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私達の親友
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しおりを挟む「いや~……あの時もあの時でビックリしたけど、このマンション来て現実直面したらまたビックリだわ~~~~」
そして、今日は10月半ばの土曜日昼過ぎ。
私はこの日のバイトを夕紀さんに休みにしてもらい、14時過ぎにマンション最寄りの駅で真澄と待ち合わせをした。
今の声は駅を出てすぐ、真澄が漏らした感想で
「彼の従兄さんから販売価格を聞いてないんだけど、分譲マンションって学生が買えるわけないくらいお高いんだよね?」
馬鹿みたいな質問をしているのが、その現実が手元に存在している田舎者の私だ。
「そりゃあ、ここだって都内だもの。3LDKならそれこそ2~3000万じゃきかないよ」
「……だよねー」
「いくら従兄が管理してるマンションっていったってさぁ、20歳の誕生日プレゼントにするのはちょっと違くない?
亮輔くんがあの笠原一族なら断然納得は出来るけど」
真澄から現実的な話が出てきて、私は乾いた笑いが出る。
(あんまりよく分かってないしりょーくんから直接聞けないからスルーしてきたけど、やっぱりりょーくんのご実家や上原さんご家族って凄いんだなぁ……)
私はエントランスへ真澄を招き入れ、エレベーターボタンを押す。
「……まぁ、亮輔くんの事情はトモの部屋でじっくり聞いたし、私はもう反対する気はないよ。
朝香も朝香で亮輔くんを支えてあげたいっていう純粋な気持ちも理解出来るし、応援する」
「ありがとう……あっ、エレベーターきたきた♪」
親友の真澄から「応援」の言葉が聞けて私はホッとし、2人でエレベーターに乗り込んだ。
「あと、前のアパートより駅が近くなって良かったよね。これから通学が楽になるし」
「でもバイクの後ろに乗せてもらってるから、電車ほぼ使わないよ。大雨の時とか大雪が降ったらバイク無理になるけど」
真澄から「マンションが駅近」のポイントを褒められ、私はヘラヘラっと笑いながらそう返事したんだけど
「なーに言ってるんだか!! これからの大学生活、朝香以外はみんな就活を意識しなきゃいけないのよっ! 3年になったら授業数が朝香より多くなって、亮輔くんのバイクに甘えてらんなくなるしさぁ」
「あ……」
「専攻とかゼミの選択まで亮輔くんと同じにするつもり? 朝香、3年になったら珈琲店の方に重きをおいてく予定でしょう?」
「そっか……それもそうだよね」
真澄から指摘されて初めて私はハッとする……と共に「みんなといつまでも同じ時間を共有出来ないんだ」という寂しさが襲ってきた。
「んもー、朝香ったら能天気なんだから」
「ごめん真澄。私、まだまだ子猫ちゃんで」
「本当よ、もうっ!」
真澄に呆れられて当然だと反省した。
(そうだ……私はもう夕紀さんの珈琲店で働くっていう確固たる意思があって、卒業後の就職先が既に決定してるようなもんなんだ。
りょーくん、真澄、藤井くんはその点まだ何も決まってなくて、3年になったら本格的に就職を見据えた行動を取らなければならない。能天気な私とは全然違うんだ)
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