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Chapter:11 可愛いジェラシー
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「よし! 決めた!!」
ハグを解いたあおくんは意を決した様子で私を見つめ……
「あの写真、破いて棄てるよ!」
いきなりそんな事を言いながら立ち上がってクルリと背を向くと、カウンターの前に立ってあのコルクボードを持ち上げる。
「えっ?!」
私の驚き声に気を留める事なく、あおくんは赤いピンを抜いて写真をそこから引き抜いて写真を半分に破こうとしていたから
「えっ? あおくんっ! ちょっと待ってちょっと待って!!」
私は急いであおくんの背中に飛び付き背後から彼の両腕を掴んだ。
「えっ? 待ってって、何?」
私のバックハグに驚きながらあおくんが振り向く。
「その写真、本当に破いちゃうの?」
私の問いにもあおくんは
「そうだよ、だってこの写真をこんなところに貼り付けたままにしていたからこそ、はなが悲しい思いをしたんだし、やっぱり元カノとのツーショット写真なんかとっておくものでもないかなって……」
キョトンとした顔つきで返答していて
「だからといって破いて棄てちゃっていいの? 本当に?」
私が今慌てている意味が全く分からないみたいだ。
「えっ……だってはな、この写真を見て腹が立ったんでしょ? 悲しくなったんでしょ?」
「そうだけど……」
「大好きな彼女がイヤな気持ちになるものなんて、この部屋に置いていたって仕方ないし無くなってしまった方がいいでしょ」
「う……」
私が「待って」「写真を棄てていいの?」と言ったポイントは、あおくんの今カノとして論点がズレているかもしれない。
(だけど……こんなに楽しそうに笑ってる写真を簡単に廃棄しちゃって良いのかな?)
「会いたいよー」って走り書きしてるのは嫌だけど、そこだけ目をつぶればとっても素敵な写真である事には違いなくって……
「まだお付き合いする前の写真でさ、2人とも自然に笑ってて……すっごく楽しそうで……」
「はな?」
なんとなく……
「棄てるなんて、もったいないんじゃないかな? だってこの写真はまだ2人がお付き合いする前に撮ったもので、友達関係でのツーショットって事でしょ?」
あおくんが一瞬でも「大事にしたい」とした写真を……その時の思い出を今カノって立場だけの私の存在一つで破いて破棄してしまって本当に良いんだろうか? って、悩んでしまったんだ。
「まぁ、そうだけど……」
「美月さんと今でも大学のお友達以上の関係でいたらイヤだけど、あおくんの話や態度を見ていたら『そうじゃない』って分かったよ。
ちゃんと理解したから、もうその写真をビリビリにしてポイってするのはもったいないんじゃないかなぁ?」
(写真に罪はないんだもん……2人とも、仲の良いクラスメイトって雰囲気で、とっても爽やかに映っているんだもん……)
確かにこの写真を発見した直後はカッと頭に血が昇ったし、色々と心惑わされた。
だけど、あおくんから写真を撮影した時の状況やその時の心境や……その後、現在の私との関係まで考慮したら、「せっかくの写真が可哀想だな」って思ってしまったんだ。
(今、あおくんはこの写真を見ても「会いたいよー」とは思わないわけだし、私を大事に考えてくれてる……。
私にとってはあおくんのその気持ちがすっごく嬉しいんだし、純粋に今のあおくんそのものを受け止めたい……)
「はな……」
背中側からぎゅううぅっと抱きついている私の姿をあおくんは優しい眼差しで見つめて、頭をナデナデする。
「元カノさんに未練ないし、お友達との楽しい会の写真はこれの他にもあって、それはちゃんと保管されてるんだよね?
