笠原亮輔であるならば俺の「なんで」に即答する筈がない。

「……エレベーター、こっちだから」

 やはり黒髪ショートマッシュ男は俺の「なんで」を無視していそいそとエレベーターへ向かい俺にその場からの移動を求めた。

「おう」

 1年半前から笠原亮輔って男は基本的に俺の話をスルーしたりシカトぶっこくのがデフォなのだ。それは決して笠原亮輔が冷徹冷酷な男という意味ではなく無駄にテンションの高い俺に真面目に向き合うのがめんどくさいというのが理由で……。

(今は俺の「なんで」に真っ先に答えて欲しいところだったけど、それでこそ笠原亮輔だわー。レスポンスないのが真実味を増すわー)
 
 黒髪ショートマッシュ男の後をついていきながら、「こいつはマジで笠原だ」と理解していく悲しい俺だった。

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