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Chapter13:新しい年を迎えて……それから
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しおりを挟むあおくんとの初詣は、あっという間に終わってしまった。
神社をあとにした私達は、足早に駅まで向かう。
(あっという間のデート……寂しいなぁ)
今日この時間しか取れなかったのは完全に私のせい。
三が日はコンビニバイトで忙しくしていたし、この後は新幹線に乗って実家帰って冬休み最終日は地元で「二十歳を祝う会」いわゆる成人式が開催される。
こっちに戻ったらすぐに大学やバイトと通常通りの生活がスタートするし、次にあおくんと会うのはまた1週間後となってしまうんだ。
「良い初詣になったね、はな♡」
それなのにあおくんはニコニコ顔を私に見せ、明るい声で話しかけてくれる。
「うん……今日のデートがこれだけだったのが申し訳ないし、しかも次会うの1週間もあとになっちゃってごめんね」
あおくんだって、私と同じく寂しいはずだ。だからつい「申し訳ない」なんて言葉が出ちゃったんだけど
「はなの振袖姿、絶対に可愛いと思うし似合うと思うんだ! だからスマホでいっぱい画像撮って送ってよ!」
「えっ?」
「その画像を見るのを、この1週間楽しみにしてるから」
私のネガティブな「申し訳ない」を跳ね返すくらいのポジティブ笑顔をあおくんはしてくれて
「振袖姿かぁ……うんっ! 絶対に送るっ! いっぱい送るから、いっぱい見てね!」
「冬休み最終日に向けての楽しみをお互いに作れば寂しくない」って、あおくんから教わった気持ちになって
「うん! めちゃくちゃ楽しみにしてるよ♡」
あおくんの、ギュッとした強めの手繋ぎからも愛情を感じて
「うん……うんっ!!」
私も笑顔でギュギュッと握り返した。
(あおくんのニコニコ顔は癒されるし、明るい気持ちになれる♡ 私の大好きな人は太陽みたいに温かくって寒い冬でもポカポカほわほわしてくるよ)
「じゃあ、また来週ね」
「うん♡ 地元のお土産いっぱい持ってあおくんにプレゼントするね」
「楽しみにしてるよ♡」
私達は駅の前に立ち
「えへへ♡」
「えへへ~♡」
……と、いつものように微笑みあった。
去年はあおくんと偶然的な出会いをして、仲良くなって……それから恋人同士になった。
春から季節が巡って、今はもう冬真っ盛り。とはいえ新しい春も、もうすぐそこまでやってきている。
(今日引いたおみくじ、恋愛の欄めちゃくちゃ良い事書いてあったなぁ♡ この一年のお守りにしなくちゃ!)
おみくじの内容が良かったのもあるけど、私はこの瞬間も……始まったばかりの新しい年も、あおくんと一緒に歩んでいきたいって思っている。
(今も笑顔だし、1週間後に会う日だって笑顔になってるだろうし……)
(この先も、ずっとずっとあおくんと何をして過ごすかを考えたり、それをしながらお互いに笑顔になって幸せな時間を作れるよね、絶対に♪)
私はさっき本殿の前で願い事をした内容をちょっぴり引用し心の中でつぶやきながら、あおくんにバイバイの手を振った。
「また来週ね! あおくんっ!」
私の大きな手の振りに、あおくんも
「また来週ね♡ はな♡」
……と、手を振り返してくれた。
(振袖姿の画像を送るのもだけど、来週あおくんとどんなデートしようかなぁ。
新幹線の中でいっぱい候補あげておこうかなぁ)
私はあおくんに背を向けると、急いでコインロッカーへ向かい実家へお泊まりする為の荷物を出して東京駅へと急いだ。
体は実家帰省へと動いているんだけど、私の頭の中はその事だけじゃなくてもう少し先の未来へ向いている。
(来週東京戻ったら、あおくんに「ただいま」の連絡入れて……それから……)
(あっ、帰る時間言わずに直接あおくんのマンション行くのも良いかな? 花手水の時にちょっとした私へのサプライズあったし、そのお返しってことで♪)
(ああ~来週あおくんと何しようかなぁ? 今から来週の事を考えるのって楽しすぎるよ!)
少し先の予定を考えるのは楽しいし、それだけでも幸せな時間。
そしてあおくんの元に帰ってきたら、そこからはずーっと「今日はあおくんと何をしよう?」って毎回考える事が出来るのはとっても幸せな事だと思う。
(えへへ……あおくんも今頃、同じ事を考えてくれてたりして♡)
———『今日はキミと何をしよう?』と思える日々を過ごしたい———
この日私が神様に願った内容が、そっくりそのままあおくんも願っていた事を知るのは、まだまだ1年くらい先のお話。
《完》
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(17件)
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あおい様
今まで当作品を読んで下さりありがとうございます。
2人の物語をどの季節・どのイベントで完結にしようかとかなり悩んだのですが、2人の未来が楽しく幸多いものであるようにと「初詣」のタイミングにさせていただきました。
次回作の予定はまだ立っていませんが華子と蒼が私の創造世界に息づいているような作品作りを目指していきたいと思います。
あおい様
感想ありがとうございます。
蒼パートは24日の夜でした。せっかくの「クリスマス」ですから華子パートは次の日の25日が良いかなと思い、今回の章はこのような構成となっております。
華子パートも楽しみにして下さると嬉しいです。
あおい様
お久しぶりです。この度も感想を書いて下さりありがとうございます。
Chapter11はハラハラな展開があったのでChapter12はラブラブな展開になれば良いなと作者の私も思うのですが、初っ端から蒼が頭を抱えてしまっていますね。
はてさてどんなプレゼント交換になるのか、乞うご期待です!