【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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おとぎばなしの魔法にかけられて

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「え? あーちゃんの外見をどう思うかって?」

 いつも通りお店の閉店時間ピッタリにバイトを終え、買ったばかりの自転車に乗ってマンションに戻った。
 そして今は、1時間後にりょーくんがコンビニバイトへ向かうまでのひとときを飲食しながら過ごしている最中だ。
 私は真澄との会話を通して気になりまくっていた内容をりょーくんに直接訊いてみた。

「うんっ!」
「どうしたの? 突然」

 彼は大人っぽい余裕のある表情で食後のコーヒーに口を付け嚥下えんげした後で私の唇にチュッとキスをする。

「えっと……なんとなく? 見た目的に私ってどうなのかなって思って」

 りょーくんはニコニコしているものの首を傾げていて、何故いきなり私がそんな質問をされてるのかサッパリ分からない様子だ。

「見た目的にどうって……あーちゃんはいつだってめちゃくちゃ可愛い外見してると思うけど?」

 彼の返答に私は心の中でガッツポーズを取った。

(嬉しい!! 私の外見を「めちゃくちゃ」までつけて可愛いって褒めてくれてる!!)

「わ、私って具体的にどの辺が可愛いのかなぁ?」

 調子に乗って更に突っ込んだ事を訊いてみると

「どの辺っていうか、全体的に? ほんわかして可愛いっていうか♡」

 りょーくんはピンク色のオーラたっぷりに、ほんわかとした笑みを浮かべながら答えてくれた。
 しかも頬も耳も赤くしてて、いつもかっこいい彼がこの瞬間だけ可愛い男の子になっている。

「嬉しい♡ じゃあ私の見た目ってりょーくんの好みの女性のタイプだったりする?」

 りょーくんの可愛い男の子な態度に自信がついてきた私はもっともっと具体的にそんな部分まで質問してみたら

「あー、好みの女性の見た目と同じかって言われたらなぁ……それとはちょっと違うんだよなぁあーちゃんは」

 バッサリと切り捨てられるような返答が彼の口から発せられた。

「え?」
「『好みの女性のタイプ』ってアレでしょ? 見た目100%で判断するヤツでしょ?」
「…………私って、りょーくんの好きな見た目とは違うんだ?」

 返ってきた言葉が信じられなくて思わず聞き返しても

「そうだね。あーちゃんは胸が大きくてそこは好みではあるんだけど、顔やスタイルは俺の好みとは違うかな。どちらかというとスラッと背が高くてっていうのが俺の今までの傾向だから」

 サラリとそんな事を言われ、ショックを受ける。

「…………そういえば、りょーくんの初恋の人は皐月さんだもんね」

 思い出してみればそうだった。私は確かに皐月さんとは見た目が真逆だった。
 そして元カノの絵梨さんも皐月さんと似た見た目をしていたし、きっと今まで付き合ってきた女性もその傾向が強かったんだろう。

「まぁそうだね」

 りょーくんはコーヒーカップの中身をグーッと飲み干して席を立つ。

「……」
「じゃあそろそろ行くね。あーちゃんはゆっくりおやすみ」

 そして私に笑顔でヒラヒラと手を振るとそのまま玄関へ直行していった。

「うん……りょーくんいってらっしゃい」

 私も玄関で手をヒラヒラして彼を見送る。

「行ってきます! あーちゃんまた明日ね♪ 明日は1限からの授業なんだから俺が帰ってきても起きてちゃダメだよ。夜更かし厳禁っ!」
「……うん」
「おやすみ♡」

 彼はニッコリ微笑み私の頭をポンポンして、玄関扉を開けて出掛けていった。



「りょーくんにハッキリ確認した事なかったけど、絵梨さんより前のソフレしてた女性もみんな皐月さんみたいな見た目だったのかな……」

 彼の見送りが済んだ後も、私はその場から動けずにいた。

「りょーくんの見た目がとても素敵だから、逆にそうでないとおかしいかも……ってなると、私はめちゃくちゃイレギュラーな彼女って事になるんだ……」

 りょーくんが私を好きになったきっかけは珈琲豆の焙煎香で見た目から好きになったわけではない。
 大学に入るまでずっと田舎から出たことがない芋っぽい私は、彼とごく普通の出会いをしていたら……眼中になかったって意味になる。

 真澄の前ではあんなに反発していたのに、今になって急に不安になってしまった。
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