【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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私達の親友

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「りょーくんっ!!」
 
 真澄の話にビックリした私は、彼の名を呼び掛けながら隣を向いた。

「やべっ」

 りょーくんは手で口を押さえながらバツの悪そうな表情をしていて

「ヤベェとは何よヤベェとは!!」
「っていうかりょーくんっ! 真澄がリビングに来た事知ってるってどういう事っ? さっき私に『エッチ見られたなんて気のせいだろ』みたいな話した癖に!」
「はあぁ? 亮輔くんってば朝香に嘘ついたの? 信じらんないっ! 私の事めちゃくちゃ睨んでたってのに!!」

 りょーくんの反応にカチンときた私達は、彼を交互に口撃する。

「いや、睨んではなかっただろ別に」
「いやいやいやいや!! あれは絶対に睨みよ、睨みっ!! しかも鼻で嘲笑あざわらうようなさげすんだ雰囲気のヤツよっ! 私はただお水を飲もうと廊下を通っていただけなのにっ! それで、ベッドルームの扉が少し開いてて何やら声がするから暗がりの中そーっと扉のそばまで近付いて確かめようとしただけなのにっ!! 覗き見するつもりはなかったんだからこっちはっ!!」

 どうやら真澄は喉が渇いて途中に目が覚めたらしい。

(まぁ、あんなにビールを飲んだらそうなっちゃうよね……)

「あのドア、どーせ亮輔くんが事前に開けてたんでしょっ! 朝香を興奮させる為だか自分の性癖だかなんだか知らないけど、私っていう女友達が泊まる夜にはやらないで! 迷惑でしょうが!!」

 真澄の怒りのボルテージは上がり、一言発する事に声が大きくなっていっている。

「迷惑……確かに」

 りょーくんは真澄の勢いに呑まれ、段々と反省する意識を持ち始めたようだった。
 りょーくんが私の知らない内にベッドルームの扉を少し開けていただなんてビックリだし真澄という親友が泊まりに来てる日に限ってそんな事をしただなんて正直ドン引きしてるんだけど、真澄の怒りやりょーくんの反省姿勢を目の当たりにしてると自分の怒りや恥ずかしさが自然と抑え込まれていく。

「私、仕方なく洗面台でお水飲んだんだからねっ! 親友に洗面台の水を飲まざるを得ない状況にしないでほしいのっ!」
「それも……確かに」
「洗面台の水が衛生面で飲む事が出来る云々の話をしてるんじゃないのよ!! 常識的なモラルってもんがあるでしょ!!」
「はい」
「亮輔くん反省してっ!」
「ごめんなさい」

 りょーくんは素直に頭を下げて真澄にきちんと謝っていた。
 真澄がめちゃくちゃ怒っていて、私も一緒になって叱るどころか彼の同居人として真澄に申し訳ない気持ちになり、私まで彼に怒るのはちょっと違うんじゃないかと思った。

「付き合ってるんだしラブラブなんだし同棲始まったばかりでウキウキなのも分かる」
「はい」
「『エッチするな』なんて私も野暮な事は言わない」
「……はい」
「ただ、いつでも常識的な事は頭に入れておいてほしいの!」
「ごめんなさい」
「戸はしっかりと閉める!」
「以後気を付けます」
 
 いつの間にかりょーくんは床に四つん這いになっていて、立って腰に手を当ててる真澄を見上げる体勢でいて……。

「私の方こそごめん真澄。だからこれ以上りょーくんを叱らないであげて」

 居た堪れない気持ちになり真澄にそう優しく言い宥めたのだった。




 
「さぁて!朝香の美味しい和食ご飯食べれたし、亮輔くんに言いたい事は全部言えたから、私はそろそろ帰るわね!」

 普通のテンションに戻った真澄は残りの食事を摂り終え、食後の煎茶も飲み干した後で私とりょーくんに突然「帰る」と告げた。

「えっ?矢野帰るの?」
「これから藤井くんと4人でどこかへ遊びに行くんじゃなくて?」

 真澄の言葉に私達は目を丸くする。
 だって、この後しばらくしたら藤井くんが電車でここまで来てくれてそれから4人で遊びに行く予定を立てていたから。

「トモには既に連絡済みなの。『朝香達がラブラブ過ぎて日曜日は2人きりの時間を過ごしたいみたいだから別行動を取ろう』って」
「えっ……」
 
 真澄のその口ぶりだと、既に昨夜の段階で藤井くんに連絡を取ったようだった。

「じゃあ矢野はこれからどうするんだ?」
「勿論、私はトモとデートよ。行きたい場所もあるし」

 真澄はりょーくんにそう言い残して私の部屋へと戻り、荷物の整理を始める。

 
「私っ、お布団畳みに行ってくるね」
「ああ……あーちゃん行ってらっしゃい」

 私はりょーくんにそう告げて廊下をパタパタと駆け真澄が荷物整理をしている部屋の中に急いで入ると

「ごめんね真澄! 居心地が悪くなる行動を取っちゃって」

 真澄が急に帰ると言い出した原因はやっぱり昨夜の私達の行動にあったんじゃないかと思い、ドレッサーに置いていた化粧品類をカバンに詰め直す親友に謝った。

「朝香が悪いんじゃないよ」

 真澄は、しゃがんで謝った私の頭を優しくなでなでしてニッコリと微笑む。

「え……」
「ついでに亮輔くんも悪いわけじゃないけどね」
「へ?」
「昨夜のアレはあまり良くないと思うよ常識的に。だけど別行動を取りたくなったのは朝香達があんな事をしたのが原因でもないって事」
「……」
「本当に、ほのぼのとほんわかと……ちゃんと彼氏彼女やってる朝香と亮輔くんを見てたら『私もトモと早くそういう関係になりたいな』って意欲が湧いてきたの」
「真澄……」
「4人で遊びに行ったら出来ないって訳じゃないよ?だけど今日は純粋にトモと2人でラブラブ過ごしたいなーって、私の方が思っちゃって。
 夏休み中はなんだかんだで時間作って遊べてたけど、大学始まってからはあんまり2人きりになれてなかったからさっ!」
「そっか……」
「良い意味でさ、朝香達の事が羨ましくなっちゃって」

 真澄は微笑みから照れ笑いに変え……それから私にあまり見せた事のない表情を見せる。
 真澄が昨日私に言っていた「オンナの顔」は、まさに今真澄がしているセクシーで可愛らしい表情なんだな。と思い知らされた。

「素敵なデートしてきてね、真澄♪」
「朝香もねっ♪」

 それから2人一緒に

「ふふっ♡」
「ふふ♡」

 と、微笑み合う。




「じゃあ、お邪魔しましたっ!」

 真澄はそれから数分もしない内に玄関で靴を履き

「またね! 真澄♪」
「今度は藤井と遊びに来て。いつでもいいからさ♪」

 私とりょーくんでニコニコ微笑みながら真澄を見送った。

 
 

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