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Chapter9:甘える
★⑥
しおりを挟む「どれがいいかな……」
俺達は裸になり、5種類のゴムの箱をはなのベッドの上に並べてみた。
「うーん……」
俺もはなも1ヶ月前まで「未経験」だったから、売れ筋商品とはいえど外箱のデザインや説明書きだけではどのゴムから消費して良いのかの判断がつかない。
「ごめんね、あおくん。バイト先で取り扱っている商品なのに私全然分かんなくて」
はなは銀色の派手な箱を持ち上げ、眼鏡で小さな説明書きと睨めっこしながら俺に謝ってきた。
「いやいや、はなが謝るのは違うよ。
取り扱っているっていったってコンビニには商品数がたくさんありすぎるんだもん。知らなくて当然なんじゃないかなぁ……」
「……まぁ、確かに店のもの全てを把握は無理かも。毎週出る新商品を頭に入れるので精一杯っていうか」
「でしょ? 俺みたいに『専門店』なら話は別だけどコンビニ商品は幅広いんだから」
俺のバイトは花屋で、花の専門知識を頭に叩き込む事から始めないといけない……けれどコンビニは食品も日用品も幅広く仕入れているから商品一つ一つを理解するよりもレジや設置されてる機器の操作を覚える事が先決となる。花屋とコンビニじゃ事情が違いすぎるんだ。
(ましてこれはコンドーム……レジ業務で何度か手にする事があるんだろうけど、それでもバーコードにピッとかざすくらいでマジマジと見つめてるわけじゃないからなぁ)
コンドームの外箱を凝視し商品ごとに特長を把握していてお客様にあったものを提案出来るコンビニ従業員ってなかなかのレア度。
大抵は、購入するお客様の心を乱さないよう平常心で事務的にバーコード読み取し、お客様が店を出るまで直視しないよう努めているんじゃないだろうか。
(ああ……昨夜調べた内容、もっと記憶しておくんだった)
どちらかというと俺の方が情けない。だって昨夜まさにネットで「売れ筋のゴムってどんなものなんだろう?」ってスマホで検索していたっていうのに……。
(でもなぁ……寝たら忘れちゃったんだよなぁ)
誤算は寝る前に検索した事だ。日頃の疲れもあって翌朝になったらすっかり忘れてしまい、現時点で何の役にも立っていないのだから。
(うーん……確か、「女性の体にやさしい」みたいな謳い文句の商品があったような……)
「忘れてしまった代わりに俺に出来る事はないか?」と、はな以上に吟味していた。ネットで見たものと全く一緒でなくとも、はなにの体に負担がかからないようなものから使ってあげたいから。
「あっ、これはどうかな?」
説明書きに「潤滑ゼリーがたっぷり」というワードを拾い読みした俺は、ショッキングピンクの箱をはなに向けた。
「ああ……それもよくレジに通すかも」
はなは外箱にピンときたみたいで、目をキラッとさせる。
「これを買うお客さん、結構いるんだ?」
俺の問いにはなはウンウンと大きく頷いて
「カップルが買っていくイメージがあるよ」
と答えたので俺も「間違いない!」と感じて
「じゃあ、コレを開けてみようね」
と、開封してみせた。
(うわあ……個装も派手なショッキングピンク……)
外箱も個装も俺の好みではないのだけれど……
「あっ、ゴムの色が可愛いかも♪」
いつも透明のゴムばかり見せていたはなにとって、この色は好感触だったみたいだ。
「こういうピンク色、好きなの?」
「外箱や個装は派手かなぁって思うけど、中身はそんなにハデハデじゃなくて可愛いピンクかなぁって」
「そっかぁ……なるほど」
はなと一緒にゴムをマジマジと見つめるのって変な感じがするけれど……
「っていうか、すっごくぬるぬるしてるんだね!」
「潤滑ゼリーっていって、これは内側にも外側にもたっぷり入ってるんだって」
「内側だけじゃないんだ?」
「うん、つまり俺だけじななくてはなの体側にもやさしいってことになるのかな?」
「私の体にやさしいの?」
「うん、はなの側からしてみたらゴムってガサガサした感触や冷たさを感じるんじゃない? コレは温感ゼリーだからそういった抵抗が少ないみたいだよ」
「そうなんだぁ……」
コンドームは俺にとってもはなにとっても良い面がいっぱいあるといい。だからこうやって2人で学んで特長を把握しておくのは良いと思った。
「はなにとってより気持ちよくなれるゴムだといいね♡」
「うん♡ 今までのも気持ち良かったと思うけどね♡ あおくんはいつも私を優しく大切に扱ってくれるんだもん♡」
「んもうっ♡ はなったらぁ♡」
2人で微笑みあい……それから
「じゃあ、使ってみよっか」
「うん♪」
頷きあってはなは眼鏡を外し、俺は勃ち上がっているモノにゴムを被せる。
(おおっ……被せやすい! 全然違う!)
0.01ミリも良かったけれど、ネットに書かれていた内容も嘘ではなかったようだ。こっちの方が断然装着しやすい。
(表記されてないから0.03ミリかな? 結構いいかも♪)
0.01ミリの極薄タイプはイメージ的に「男性にとって良い」という感じがする。「薄いから着けてない時と変わらない気持ち良さ」みたいな。
対して今から使う商品は女性のデリケートな部分を優しく扱うような温感ゼリーがたっぷりで、まさに「今からはなをめちゃくちゃ気持ち良くする為のゴム」というイメージがあって、俺がはなとのセックスに求めている点と合致していた。
(俺が気持ち良くなるばっかりじゃなくて、はなが気持ち良くなるゴム。はなをいっぱい甘やかしてあげられるようなゴムって感じがする……)
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