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Chapter:8ハロウィンコスプレイベント

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 そうして迎えたハロウィンイベント当日。

「わぁ~! 凄く似合ってるよ、はなぁ♪」

 早朝はなと『フラワーショップ田上』で待ち合わせ、店のバックヤードで着替えた衣装を見せ合っていた。

「そうかな? 可愛すぎてないかな?」
「はなはいつも可愛いんだから、可愛い過ぎていいんだよ♡」
「やだもぅっ♡ あおくんったらぁ」
「ふふ♪」
「あおくんのオオカミも凄く似合ってるよ! かっこいいのと可愛らしいのがちょうど合わさった感じ!」
「そうかなぁ~? はなに言われたら照れちゃう♡」
「ふふふ~♡」

 オオカミと赤ずきんの衣装は、昨日の『After The Rain』への配達のついでに亮輔さんから受け取ったものだ。
 毎年大事に使って綺麗にクリーニングして、ご自宅のクローゼットに保管していたらしい。

「オオカミさんの毛並み綺麗だね♪ もふもふってしてるよ~」
「うんうん♪ 着心地も良くてね、長時間フード被っても疲れなさそう」
「手の指のところ、肉球部分が外せるんだね! これなら作業しやすいね♪」
「だね♪」

 俺は去年まで、これを着ている亮輔さんと朝香さんを見てきた側だ。
 亮輔さんはイケメンさんで着ぐるみパジャマ風のオオカミ衣装に負けてないくらい素敵に似合っていたし、赤ずきんの衣装がご本人も気に入っていると言っていたくらい朝香さんも素敵だと思っていた

(けど……やっぱりはなの方が可愛いなぁ)

 彼氏の欲目というか、大好きな彼女が着ているっていうだけで「朝香さんよりも断然良い!」って感じてしまう。

(衣装持ってる亮輔さんご夫婦には悪いんだけど、赤ずきんのコスプレ衣装を買い取りたい……なんてね)


「ちょっとちょっとあおくんっ! イチャついちゃだめだよこんなところでっ!!」

 バックヤードでしばらくニヤニヤテレテレしていると、背後から健人さんにせっ突かれた。

「けっ……んとさんっ!」

 イチャイチャしてるつもりはなかったけれど、100%否定は出来ず声をどもらせてしまう俺。

「あっ! そうですよねっ!! イベント始まる前に商店街の皆さんのフェイスペイントをやらなくちゃいけないんですよねっ!!」
「あっ、健人さんに俺やりますっ! フェイスペイントっ!」

 はなは俺同様に顔を赤くしつつも、しっかりと役目を思い出してくれてとても助かった。

「そう? じゃあお願いしようっかなぁ。娘の美優みゆも店に来てくれたところだから、華子さんは美優のほっぺたにしてくれる?」
「は……はいっ! もちろんです!」
「じゃあすぐに出てきてね♪」

 慌て顔の俺達に特に気にする事もなく、健人さんはニッコリと微笑んで店内へと出て行ってくれた。

「ふぅ……」

(ヤバいヤバい……健人さんが来てくれなかったら妄想が昂り過ぎるところだった……)

 一息つく俺に、はなはフェイスペイント用のペンを持って俺にニコッと笑い

「今日は一緒に頑張ろうね! 何回か練習したし、イラストもパターンを絞ったから2人で乗り越えられるよ絶対」

 と励ましてくれる。

「そうだね、2人で一緒に頑張ろう」

 実はこの数日、はなが俺の家に泊まりに来てフェイスペイントの練習を一緒にやったんだ。
 はなはフェイスペイントの経験があるから絵を描くポイントを丁寧に教えてくれたり、描くイラストを5種類に絞るなどしてお互いに負担がかかりすぎないように考えたりしてくれたんだ。

(はなが泊まりに来てくれたから練習時間を確保出来たし、俺も緊張がほぐれた……)

 亮輔さんの画力が素晴らしすぎるから、「俺がオオカミ役をやるなんて無理だ」とやる前から逃げ気味になっていたのだけれど、自分達の出来る範囲で努力し役目を果たせば良い訳で亮輔さんそのものになりきる必要はなかった。
 それを大好きなはなに教わったのは何よりも大きい。

(またはなのこと、大好きになっちゃったなぁ……♡)

 
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