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私達の親友
★12
しおりを挟む焙煎を終えてお風呂に入ろうとしたら、りょーくんも付いてきた。
「りょーくんはお昼に入ったのにまたお風呂入るの?」
「ダメ?」
「綺麗好きって意味合いでなら良いけど……」
今日は真澄が気兼ねなくお風呂をいつでも使って良いように、りょーくんだけケーキ屋さん行く前にシャワーを浴びている。
「うん、俺綺麗好きだから♡」
りょーくんはニコニコ顔で私の脱衣をウキウキ手伝っていて……
「そうかなぁ……」
「単に私と入浴したいだけなのでは?」という、りょーくんのエロさを疑ってしまう。
「矢野は酔い潰れてるからすぐに起きないだろうし大丈夫だよ♪」
「お風呂は声が響くから体の洗い合いするのは無しだからねっ! 湯船に浸かる時もエッチな触り方しちゃダメだからっ!」
私がそう念押しすると、りょーくんはちょっと顔を引き攣らせながら「分かった」と了承した。
(やっぱりお風呂の中でエッチなお触りしようとしたんだぁ! りょーくんったらもうっ!!)
事前の念押しが効いたのか、りょーくんは素直に私の言う事を聞いて「健全な入浴時間」がゆったりと流れる。
「はー……おっきいバスタブっていいね」
「俺もそう思う♪ 心地良いし、快適♪」
このマンションに移り住んで良かった事の一つがバスルームの広さだ。
それまではユニットバスだったから、りょーくんの首から下をすっぽりと覆えるくらいの大きいバスタブはそれだけでラグジュアリーを感じる。
「そういえば、真澄が不満漏らしてたけどりょーくんはもう20歳になってるのにお酒飲まなくていいの?」
きめ細やかな泡と温かな湯に肩まで浸かりながら私が飲酒の話題を出すと、彼は目を細めて
「あーちゃんと一緒のタイミングで飲みたいからね。あーちゃんと俺の誕生日って1ヶ月くらいしか離れてないし、そもそも誕生日まであと2週間くらいだよ? そのくらい待てるよ」
と、まったくもって不満に感じてないとばかりに微笑み返してくれる。
「そっかぁ……嬉しい」
りょーくんは過去に色々あった人だから、彼の「私と一緒のタイミング」の言葉の裏に沢山の想いが込められているんじゃないかと勘繰る。
18歳の時に飲んでいた強いお酒は飲みたくないんだろうな……とか、ビールを飲むにしても量を気を付けて飲みたいんだろうな……とか。
「俺ね、あーちゃんとワインを飲んでみたいんだ」
「えっ? ワインって、赤ワイン?」
「赤でも白でもどっちでも良いよ。俺の誕生日の時に飲んだ『大人ジュース』をさ、ちゃんと、『大人のワイン』にしたいっていう希望があるんだ」
りょーくんの口から出てきた「大人ジュース」で、すぐにあの時のぶどうジュースの話を私も思い出す。
「この前の、りょーくんと一緒に飲んだぶどうジュース……」
「あれもあれでめちゃくちゃ良い思い出になってるんだけどさ、あれはノンアルコールだったし次はあーちゃんと一緒にもっと大人の飲み物へとステップアップしたい気持ちもあるんだよ」
りょーくんの微笑みはとてもやわらかくて、幸せそうで……「私と一緒に大人の階段を踏んでいきたい」という彼の強い意思を感じて私も幸せな気持ちになれた。
「うん♪私にとってもあれはめちゃくちゃ良い思い出だし、次は一緒にアルコールにチャレンジしてみたい気持ちがあるよ♪」
「あの思い出と同じくらい良い思い出をあーちゃんの誕生日に作りたいって俺は思ってるんだ。もちろん無茶な飲み方はしないし脳がフラフラになってバカになるような行動は取らない」
「うん……」
「なんだって、あーちゃんのアルコールデビューだからね♡幸せなデビューにしなくちゃ♡」
「うん♡ ふふっ♡」
彼の言葉や想いに、私はまたドキドキキュンキュンしちゃって……
「のぼせない内にベッド行こっか♡」
今夜は自分の部屋で真澄と寝る予定だったのに、りょーくんからのセクシーな誘いを断れずにコクンと首を縦に振る。
りょーくんは自分の体をサッとバスタオルで簡単に拭うと、今度は私をもう一枚のバスタオルでグルグルッと巻いて、ひょいっとお姫様抱っこする。
「ひゃあっ♡」
りょーくんはいつもムチムチ体型の私を容易く横抱きするから「めちゃくちゃ力持ちだなぁ」って毎回感心してしまう。
「余計な声を上げたら矢野が起きちゃうよ」
その上セクシーなイケボの囁きまでやってきて、もう心臓はバックバクだ。
「んっ」
私は唇も瞼もギュッと固く閉じ、ベッドにそっと体を置かれるまで静かにしている。
その間、心臓のバックバクだけがうるさく鳴り響いていて、バスルームからベッドまでの5歩程度の距離がめちゃくちゃ長く感じられた。
「じゃあ、矢野にバレないようにイチャイチャしちゃおっか♡」
「うん♡」
ベッドに到達した私達は幸せな気持ちに包まれながら深くキスをして体を絡ませ合う。
部屋を隔てているとはいえ、真澄が酔い潰れて眠っている中でするこっそりとしたりょーくんとのイチャイチャは、今までとは段違いに興奮してしまった。
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