【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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おとぎばなしの魔法にかけられて

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 それからベッドに寝転がりスマホで動画を観ながら時間を潰して……

 時刻は深夜2時過ぎ。

「ヤバい、本当に寝れなかった……」

 火曜日は2限からの授業だからこのくらいの夜更かしなんてまだどうにでもなる……けど、りょーくんに「ずっと起きてた」なんて知られたら夜更かしを叱られてしまいそうだ。
 小言を言われるかもしれないけど、いち早く会いたい。「おかえりなさい」を言いたいし、プレゼントの話もしたい。

「私の部屋の窓から見下ろしたらりょーくんが帰ってくるの見えるよね?」

 私は部屋着姿のまま廊下を通り過ぎて自分の部屋の窓を開ける。
 そこから首をひょこっと出して目線を真下に向けると、深夜であっても街灯や駐輪場設備の照明のおかげでマンションのエントランス付近が確認出来た。

「これならりょーくんが帰ってきても分かるね」

 そう呟き、しばらくそのまま真下の様子を眺めていた。

 


「あっ、りょーくんが帰ってきたっ」

 見下ろし始めて5分と経たないうちにりょーくんのバイク音が聞こえてきて、駐輪場に停まる。
 それからすぐに、メットを外したりょーくんの金髪が視界に入った。

(声を掛けようかな……でも夜中だから周囲に迷惑だよね?)

 そう思いながら、りょーくんがエントランスの中へと入っていくのを見届けようと私はそのままじっと見下ろす。

「あれ?」

 りょーくんはメットをバイクと一緒にカバーで覆ってしまい、そのまま立ち止まっている。

「何しているんだろう?」

 りょーくんはその場に立ち止まったまま、スマホの画面を見たり道路を見渡したりしていた。

「どうしてマンションの中に入らないのな?」

 不思議に思っていたら、離れたところから一台の黒い車がマンションの方へ近付いてくる。

「えっ……」

 りょーくんはそれに気付くと車の方へ軽く手を挙げ、何か合図しているようだ。

「とまった……りょーくんの前に」

  車はゆっくりとりょーくんに近付き、そして停車した。
 それから運転席が開いて、1人の女性がりょーくんに抱き付く。

「!」

 それだけではなかった。
 女性は嬉しそうにりょーくんの腰に手を回して、りょーくんを助手席に乗せたんだ。

「嘘でしょ……?」

 女性はまた運転席に戻ると、エンジンをかけて何処かへ行ってしまった。

「どういう事なの……?」



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