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Chapter:6初体験
⑥
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座席について15分ほどして……
「わぁ~ナポリタンスパゲッティだなんて久しぶりぃ~♪」
「確かに、なかなか食べる機会ないよねナポリタンって」
ガチで昭和感あふれるナポリタン2皿が俺とはなの間へと差し込まれる。
「美味しそ♡」
「うん……」
はなは満面の笑み、そして俺は引き攣った作り笑いで「いただきます」の手合わせをし
「いただきまーす」
「いただきます」
フォークをケチャップ麺に絡ませる。
(くっ……)
200%楽しむはずだったカフェランチではあったんだけど、メニュー表を俺が手にし開いた瞬間「これははなに見せてはいけない!!」と察して無理矢理「本日のランチ」二つを店員に注文する羽目となったんだ。
(「割引券」って、この店の割引券じゃなくて、向かいにあるデカいラブホの割引券じゃねーかまさやんのヤロウ!!)
あまり汚い口調は使わない俺でも乱暴なツッコミを心の中でする。
なんとメニュー表全ページの上部には赤く目立ったフォントで『当カフェでお食事のお客様にはHotel Tentation3割引クーポンプレゼント』と表記されていたのだった。
「ごめんね、はな。メニューを独断で決めちゃって」
俺の席からガッツリ見えるラブなホテルのクーポン付きお知らせが書かれているメニュー表をはなに渡すわけにはいかない。だからワザとテンション上げて「わぁ~! 今日のランチナポリタンだって♪ はな、一緒に食べない? 美味しそうだよ」と強引に決めて2人とも同じナポリタン・オニオンスープ・グリーンサラダ・コーヒーを口にする羽目になってしまい初デートに疵をつけた事を謝ったら
「ううん! バシッとメニューを決めてサクッと注文しちゃうあおくんはかっこよかったよ♡」
純真無垢のキラキラ笑顔で可愛い返事がすぐに来て
「かっこよかったかなぁ俺……」
「うん!」
「え~そんな事ないって全然」
スカした感じで流しつつも、心の中では
(やった! はなから「かっこいい」もらえた!!)
彼女から「かっこよかったよ」と言われた嬉しさでフワフワした気分になる。
「ナポリタン美味しいね!」
「美味しいね、はな」
老舗の純喫茶とあって、ランチで出てきたものは全て美味しかった。
シンプルな料理だけど真剣に作られている感じはする。クーポン配布がなくても満席状態になるんだろうな、とも思った。
(周りの客、みんな俺達みたいなウキウキした学生カップルか手慣れた大人カップルばかりなのが何とも言えない……。
いや、ラブホ街っていう立地を生かして敢えてのシステムにしているのか?)
普通にしていても客がつく店なのに、クーポン目当てで入店しコーヒーを飲んで向かいのホテルへ直行する流れになっているのは良いのか惜しいのか……はたまた……
(もしかしたらこのカフェ、ホテルの経営者か親戚がやっているのかも?)
……と、色々と考えを巡らせながらコーヒーを飲んでいると
「ねぇねぇあおくん。ここのお客さんって……」
はなは俺に顔を近寄って口元に片手を添え、内緒話をするような仕草をとりながら
「みーんな、向かいのビジネスホテルへ入ってる? 私達くらいのカップルも居るけど実は会社員なのかなぁ?」
「えっ? 会社員?」
「うん。今日は日曜日だからみーんなここでチェックインして、明日に本社で合同会議する……みたいな」
と、俺には考えもつかないような可愛らしい予想を打ち立ててきた。
「合同……会議……」
「そういうのってないのかな? コンビニ業界ではね、接客の的確さを競う大会が開かれて全国から代表者がおっきな会場に集まって技能を披露するみたいなのがあるの。私は行った事ないんだけどチャコ叔母さんも昔何回か出た経験あるらしくて」
「……」
「だからね、そういうのがあるから前日に同じホテルに泊まるのかなぁって」
「…………」
はなは一応、向かい側の建物がホテルだと認識出来ているようだ。
「あのね、はな……」
けれどやっぱりそのホテルはビジネスホテルだと勘違いしたままらしい。
「なぁに? あおくん」
このコーヒーを飲み終えたら会計をする。俺が奢るつもりだからレジの前には俺1人が立てば割引クーポンの件は知られずに済む。このまま向かいの建物をビジネスホテルだと思い込ませたままこの場を立ち去る事だって可能な筈だ。
(どうする……? このままはなの予想に乗っかってやり過ごすか?)
俺は今、自分の行動の選択を迫られていた。
(はなに勘違いさせたまま駅まで戻ってショッピングしたりブラブラと散歩したりして夕方までダラダラ過ごすか……それとも全部正直に話してあれが何の建物なのかを教えるべきか……)
どうすべきか悩んでいる俺の前ではなはまた席にストンと着席し
「そうだとしたらどこのコンビニなんだろう? チャコ叔母さんなら噂で知っていたりするのかなぁ」
なんてとんでもない内容を呟いたので
(このままでは久子さんにはなが変な話をしてしまう! それはヤバい!!)
