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解けない魔法
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しおりを挟む黒髪イケメン男性にもビックリだけど、リビングに入って私は更にビックリした。
「えっ? 何この可愛すぎるリビング!!」
目の前に広がったのは、リビングいっぱいに飾られている赤やピンクを基調とした手作りのオーナメントやハート型の風船。
「先月の俺の誕生日はあーちゃんに幸せにお祝いしてもらったから、お返しのサプライズだよ」
感嘆とした声を上げる私の手を、大きくて温かい手が強くギュッと握ってくれていて……「やっぱりこの人は私の大好きなりょーくんなんだ」と実感出来た。
「さあっ! 早くみんなで食べよー!! 俺ら、朝から何も食べないで準備したんだからペコペコなんだよー!!」
藤井くんは私達を椅子に座らせて、用意していた料理をテーブルに並べ始めた。
「むらかーさん勝手にキッチン使ってごめんね! って言ってもオードブルを置くくらいしか使ってないんだけど」
「ううん、それは良いんだけど……でもこのお料理も豪華で凄い……」
「朝香どう? ビックリした?」
私の向かいでニコニコ笑う真澄の表情を目にしたら
「何時間も前からビックリしまくってるよぉ……」
自然と目が潤んできて涙がこぼれそうになった。
「あぁんっ! せっかく綺麗にしたメイクが落ちちゃう!」
真澄が急いでティッシュをとって私の目から丁寧に涙を吸い取る。
「あーちゃん泣かないで」
りょーくんが温かい手で私の背中を優しくさすると真澄がりょーくんに怒り出した。
「そもそもサプライズバースデーどころか資格コースを受講することも、ガールズバーのハロウィンイベントの手伝いに行ってたことも、全部ぜーんぶ朝香に内緒にしてた亮輔くんが悪いんだからね!!」
「え? 資格コース? ガールズバーのハロウィン手伝い?」
真澄からのネタバラシに私が目を丸くしていると、りょーくんが申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん……ちゃんと話そうと思ったんだけど、突然中学の同級生から勤め先のガールズバーのハロウィンイベントの手伝いしてくれって頼まれちゃって、それが明け方とか3時前とかまで5日間続くから流石にヘトヘトで……それであーちゃん全然話をする余裕がなくなって」
「話が出来ないならメールで伝えなさいよ! バイトを辞めてパソコンの資格コースを受講する件は私の口から言うと朝香を除け者にしてるみたいに勘違いされちゃうからちゃんと亮輔くんから必ず伝えてねって言ったのに!! 朝香めちゃくちゃ泣いてたんだからね!!」
りょーくんに突っかかるように怒る真澄を藤井くんは「まーまー」と宥めている。
「でもさー、この飾り付けや俺のペイントも全部笠原がやったんだよ。これだけイラストや切り絵が上手だったらそりゃ手伝いに借り出されるのも当然じゃない?」
「わあぁ……りょーくんのコンビニやお店のよりもレベルアップしてて凄い……」
そう言いながら藤井くんはダイニングテーブル用の照明を指差し、糸で吊るされた美麗な飾りを私に見せてくれ、りょーくんも詳しい話をし始めてくれた。
「10月入った辺りだったかな……コンビニバイト中に中学の同級生と偶然会って。お互い姿が変わってたから驚いてさ。
そいつは俺が美術得意なの覚えてたから無理やり手伝わされたんだよ。昨日はふぇあペイントとか雑用やらされて」
「笠原がガールズバーに行ってたのが月曜日と、水木金。火曜日は俺とこの飾り付けの為の材料調達に行ってたんだよ。むらかーさんごめんね俺もますみんも共犯みたくなっちゃって」
「じゃあ、りょーくんの浮気じゃなかったんだ……」
コンビニで出会った女性はりょーくんの同級生で、「カラダを借りる」とか「一人じゃ弄れない」とか言ってたのってエッチな事じゃなくて飾り付け作業の事だったというのをようやく理解する私。
「笠原はむらかーさんが大好きなのに浮気なんかするわけないじゃん! 今日もこの髪型にする時だって笠原すげー嫉妬してて……」
「てめっ!! それ絶対に言うなって言っただろうが!!」
藤井くんが何かを言いかけたところでりょーくんが藤井くんの口を抑えようとする。
その様子に私が首を傾げていると、全員分のグラスに飲み物を注いだ真澄がパーティーを開始させた。
「ま、いいじゃんいいじゃん! って事で朝香20歳の誕生日おめでと~!! かんぱーい!!」
「かんぱーい!」
「かっ……かんぱーい!!」
私も慌てて真澄や藤井くんのグラスに自分のを近付け、それからりょーくんのグラスにも乾杯をする。
「おめでとうあーちゃん」
「ありがとうりょーくん。あと、勘違いしててごめんなさい」
「ううん、俺もちゃんと説明してなくて本当にごめん」
乾杯の勢いに呑まれたものの、この瞬間でりょーくんと仲直り出来て本当に良かったと思った。
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