【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

文字の大きさ
上 下
35 / 251
私達の親友

★12

しおりを挟む



 焙煎を終えてお風呂に入ろうとしたら、りょーくんも付いてきた。

「りょーくんはお昼に入ったのにまたお風呂入るの?」
「ダメ?」
「綺麗好きって意味合いでなら良いけど……」

 今日は真澄が気兼ねなくお風呂をいつでも使って良いように、りょーくんだけケーキ屋さん行く前にシャワーを浴びている。

「うん、俺綺麗好きだから♡」

 りょーくんはニコニコ顔で私の脱衣をウキウキ手伝っていて……

「そうかなぁ……」

 「単に私と入浴したいだけなのでは?」という、りょーくんのエロさを疑ってしまう。

「矢野は酔い潰れてるからすぐに起きないだろうし大丈夫だよ♪」
「お風呂は声が響くから体の洗い合いするのは無しだからねっ! 湯船に浸かる時もエッチな触り方しちゃダメだからっ!」

 私がそう念押しすると、りょーくんはちょっと顔を引きらせながら「分かった」と了承した。

(やっぱりお風呂の中でエッチなお触りしようとしたんだぁ! りょーくんったらもうっ!!)




 事前の念押しが効いたのか、りょーくんは素直に私の言う事を聞いて「健全な入浴時間」がゆったりと流れる。

「はー……おっきいバスタブっていいね」
「俺もそう思う♪ 心地良いし、快適♪」

 このマンションに移り住んで良かった事の一つがバスルームの広さだ。
 それまではユニットバスだったから、りょーくんの首から下をすっぽりと覆えるくらいの大きいバスタブはそれだけでラグジュアリーを感じる。

「そういえば、真澄が不満漏らしてたけどりょーくんはもう20歳になってるのにお酒飲まなくていいの?」

 きめ細やかな泡と温かな湯に肩まで浸かりながら私が飲酒の話題を出すと、彼は目を細めて

「あーちゃんと一緒のタイミングで飲みたいからね。あーちゃんと俺の誕生日って1ヶ月くらいしか離れてないし、そもそも誕生日まであと2週間くらいだよ? そのくらい待てるよ」
 
 と、まったくもって不満に感じてないとばかりに微笑み返してくれる。

「そっかぁ……嬉しい」

 りょーくんは過去に色々あった人だから、彼の「私と一緒のタイミング」の言葉の裏に沢山の想いが込められているんじゃないかと勘繰かんぐる。
 18歳の時に飲んでいた強いお酒は飲みたくないんだろうな……とか、ビールを飲むにしても量を気を付けて飲みたいんだろうな……とか。

「俺ね、あーちゃんとワインを飲んでみたいんだ」
「えっ? ワインって、赤ワイン?」
「赤でも白でもどっちでも良いよ。俺の誕生日の時に飲んだ『大人ジュース』をさ、ちゃんと、『大人のワイン』にしたいっていう希望があるんだ」

 りょーくんの口から出てきた「大人ジュース」で、すぐにあの時のぶどうジュースの話を私も思い出す。

「この前の、りょーくんと一緒に飲んだぶどうジュース……」
「あれもあれでめちゃくちゃ良い思い出になってるんだけどさ、あれはノンアルコールだったし次はあーちゃんと一緒にもっと大人の飲み物へとステップアップしたい気持ちもあるんだよ」

 りょーくんの微笑みはとてもやわらかくて、幸せそうで……「私と一緒に大人の階段を踏んでいきたい」という彼の強い意思を感じて私も幸せな気持ちになれた。

「うん♪私にとってもあれはめちゃくちゃ良い思い出だし、次は一緒にアルコールにチャレンジしてみたい気持ちがあるよ♪」
「あの思い出と同じくらい良い思い出をあーちゃんの誕生日に作りたいって俺は思ってるんだ。もちろん無茶な飲み方はしないし脳がフラフラになってバカになるような行動は取らない」
「うん……」
「なんだって、あーちゃんのアルコールデビューだからね♡幸せなデビューにしなくちゃ♡」
「うん♡ ふふっ♡」

 彼の言葉や想いに、私はまたドキドキキュンキュンしちゃって……

「のぼせない内にベッド行こっか♡」

 今夜は自分の部屋で真澄と寝る予定だったのに、りょーくんからのセクシーな誘いを断れずにコクンと首を縦に振る。

 りょーくんは自分の体をサッとバスタオルで簡単に拭うと、今度は私をもう一枚のバスタオルでグルグルッと巻いて、ひょいっとお姫様抱っこする。

「ひゃあっ♡」

 りょーくんはいつもムチムチ体型の私を容易く横抱きするから「めちゃくちゃ力持ちだなぁ」って毎回感心してしまう。

「余計な声を上げたら矢野が起きちゃうよ」

 その上セクシーなイケボの囁きまでやってきて、もう心臓はバックバクだ。

「んっ」
 
 私は唇も瞼もギュッと固く閉じ、ベッドにそっと体を置かれるまで静かにしている。

 その間、心臓のバックバクだけがうるさく鳴り響いていて、バスルームからベッドまでの5歩程度の距離がめちゃくちゃ長く感じられた。


「じゃあ、矢野にバレないようにイチャイチャしちゃおっか♡」
「うん♡」

 ベッドに到達した私達は幸せな気持ちに包まれながら深くキスをして体を絡ませ合う。

 部屋を隔てているとはいえ、真澄が酔い潰れて眠っている中でするこっそりとしたりょーくんとのイチャイチャは、今までとは段違いに興奮してしまった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...