【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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苦手を好きで補っていく

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「だけどまぁ偶然にも遠野の妹分である朝香ちゃんと恋仲になるとはねー! そうなっちゃったら俺も嫁さんも余計に応援せざるを得ないよ!
 美優も金色のお兄ちゃん好きだもんなー?」

 田上さんは急にニカッと明るく笑って美優ちゃんに同意を求めて

「うんっ!! おにいちゃんね、とってもかっこいーの!!」

 美優ちゃんは口の周りを白くしながら田上さんと同じようにニカッと笑ってくれた。

「ありがとう美優ちゃん。お兄ちゃんに『美優ちゃんが褒めてたよ』って伝えておくね!」
「おにいちゃん、また来る?」
「うん、また美優ちゃんに会いに行くって言ってたよ」

 本当はりょーくんから具体的に美優ちゃんの話題を私にしてくれた事はなかったんだけど、りょーくんが皐月さんのお参りの許可を夕紀さんから得ていたので嘘のないレベルで私はそう返答してあげた。

「じゃあ、そろそろ俺ら帰るよ。コーヒーと牛乳ごちそうさま」

 田上さんは美優ちゃんを抱っこしながらそう言うと、夕紀さんに手を振りながら勝手口の方へ進んでいく。

「うん、またね田上くん」
「田上さんおやすみなさい」

 私と夕紀さんも田上さん親子に手を振りながら見送り……それから自然と顔を向き合わせる。

 
「朝香ちゃん、亮輔くんの元気がなくて悩んでるでしょ?」
「えっ?」
「顔に書いてあるもの。だから田上くんも察して先に帰ってくれたんだよ」
「ええっ???! 書いてましたか? 私の顔!!」

 夕紀さんはクスクス笑いながらコーヒー豆をまた挽いて湯を沸かし始める。

「だーって朝香ちゃんにとっては同棲スタートして初めての週末でしょ? しかも彼のハロウィンオーナメントを持ってきて飾り付け~なんて事してたらもっと亮輔くんの事を褒めまくって自慢しまくりそうだもの」
「!!!!」

 夕紀さんの指摘に「確かに!」と思い顔を熱くさせる私。

「田上くんも私もね、さっきの話に嘘をついたつもりはないんだけど探ってたんだよ『ラブラブ週末を過ごしてたなら私達の話をもっと言い返してたんじゃないかな? おかしいな』ってアイコンタクト取ってたわけ」
「そうだったんですね」
「でも朝香ちゃんマジに受け取っちゃったから『こりゃヤバいな』って」
「それはすみません……お気を遣わせてしまいまして」

 私の気付かない内にされていた大人の配慮に感服しつつ、私はりょーくんが落ち込んでいる理由を夕紀さんに話し始めた。




「ふーん……亮輔くんに未練ありまくりなのねその『絵梨』って子」
「そうなんだと思います。お付き合い中も嫉妬心が強かったみたいですし、彼と別れた後もある事ない事悪い噂を学内に言い広めてましたし」
「その絵梨が退学の手続きを取ってるところを朝香ちゃんと亮輔くんがたまたま目撃して、それでシングルマザーとして生きる事を聞いた……と」

 私の長い話も夕紀さんは頭の中できちんと整理してくれたようだ。

「そうなんです。夕紀さんにこんな明け透けな話をするのちょっと躊躇ためらっちゃうんですけど……
 彼はお酒やタバコを使って無理矢理絵梨さんとエッチしてたらしくて、それが凄く苦痛だったそうなんです。でも絵梨さんにとって彼とのエッチはとっても気持ちよくてたまらないものだったらしくて。
 『お腹の赤ちゃんのパパが誰かも分からないくらい性に奔放にさせてしまったのは自分の所為なんじゃないか』って彼が思い悩んでるんです」

 続けて話をした私の事を、夕紀さんは真面目な表情でジッと見つめて聞いてくれていて

「亮輔くんにはさ、『きっとそれは違うよ。そんなに気にする事ないよ』って言ってあげたら良いんじゃないかな。朝香ちゃんは」

 静かに、真面目に、誠実な表情で私にそう助言してくれたんだけど

「やっぱりそうですよね」
「朝香ちゃんはさ、絵梨の事が苦手なんでしょ。大っ嫌いなんでしょ」
「えっ?」

 すぐに口角をクイッとあげて私の胸元をピッと指差す。

「さっき私にしてくれた話の端々に、朝香ちゃんの嫉妬心がチラ見えしてたからね! 私と田上くんがアイコンタクトを取った時よりも今の方が分かりやすかったよ」
「!!」
 
(私が……嫉妬?!)

 自分でも意識した事のなかった「嫉妬」の言葉に私はとにかくビックリしていた。
 
「朝香ちゃんは去年の春頃、絵梨と亮輔くんがラブラブイチャイチャしてたのを知ってたし見てきたんだよね?
 悪い噂を流した絵梨もそれなりに嫉妬心強めではあるんだろうけど、性に奔放になって自暴自棄なエッチを絵梨がしまくったっていうのならそれは朝香ちゃんと亮輔くんとのラブラブイチャイチャを絵梨が逆の立場で見続けていたからなんじゃない?
 朝香ちゃんにその気はなくても、自然と絵梨が亮輔くんとしてきた行動を朝香ちゃんがそのまんまやっちゃってたんだよ」
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