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私達の親友
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しおりを挟む翌朝、私達はいつもより早めに起きてベッドシーツを取り替えたり、消臭スプレーを噴射したり……
洗濯、お風呂掃除、朝ごはん作りなどなど、2人で大きな物音を立てないように気を付けながら動き回る。
「おはよう」
お米を炊いている水蒸気が上がってきた頃、真澄がリビングに顔を出したから
「真澄おはよー」
「矢野おはよう」
私達はとっても爽やかに朝の挨拶をしてみたんだけど
「昨夜はお楽しみでしたね」
ジト目で聞いた事のあるセリフが真澄から発せられ、私達はほぼ同時に体を硬直させる。
「バスタブに湯を張ったばかりだからさぁ、矢野は朝風呂してきて。ゆっくり入ってきて是非是非」
「入りますよ! 入らせていただきますよっ!! 昨夜酔い潰れてお風呂入れなかったんだからっ!!!!」
りょーくんが掌をバスルームの方向へ向けるよりも速く真澄が言い返し、サッとバスルームへ駆け出していった。
私はバッとりょーくんの方を振り向いて
「あれ!絶対真澄に聞かれたんだよね?!」
と、真澄の様子から予想出来る事を彼に言う。
「……」
でもりょーくんは黙って私から目を逸らすばかり。
「真澄があんな反応したんだもんっ! 絶対、私達のエッチ中に真澄が起きてこっちまで来たんだよ!! じゃなきゃ『昨夜はお楽しみでしたね』なんて言う筈がないもんっ!!」
「それは……どうかなぁ。ほら、あーちゃんが矢野の隣で寝なかったから単にそう思っただけなのかも?」
「確かに『夜は一緒に布団並べて寝ようね』ってお泊まり前に真澄と約束したから、途中で真澄が隣の布団に私が居ないのに気付いて察しただけなのかもしれないけどぉ」
りょーくんは「私達のベッドでのやりとりを見たのではないんじゃないか」という内容を私に言うんだけど、私は彼の意見に同意出来ない。
(っていうか、りょーくんがさっきから私と目線合わしてくれないのがどうも気になっちゃうんですけど……。
私、変な声出しちゃってた? やっぱり真澄に聞かれちゃったんじゃないの??!)
真澄が綺麗に身なりを整えたところで朝ごはんを食べ始める。
今朝は久しぶりに和食。
昨夜は洋食おかずばっかり作ったから、久しぶりに白飯やお味噌汁、焼き魚などを並べてみた。
「今朝は旅館みたいな朝ご飯ね。朝香、洋食だけじゃなくて和食も上手に作れるのね」
「えへへ、褒めてくれてありがとう……あっ、これが昨日りょーくんが『作ってくれなかった』って不満を漏らしてた卵焼きだよ。甘めにしてるから真澄のお口に合うか分からないんだけど」
言葉ではめちゃくちゃ褒めてくれる真澄の声はロートーンだ。そして私もその空気に釣られ冷や汗を掻きながら卵焼きの説明をする。
「うちの親も砂糖入れる派だから楽しみだな……じゃあ、いただきます」
「「いただきます……」」
朝日がリビング内にさんさんと差し込む爽やかな小春日和……。
雰囲気はめちゃくちゃいいし、頑張って取った鰹出汁のお味噌汁も食欲をそそる……けど食事の空気は少し重く、ある意味静かに時は流れていくのがちょっぴり辛い。
「亮輔くんさぁ」
りょーくんだけ先に完食し私と真澄が半分程食べ進めたところで、再び真澄の話す声が耳に響く。
「あっ、はい」
りょーくんは、親友の真澄相手にかしこまった返事をして、何故かぎこちない。
「この部屋の家主は亮輔くんだから私がこんな事言うの変かもだけど、冷静に考えてもっ! この部屋の中で行われる事の全責任は家主である亮輔くんにあると思うから!」
真澄は真面目な表情でりょーくんをジッと見つめているのに
「ああ……うん」
りょーくんは気の抜けた返事でサラッとかわしているようにも感じる。
「?」
その2人の……っていうか寧ろりょーくんのリアクションが不思議でならず、私だけ首を傾げていた。
「百歩譲って朝香はいいとして、亮輔くんは絶対にダメでしょ」
「?」
「だって朝香は全く気付いてなかったんだもん! 私が開いたドアの隙間から顔を出した事に」
「!」
「でも亮輔くんは違うっ! 私にすぐ気付いて、変な目配せしてきたでしょ『俺らイチャイチャしてますけど何か』的な!!」
「!!!!」
(えっ??!!真澄がベッドルームのドアから顔を覗かせたっ何???!!!
ちょっとちょっとりょーくんどういう事?????)
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