だったらコルクボードから外すくらいにして、他の写真と一緒に保管してもいいんじゃない?」
大きく温かな彼の手は、私の頭を優しくじんわりと温めてくれたし
「はなは……俺の思い出そのものまで棄てなくていいって、そう言ってくれてるのかな?」
私の意図も、私達の体温みたいにじんわりと伝わってくれたみたいで
「うんっ! そうっ!! 楽しい思い出は楽しい思い出として、今もこれからもあおくんの人生の糧になるから……だから簡単に破棄したら、当時のあおくんに悪い気がしちゃって」
「そっか……はなはやっぱり優しい子だね」
頭ナデナデを一層強くして……
「はなの言う事も一理あるよ。『会いたいよー』のイタズラ書きだけはハサミでカットして写真そのものはとっておく事にするね」
そう言ってニッコリ微笑む。
「へ? イタズラ書きぃぃ?!」
私も微笑み返したかったけど『会いたいよー』がイタズラ書きって部分が聞き捨てならなくて素っ頓狂な声になってしまった。
「うん、そうだよ。イタズラ書き」
私の声にあおくんはクスッと笑って
「イタズラ書きって、あれ、あおくんが書いたんじゃないの?」
尚も驚く私に向かってニコニコ微笑んで
「まさやんが書いたんだよ。ほら、写真の上から書いた名前の字体と『会いたいよー』の字体、ちゃんと見たら違うでしょ?」
そう言って私に写真をきちんと見せてくれた。
「違う……のかなぁ? でも、漢字の右上がりは同じに見えるよ?」
「俺」「美月さん」の字は白の油性ペン、「会いたいよー」は黒のボールペンでそれぞれ書かれているから筆跡が違っているようにも似通っているようにも感じられて判別がつきにくい。
「ああ……確かに、俺とまさやんは筆跡似てるんだよなぁ。一年や二年の頃は代筆やって授業乗り切った事もあるし」
「字が似てるんだぁ……あおくんとまさやんさん」
「よく見たら違うんだよ。まさやんの方が書き方が雑で」
「ほぉ……」
ましてお友達同士字形が似てしまっているのなら、尚更あおくんが書いたんじゃないかって思っても仕方なかったんだろう。
(確かに走り書きっぽい感じだもんなぁ、「会いたいよー」の方は)
ハグを解いたあおくんは意を決した様子で私を見つめ……
「あの写真、破いて棄てるよ!」
いきなりそんな事を言いながら立ち上がってクルリと背を向くと、カウンターの前に立ってあのコルクボードを持ち上げる。
「えっ?!」
私の驚き声に気を留める事なく、あおくんは赤いピンを抜いて写真をそこから引き抜いて写真を半分に破こうとしていたから
「えっ? あおくんっ! ちょっと待ってちょっと待って!!」
私は急いであおくんの背中に飛び付き背後から彼の両腕を掴んだ。
「えっ? 待ってって、何?」
私のバックハグに驚きながらあおくんが振り向く。
「その写真、本当に破いちゃうの?」
私の問いにもあおくんは
「そうだよ、だってこの写真をこんなところに貼り付けたままにしていたからこそ、はなが悲しい思いをしたんだし、やっぱり元カノとのツーショット写真なんかとっておくものでもないかなって……」
キョトンとした顔つきで返答していて
「だからといって破いて棄てちゃっていいの? 本当に?」
私が今慌てている意味が全く分からないみたいだ。
「えっ……だってはな、この写真を見て腹が立ったんでしょ? 悲しくなったんでしょ?」
「そうだけど……」
「大好きな彼女がイヤな気持ちになるものなんて、この部屋に置いていたって仕方ないし無くなってしまった方がいいでしょ」
「う……」
私が「待って」「写真を棄てていいの?」と言ったポイントは、あおくんの今カノとして論点がズレているかもしれない。
(だけど……こんなに楽しそうに笑ってる写真を簡単に廃棄しちゃって良いのかな?)
