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Chapter:8ハロウィンコスプレイベント
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しおりを挟む「はい、じゃあ交差点近くまで送るから。乗って乗ってー♪」
ジュンさんは陽気に私達を珈琲店『After The Rain』の裏側に位置する月極駐車場へ連れて行き……
「後ろの座席に仲良く座ってね♡」
と、軽自動車の後部ドアを開けた。
「お邪魔します……」
「カボチャの馬車でも高級車でもないんだけど、ちゃんとスペースはあるから♪」
「いえいえ……」
現在39歳だというジュンさんは、見た目がとっても若いのに口から出る言葉は私のお父さんよりもキツい。
(うぅ……返答のしようがないジョークって困るなぁ)
私は黙り込むのも無理はなかったようで、ジュンさんの事をよく知るあおくんまで苦笑いをしていた。
(あおくんも困るタイプの発言なのね)
……とはいえ、車であの大きな交差点の近くまで送ってくれるのは非常に助かる。
「ジュンさん……『今から車で送る』なんて言ってくれたけど、本当に良かったのかな? だって交差点辺りって通行規制してるでしょ?」
運転席に聞こえないようにポソッと獣人あおくんに訊いてみたら
「ジュンさんご夫妻はね、いつもあの近辺を車で通勤してるんだよ。あの交差点を越えた向こう側にご自宅があるんだ」
と、ジュンさんが商店街ではなくオフィス街のエリアに住んでいる事を教えてくれた。
「そうなんだぁ」
「だから、通り道なんだよジュンさんにとっては」
「なるほど……でも今夜はかなり遠回りして帰らないといけないんだね」
「だね。だけどジュンさんは運転大好きな人だから平気なんだと思うよ」
あおくんに色々教えてもらって納得すると同時に
(イケメン獣人さんはやっぱりあおくんなんだなぁ……)
……と、改めてその大変身っぷりに驚かされる。
(声はあおくんそのものだけど見た目のギャップが凄すぎて脳が追いつかない……)
あおくんのコスプレはかっこよくて素敵で、今も胸がドキドキしてしまっていた。
「はい、着いたよー」
ジュンさんのスムーズな運転のおかげで、目的地近くに私達は降ろされた。
「じゃあご両人、良いハロウィンナイトを♪」
ジュンさんはニコニコ顔をキープしたままスーッと車を動かして去っていく。
「「ありがとうございましたー」」
私達は大きく腕を振りながらそれを見送った。
「よしっ、荷物をコインロッカーに入れて交差点行こうっか!」
「うんっ!」
ジュンさんが降ろしてくれた地点はコインロッカーの穴場でもあったらしく、私達はガラ空きの大きなロッカーに2人分の鞄を押し込んで鍵をかける。
「うんっ! これで心置きなく楽しめるね!」
「そうだねあおくんっ!」
お互い顔を見合わせて私がニコッと笑うと、あおくんは私の手をとって
「でもその前にやりたい事があるんだ」
と言って私の掌にチュッとキスをしたんだ。
「!!」
突然の行動にビックリした私は辺りを見回す。
「大丈夫だよ、人は多いけど俺達の事は見てない」
あおくんは紅い目をクリクリと左右に動かしてニヤッと不敵に笑った。
「っ……」
つい、ビクッとする。
「大丈夫だよ、本当に。みんなもっと派手な格好してるし交差点へ向かうので必死って感じだし」
あおくんは私の腰に腕を回すと、キュッと引き寄せて私を隠すように壁側に寄ると
「はなも、して♡ 俺の掌に、チュッて♡」
そう言って私の口元に大きな手を近付けた。
「なん……で?」
キスの意図が掴めなくて戸惑う私に
「変な意味じゃないから」
としか明かしてくれない。
「んもぅ…………」
意味が分からないまま、私は両目をギュッと閉じて
プチュッ……
っと、顔面を彼の掌に押し当てるような形で唇をくっつけてみた。
「えへへ♡ ありがとう、はな♡」
なんとも不思議な要求ではあったけれど、声はいつものあおくんのままでホッとする。
「じゃあ、はぐれないように手をギュッと繋ごう」
あおくんは付け八重歯をチラ見せしながら笑うと、私の手を強く握り……
「ほら、段々人が増えてきたから。手を離さないでね」
そう私に告げ、繋いだ手を恋人繋ぎに変える。
(あっ……)
繋いだ掌と掌がくっついた直後
(もしかして……さっきのキスって……?)
その意図に気付く。
「あっ……ね、あおくん」
交差点はコスプレを楽しんでいる若者でごった返していて、カオスって雰囲気だ。
そんな中、私は恋人繋ぎの手を持ち上げて彼の名前を呼んだ。
「ん?」
「これって……もしかして」
私が何を言わんとしているか、彼には伝わったみたいで
「うん♡」
大きく頷いて、手繋ぎをギュッと強める。
(やっぱり……そういう事?!)
予想していた内容が確信に変わると、急に頬が熱くなって
「赤ずきんちゃん、とっても可愛いよ♡」
イケメン獣人さんは更に私の頬を熱くするような言葉を呟き、また八重歯を見せたんだ。
「やぁん…………♡」
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