【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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【番外編】温もりと涙(亮輔side)

★1

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 先生に見合う男になりたくて伸ばしたかった背は、高校に通い始めてから成長し始めた。

 生きるのに時々辛くて、常に何かを傷付けていないと自分自身を保っていられなくなっていた。

 体を切り刻みたくなっても、店長から刃物を隠されるようになって……唯一許されたピアスも数ヶ月に一回しか開けさせてもらえない。

 苦しくて、苦しくて、苦しくて、苦しくて……。


 気が付いたら店長に隠れて、ネットで知り合った年上女性の隣で眠るという怪しげなアルバイトに手をつけていた。




 最初に出会ったのは、「香織」と名乗った人妻だった。
 先生と同じ、茶髪の綺麗なウェーブヘアをしていて……先生みたいに「パートナーに傷付けられている女性」でもあった。

「セックスでなければ不倫じゃないよね」

 先生と姿形は似ているのに、そんなしたたかな言葉を使えるのは、それだけ経験値を得ているからなのかもしれない。
 繊細なのに強かで芯の強い香織に幼い俺は一気にかれ、お互い寂しい時間を補うようにベッドの上で寝転がり着衣のまま触れ合って、時々唇を重ねたり頬を仔犬みたいに舐めてあげたりしていた。





 けれども、「女は時間が経つと欲が出てくる生き物だ」という事を俺は香織との関係で学ぶ。

 俺はただ香織のそばで寝転んでいればそれで良かったし、充分幸せだったのに……次第に「意気地なし」と罵られるようになった。
 強かな香織はセックスの誘い方もずるく、自らの口を汚す事なく16歳に満たない俺に強要しようとしたんだ。

 俺はショックだった。
 ネットでこういう行為をする女を見つけるような俺だけど、一般常識が無いわけじゃない。
 香織の事は好きになりかけていたけれど、身勝手に未成年の俺が人妻を性器で貫いてしまったら香織がどうなってしまうかくらいは判断がつく。

 仕方なしに俺は香織の頬以外の部位にも舌を這わせた。

 罵られながら全身をくまなく舐める行為はとても興奮したし、嫌ではなかった。
 香織の為なら俺は生涯意気地なしな舐め犬に成り下がっても良かったんだ。


 だけどやっぱりいつまでもそんな関係でいられるはずはなく、香織とは3ヶ月程したら会えなくなってしまった。
 「妊娠した」と、香織から一方的に別れを告げられたんだけど……多分舐めてばかりいる犬みたいな俺がつまらなくなったんだろうって、そう理解した。



 次に出会った人からは、添い寝だけでなく求められればちゃんとセックスもしてあげようと思った。

 でも……いざ本番を始めようとすると、どうしても先生や香織の青白い肌を思い出してしまってセックス直前に吐いたりえずいたりするようになってすぐに嫌われた。

 以後はその繰り返し。
 誰かの側に居たいと願って、ネットで女を探して……添い寝して、セックスを求められ「おえっ」ってなったら終わり。のサイクルを何度か繰り返す事となる。

 18の誕生日を迎える頃にはもう、先生が大好きだった中学生時代の自分を思い出せなくなるくらい、「冷たい男」「見た目に反して気持ちが悪い男」と呼ばれるようになった。
 7人目のソフレのお姉さんは優しい人だったし、お互い「いつまでも一緒に寝転んで笑っていたいね」と言い合っていたのに、そういう時に限ってお姉さんの仕事がうまく行き過ぎて海外へ栄転。……代わりに俺の目の前に現れ色んな意味で最悪だったのが「絵梨」だ。

 絵梨の影響で酒とタバコを覚え始め、呑んだら何もかも忘れて無心で何でも出来るような気になれた。

「私、結構エロいから前戯が長くても平気。ちょうどオーラルを極めたいなーって思ってたところなんだ」

 その言葉を間に受けて、情がほんの少し湧いて……それで、酒とタバコで馬鹿になった頭でフラフラになりながらも性行為に挑戦してみた。
 それなりに嬉しい言葉をかけてくれた絵梨への、せめてもの御礼のつもりだった。

「ねぇ亮輔。今日は挿入しながらこんな事やってみたいんだけど」

 オーラルでも良いって言ってた癖に、いざ挿入が出来ると知ると絵梨はそればかり求め……それどころか、アブノーマルな行為まで要求してくるようになった。

 俺はアルコールの強い酒やメンソールの強いタバコで脳も体もおかしくさせながら気持ち悪さを誤魔化して、表情を顔に出さずこんなに頑張っているのに……なのにちっとも癒されないし気持ち良くならない。
 俺自身に沸き起こる性欲の意味すらも嫌悪するようになって、苛立ちやストレスから絵梨の体に歯型をつけるようになった。

 「絵梨から色々要求されてもこっちは我慢して歯型で済ませてやってるのに」という気持ちが強くなって、絵梨を冷たくあしらうようになり、結局付き合いは長く続かなかった。



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