「会いたいよー」って走り書きしてるのは嫌だけど、そこだけ目をつぶればとっても素敵な写真である事には違いなくって……
「まだお付き合いする前の写真でさ、2人とも自然に笑ってて……すっごく楽しそうで……」
「はな?」
なんとなく……
「棄てるなんて、もったいないんじゃないかな? だってこの写真はまだ2人がお付き合いする前に撮ったもので、友達関係でのツーショットって事でしょ?」
あおくんが一瞬でも「大事にしたい」とした写真を……その時の思い出を今カノって立場だけの私の存在一つで破いて破棄してしまって本当に良いんだろうか? って、悩んでしまったんだ。
「まぁ、そうだけど……」
「美月さんと今でも大学のお友達以上の関係でいたらイヤだけど、あおくんの話や態度を見ていたら『そうじゃない』って分かったよ。
ちゃんと理解したから、もうその写真をビリビリにしてポイってするのはもったいないんじゃないかなぁ?」
(写真に罪はないんだもん……2人とも、仲の良いクラスメイトって雰囲気で、とっても爽やかに映っているんだもん……)
確かにこの写真を発見した直後はカッと頭に血が昇ったし、色々と心惑わされた。
だけど、あおくんから写真を撮影した時の状況やその時の心境や……その後、現在の私との関係まで考慮したら、「せっかくの写真が可哀想だな」って思ってしまったんだ。
(今、あおくんはこの写真を見ても「会いたいよー」とは思わないわけだし、私を大事に考えてくれてる……。
私にとってはあおくんのその気持ちがすっごく嬉しいんだし、純粋に今のあおくんそのものを受け止めたい……)
「はな……」
背中側からぎゅううぅっと抱きついている私の姿をあおくんは優しい眼差しで見つめて、頭をナデナデする。
「元カノさんに未練ないし、お友達との楽しい会の写真はこれの他にもあって、それはちゃんと保管されてるんだよね?
だったらコルクボードから外すくらいにして、他の写真と一緒に保管してもいいんじゃない?」
大きく温かな彼の手は、私の頭を優しくじんわりと温めてくれたし
「はなは……俺の思い出そのものまで棄てなくていいって、そう言ってくれてるのかな?」
私の意図も、私達の体温みたいにじんわりと伝わってくれたみたいで
「うんっ! そうっ!! 楽しい思い出は楽しい思い出として、今もこれからもあおくんの人生の糧になるから……だから簡単に破棄したら、当時のあおくんに悪い気がしちゃって」
「そっか……はなはやっぱり優しい子だね」
頭ナデナデを一層強くして……
「はなの言う事も一理あるよ。『会いたいよー』のイタズラ書きだけはハサミでカットして写真そのものはとっておく事にするね」
そう言ってニッコリ微笑む。
「へ? イタズラ書きぃぃ?!」
私も微笑み返したかったけど『会いたいよー』がイタズラ書きって部分が聞き捨てならなくて素っ頓狂な声になってしまった。
「うん、そうだよ。イタズラ書き」
私の声にあおくんはクスッと笑って
「イタズラ書きって、あれ、あおくんが書いたんじゃないの?」
尚も驚く私に向かってニコニコ微笑んで
「まさやんが書いたんだよ。ほら、写真の上から書いた名前の字体と『会いたいよー』の字体、ちゃんと見たら違うでしょ?」
そう言って私に写真をきちんと見せてくれた。
「違う……のかなぁ? でも、漢字の右上がりは同じに見えるよ?」
「俺」「美月さん」の字は白の油性ペン、「会いたいよー」は黒のボールペンでそれぞれ書かれているから筆跡が違っているようにも似通っているようにも感じられて判別がつきにくい。
「ああ……確かに、俺とまさやんは筆跡似てるんだよなぁ。一年や二年の頃は代筆やって授業乗り切った事もあるし」
「字が似てるんだぁ……あおくんとまさやんさん」
「よく見たら違うんだよ。まさやんの方が書き方が雑で」
「ほぉ……」
ましてお友達同士字形が似てしまっているのなら、尚更あおくんが書いたんじゃないかって思っても仕方なかったんだろう。
(確かに走り書きっぽい感じだもんなぁ、「会いたいよー」の方は)
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