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Chapter:11 可愛いジェラシー

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「健人さん、お疲れ様でした」
「今日も助かったよ、ありがとう蒼くん」

 ウキウキした気持ちでバイトを上がった俺は早速スマホを取り出して……

[はな! こっちはバイト終わってこれから帰るところだよ~]

 愛しの彼女にメッセージを送る。

「おっ♪ すぐに返信きた♡」

 俺のメッセージはすぐに既読になり

[バイトお疲れ様]
[私はあおくんのお部屋でご飯の用意して待っているよ]

 と、メッセージが2連続でポンポンと返ってきた。

「スマホいじりながら俺の帰りを待ってくれたんだぁ~♪ 可愛いなぁはなは♡」

 嬉しさが込み上げてきた俺は更に

[今からチャリで帰るから10分もかからないよ]

 というメッセージや可愛いスタンプを送り、続けて

[帰り途中にお菓子やスイーツ買ってこようか? はなは食べたいもの、ある?」

 と質問を送ると、また即既読になり

[りょーかい!]
[欲しいものは特にないよ、あおくんの帰りを待ってるね]

 という、スタンプ無しの返信が画面に表示される。

(すぐに返事くれて、俺の帰り待ってるから早く帰ってきてほしいとか……あ~可愛過ぎる可愛過ぎる!!)

 スタンプ連投も良いけれど、はなの気持ちそのままが乗っかった文字が即返ってくるのも良い。
 はなのこの可愛さを声に出してこの場で表現してやりたいけど、ここは『フラワーショップ田上』横の狭い路地裏。こんなところで惚気ボイスなんて出そうものなら色んな意味で注目を浴びてしまうだろうから我慢せざるを得なかった。

(急いで帰ろう! はなが待ってるんだから!!)

 昂る気持ちや想いは胸の中に秘めておき、そのパワーを自転車蹴り上げや漕ぎ出しに変換させ急いで路地裏から這い出た。

 夕日が完全に沈み真っ暗となった12月の夜風は、俺の勢いと共に頬を荒々しく撫でてくる。

(冷たっ!!)

 それはまるで俺へのジェラシーというか冷やかしのようにも感じられたけれど

(はな♡ 待っててね♡)

 正直そんなもの、ハートが燃えたぎっている俺にはなんの効果もなさない。
 なんたって合鍵交換をした俺とはなの愛は熱くて強いのだから。






「はぁ……はぁ……めちゃくちゃ速く漕いじゃった」

 はなにメッセージで予告したよりもだいぶ速い時間で、俺はマンションの駐輪場に辿り着く。

[ついたよー]

 自転車のキーロックを済ませた俺は短いメッセージをはなに送り、ウキウキした気分を高めながらエレベーターの中に入った。

(ああ~いつも何気なく乗ってるエレベーターなのに、めちゃくちゃゆっくりに感じるなぁ)

 このマンションのエレベーターは一般的なソレとスピードがほぼ変わらない。だけど今ばかりはトロトロとゆっくりしているようだった。

(冬風もエレベーターも、俺とはなのラブラブさに妬いてんじゃないの~? なんてね♪)

 まさやんが俺を見たら「ヤバいね蒼」とか「頭沸いてるね~、いい意味で」とか囃し立てるような思考で頭の中をパンパンにし……

 ピンポーンと、わざわざインターフォンを鳴らして

「はーい」

 扉越しに可愛い彼女の声をかすかに聞きながらドアチェーンやドアロック開錠の幸せな音を耳に伝わらせて全身をゾクゾクと震わせる。


 



 
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