俺はさっきはながした内緒話ポーズを真似しながら
「あのねはな……向かいの建物はビジネスホテルじゃなくてラブホテルなんだ」
と教えてあげるしかなかった。
「へ? ラブホテル?」
「そう。カップルがイチャイチャする為のエッチなホテルなんだよ。だからお客さんみんなあそこへ行くのは合同会議の前乗りとかそういうのじゃなくて…………」
「わぁ~ナポリタンスパゲッティだなんて久しぶりぃ~♪」
「確かに、なかなか食べる機会ないよねナポリタンって」
ガチで昭和感あふれるナポリタン2皿が俺とはなの間へと差し込まれる。
「美味しそ♡」
「うん……」
はなは満面の笑み、そして俺は引き攣った作り笑いで「いただきます」の手合わせをし
「いただきまーす」
「いただきます」
フォークをケチャップ麺に絡ませる。
(くっ……)
200%楽しむはずだったカフェランチではあったんだけど、メニュー表を俺が手にし開いた瞬間「これははなに見せてはいけない!!」と察して無理矢理「本日のランチ」二つを店員に注文する羽目となったんだ。
(「割引券」って、この店の割引券じゃなくて、向かいにあるデカいラブホの割引券じゃねーかまさやんのヤロウ!!)
あまり汚い口調は使わない俺でも乱暴なツッコミを心の中でする。
なんとメニュー表全ページの上部には赤く目立ったフォントで『当カフェでお食事のお客様にはHotel Tentation3割引クーポンプレゼント』と表記されていたのだった。
「ごめんね、はな。メニューを独断で決めちゃって」
俺の席からガッツリ見えるラブなホテルのクーポン付きお知らせが書かれているメニュー表をはなに渡すわけにはいかない。だからワザとテンション上げて「わぁ~! 今日のランチナポリタンだって♪ はな、一緒に食べない? 美味しそうだよ」と強引に決めて2人とも同じナポリタン・オニオンスープ・グリーンサラダ・コーヒーを口にする羽目になってしまい初デートに疵をつけた事を謝ったら
「ううん! バシッとメニューを決めてサクッと注文しちゃうあおくんはかっこよかったよ♡」
純真無垢のキラキラ笑顔で可愛い返事がすぐに来て
「かっこよかったかなぁ俺……」
「うん!」
「え~そんな事ないって全然」
スカした感じで流しつつも、心の中では
(やった! はなから「かっこいい」もらえた!!)
彼女から「かっこよかったよ」と言われた嬉しさでフワフワした気分になる。
「ナポリタン美味しいね!」
「美味しいね、はな」
老舗の純喫茶とあって、ランチで出てきたものは全て美味しかった。
シンプルな料理だけど真剣に作られている感じはする。クーポン配布がなくても満席状態になるんだろうな、とも思った。
(周りの客、みんな俺達みたいなウキウキした学生カップルか手慣れた大人カップルばかりなのが何とも言えない……。
いや、ラブホ街っていう立地を生かして敢えてのシステムにしているのか?)
普通にしていても客がつく店なのに、クーポン目当てで入店しコーヒーを飲んで向かいのホテルへ直行する流れになっているのは良いのか惜しいのか……はたまた……
(もしかしたらこのカフェ、ホテルの経営者か親戚がやっているのかも?)
……と、色々と考えを巡らせながらコーヒーを飲んでいると
「ねぇねぇあおくん。ここのお客さんって……」
はなは俺に顔を近寄って口元に片手を添え、内緒話をするような仕草をとりながら
「みーんな、向かいのビジネスホテルへ入ってる? 私達くらいのカップルも居るけど実は会社員なのかなぁ?」
「えっ? 会社員?」
「うん。今日は日曜日だからみーんなここでチェックインして、明日に本社で合同会議する……みたいな」
と、俺には考えもつかないような可愛らしい予想を打ち立ててきた。
「合同……会議……」
「そういうのってないのかな? コンビニ業界ではね、接客の的確さを競う大会が開かれて全国から代表者がおっきな会場に集まって技能を披露するみたいなのがあるの。私は行った事ないんだけどチャコ叔母さんも昔何回か出た経験あるらしくて」
「……」
「だからね、そういうのがあるから前日に同じホテルに泊まるのかなぁって」
「…………」
はなは一応、向かい側の建物がホテルだと認識出来ているようだ。
「あのね、はな……」
けれどやっぱりそのホテルはビジネスホテルだと勘違いしたままらしい。
「なぁに? あおくん」
このコーヒーを飲み終えたら会計をする。俺が奢るつもりだからレジの前には俺1人が立てば割引クーポンの件は知られずに済む。このまま向かいの建物をビジネスホテルだと思い込ませたままこの場を立ち去る事だって可能な筈だ。
(どうする……? このままはなの予想に乗っかってやり過ごすか?)
俺は今、自分の行動の選択を迫られていた。
(はなに勘違いさせたまま駅まで戻ってショッピングしたりブラブラと散歩したりして夕方までダラダラ過ごすか……それとも全部正直に話してあれが何の建物なのかを教えるべきか……)
どうすべきか悩んでいる俺の前ではなはまた席にストンと着席し
「そうだとしたらどこのコンビニなんだろう? チャコ叔母さんなら噂で知っていたりするのかなぁ」
なんてとんでもない内容を呟いたので
(このままでは久子さんにはなが変な話をしてしまう! それはヤバい!!)
俺はさっきはながした内緒話ポーズを真似しながら
「あのねはな……向かいの建物はビジネスホテルじゃなくてラブホテルなんだ」
と教えてあげるしかなかった。
「へ? ラブホテル?」
「そう。カップルがイチャイチャする為のエッチなホテルなんだよ。だからお客さんみんなあそこへ行くのは合同会議の前乗りとかそういうのじゃなくて…………」
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