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Chapter5:告白

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「実はこのネクタイピンね、内定の連絡が来る前から用意してたんだ」
「えっ? そうなの?」

 私は涙が出るのをグッとこらえながら、あおくんにプレゼントを選んだ話を始める。

「うん……あおくんの希望するところはスーツ毎日着るから、ネクタイピンが良いかなぁってずっと前からプレゼントを計画していたの」
「そうだったんだ……」
「全く別の職種に就く事もあるし、事前にプレゼント買うのもどうかなぁって思ったんだけど、あおくんはとっても素敵な人だから絶対に人事の人はあおくんの良さに気付いてくれるんじゃないかなって……なんか、私の中で変な自信があって」
「はなちゃん……」
「それにね、このネクタイピンシンプル且つオシャレなデザインで色んなシーンに使えるかなって思ったの。
 会社で毎日つけるのもいいし、ちょっとしたパーティーとかスーツをピシッと決める時に使えそうっていうか」
「……」
「あおくんに、似合いそうだなって」
「…………はなちゃん」

 涙は嬉し涙だからそのまま出してもよかったんだけどあおくんに心配されても良くなかったし、何より私からの感謝をあおくんに贈りたい……その気持ちが一番にあったからそれを直接伝えたんだ。

「あおくんの好みじゃなかったら本当に申し訳ないんだけど…………その、良かったら使ってもらえる、かな?」

 私の気持ちをネクタイピンに込めてみたから、出来ればあおくんに使ってもらいたい。

(あおくんの好みだといいんだけどな……)

 ただ、センスがないからあおくんに100%喜ばれるだけの自信がない。

「…………」
「あおくん?」

 だから、直後の無言は不安になったんだけど…………

「好き」

 の、2文字で全身がカァッと熱くなった。

「えっ?」

(ええええええ?! 今、あおくん! 「好き」って言った?!)

 信じられないまま目を見開いていると

「俺、はなちゃんの事が大好きなんだ」

 あおくんは体をきちんと私へと向き直り、ハッキリとした声でもう一度私に気持ちを伝え

「お願いします。俺と付き合って下さい」

 頭を下げた。

「うそ…………」

 信じられない。と、私の唇が無意識に動く。

「嘘じゃないよ、俺の、本当の気持ちです」

 あおくんは私を見つめ、手をとって……

「もう一回言うね。俺は長岡華子さんが大好きです。ずっと一緒に居たいんです」
「……」
「俺とお付き合い、してください。彼女になってもらえませんか?」

 真剣な表情で、改めて愛の告白をしてくれた。

「はい……」

 私が密かに願っていた事が突然叶ってしまったのだから、断る理由が見つからない。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 ペコッとその場で頭を下げると

「本当に?! やったぁ~!!」

 あおくんはとびきりの笑顔で喜び、私の手をギュッと強く掴んできた。

「ひゃん」

 力強さにビックリして小動物みたいな声を出す私にあおくんは

「あっ……強く握っちゃったね、ごめんね!」

 と慌てて謝り私の指をスリスリ撫でる。

「ううん、ビックリしただけ」

 彼の労り方にまたキュンキュンしていたら

「良かったぁ」

 彼がまたふわりとやわらかな笑みを浮かべて幸せな気分になる。

「ん……嫌じゃなかったよ」
「良かった……」

 あおくんはニコニコ顔でスリスリなでなでをしばらく続けてくれて

「…………じゃあ」

 何故か周囲をキョロキョロ見回す。

(ん? 何だろ?)

 何が気になっているのかと、私も同じように見回してみたんだけど誰も居ないし静かな並木道のまんまで

「あのね……キス、してもいいかな?」

 横を向いていた私の耳に、あおくんの囁き声がふんわりとかけられて

「!!!!!!!!」

 発火してるんじゃないかってくらいに頬が熱くなる。

「ダメ……かな? 誰もいないし」

 あおくんも頬を赤くしながらモジモジしている。

「えっと…………外、だし…………」

 だから私もモジモジしちゃって

「あ……そっかぁ」

 あおくんは俯いてしまった。

(あぅ……なんか、あおくん寂しそう)

 誰もいないとはいえ、外は恥ずかしい。何たって私にとってはこれがファーストキスになってしまうから。

(あおくんはキスなんて、何度もしていて慣れてるのかもしれないけど)

 あおくんはかっこいいし、彼女がいた事あるって前に聞いていたから、私とはキスの重みが違うのかもしれない。だからこの場で「キスしよう」なんて言えてしまうんじゃないかと予想したんだけど

「ファーストキスだから……思い出に残るキスにしたいなって……思ったんだ」

 ポツリと呟いたあおくんの言葉に私は肩をビクッと震わせる。

(えっ!!?? あおくんももしかして、キス初めて??!!!!)

 まさかそんなわけはない。

 …………そう思っていたのに、その「まさか」があおくんの口から語られたから

「えっと……」

 私はギュッとあおくんの手を握り返した。

「えっ? はなちゃん?」
「…………」

 あおくんはたまたまここに「来ちゃった」と言ってくれた。
 かっこいいジャケットを着て、私の前に現れてくれた。
 プレゼントを渡せて良かったって私だけ満足しちゃってあおくんの「キスしたい」と言った勇気をスルーしてもいけないと思ったから……

「誰もいないから……いいよ」

 私も呟きであおくんを受け入れる。

「ほんと?」

 あおくんの手がピクッと動いた。

「うん……お付き合い日の記念だから」

 私も私で勇気を出しているから汗が滲む。

「ありがとう」

 あおくんは握っていた私との手をスルッと恋人繋ぎに組み替えて

「顔、あげてね。一瞬だけだから」

 優しくそう言うと……

「んっ」

 顔を上げた私の顎を軽くつまんで


 ちゅっ


 って。唇を重ねてくれた。
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