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Chapter:8ハロウィンコスプレイベント
①
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「えっ?! 亮輔さんじゃなくて、この俺がオオカミ役をやるんですか???」
はなのお家へお泊まりデートをしたあの時間が幸せ過ぎて、この数日ずっと頭の中がハッピーなお花畑になっていた俺のところに突然大役のオファーが舞い込んだ。
「そうそう、『雨上がり』んとこの朝香ちゃんは出産間近で大変な時期だからね。ここのハロウィンイベントやる頃にはいよいよ臨月に入るんだ」
「亮輔さんだってそばにいてあげたいですよね……」
「そういう事っ! ただでさえ今年は日曜日以外体を休めていないからね亮輔くん。昔から頑張りすぎな気質っていうか……」
健人さんからオオカミ役の話を聞かされた時はビックリしたけれど、『After The Rain』通称『雨上がり珈琲店』の村川朝香さんが大事な時期を迎えているのだから、お家に朝香さんを留守番させて亮輔さんがいつものようにオオカミ役で半日商店街に拘束されるなんて無理がある。
(だけど……だけど、商店街のハロウィンイベントにおけるオオカミ役ってめちゃくちゃ重要ポジションじゃないか! どうしよう……俺、絵が上手でもなんでもないのに!!)
とはいえ、3年前から始まった商店街のハロウィンイベントは地元住人に大好評。俺も子ども達にお花のプレゼント配りに駆り出される…………オオカミ役の亮輔さんが描いた美麗フェイスペイントを施された状態で。
「今回のお花配りは美優に任せようって思ってるんだ。ちょうどサッカーの試合が入ってないから」
「そうなんですね……という事は、フェイスペイントは俺がするっていう……」
健人さんからは具体的な言葉を聞いていないけれど、亮輔さんのオオカミコスプレを俺がするという事はすなわち「フェイスペイント役も込みだ」を意味しているのは明らか。
「…………まぁ……ねぇ…………亮輔くんはほら、絵が上手すぎるだけだから。元々うちのイベントであんなクオリティ求めてはないから」
健人さんは優しくもそう言って頬をポリポリと人差し指で掻いている……でもでもっ!
「『商店街のハロウィンイベントが成功したのは亮輔さんのフェイスペイントがあったからだ』って、去年も一昨年もみんなでそんな話してたじゃないですかぁぁぁぁぁ」
バイトの俺だってこのイベントにおけるフェイスペイントが既に「お気軽な役目」でなくなってる事を理解している。
「大丈夫だよ蒼くんっ! 商店街のみんなは状況知ってるんだからちょっとくらいクオリティ下がっても文句言わないよー」
「嘘だぁぁぁ~去年だって一昨年だってフェイスペイントしにきてその流れで夜のでっかいコスプレイベントに向かうってお客様も多かったじゃないですかぁぁぁ……しかも俺が代役じゃちょっとどころじゃないですってぇぇぇ」
だからこそ、このオオカミ役は俺にとっての荷が重い。
俺は絶叫に近い声をあげながらその場に崩れ落ちたのだった。
はなのお家へお泊まりデートをしたあの時間が幸せ過ぎて、この数日ずっと頭の中がハッピーなお花畑になっていた俺のところに突然大役のオファーが舞い込んだ。
「そうそう、『雨上がり』んとこの朝香ちゃんは出産間近で大変な時期だからね。ここのハロウィンイベントやる頃にはいよいよ臨月に入るんだ」
「亮輔さんだってそばにいてあげたいですよね……」
「そういう事っ! ただでさえ今年は日曜日以外体を休めていないからね亮輔くん。昔から頑張りすぎな気質っていうか……」
健人さんからオオカミ役の話を聞かされた時はビックリしたけれど、『After The Rain』通称『雨上がり珈琲店』の村川朝香さんが大事な時期を迎えているのだから、お家に朝香さんを留守番させて亮輔さんがいつものようにオオカミ役で半日商店街に拘束されるなんて無理がある。
(だけど……だけど、商店街のハロウィンイベントにおけるオオカミ役ってめちゃくちゃ重要ポジションじゃないか! どうしよう……俺、絵が上手でもなんでもないのに!!)
とはいえ、3年前から始まった商店街のハロウィンイベントは地元住人に大好評。俺も子ども達にお花のプレゼント配りに駆り出される…………オオカミ役の亮輔さんが描いた美麗フェイスペイントを施された状態で。
「今回のお花配りは美優に任せようって思ってるんだ。ちょうどサッカーの試合が入ってないから」
「そうなんですね……という事は、フェイスペイントは俺がするっていう……」
健人さんからは具体的な言葉を聞いていないけれど、亮輔さんのオオカミコスプレを俺がするという事はすなわち「フェイスペイント役も込みだ」を意味しているのは明らか。
「…………まぁ……ねぇ…………亮輔くんはほら、絵が上手すぎるだけだから。元々うちのイベントであんなクオリティ求めてはないから」
健人さんは優しくもそう言って頬をポリポリと人差し指で掻いている……でもでもっ!
「『商店街のハロウィンイベントが成功したのは亮輔さんのフェイスペイントがあったからだ』って、去年も一昨年もみんなでそんな話してたじゃないですかぁぁぁぁぁ」
バイトの俺だってこのイベントにおけるフェイスペイントが既に「お気軽な役目」でなくなってる事を理解している。
「大丈夫だよ蒼くんっ! 商店街のみんなは状況知ってるんだからちょっとくらいクオリティ下がっても文句言わないよー」
「嘘だぁぁぁ~去年だって一昨年だってフェイスペイントしにきてその流れで夜のでっかいコスプレイベントに向かうってお客様も多かったじゃないですかぁぁぁ……しかも俺が代役じゃちょっとどころじゃないですってぇぇぇ」
だからこそ、このオオカミ役は俺にとっての荷が重い。
俺は絶叫に近い声をあげながらその場に崩れ落ちたのだった。
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