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Chapter3:ビデオ通話

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「えへへ」

 乾杯直後、嬉しさいっぱいでマグカップの中身をコクンと飲むと

『へへ』

 あおくんも同じように笑い、マグカップを口につけて飲み物を飲んでくれた。

(あっ、今……喉仏が動いたぁ)

 「男の人の喉仏はセクシーだ」って、友達みんな言っていたのを思い出す。

(本当だった♪ かっこいいしドキドキキュンキュンしちゃう)

 あおくんに絶賛片想い中だから余計にキュンキュンが止まらない。

「ごめんね、急にビデオ通話に誘っちゃって」

 黙ってあおくんのゴクゴク姿を眺めていたい。でもそんな事していたら「通話」の意味がなくなってしまうから、なんとかして話題のタネを搾り出した。

『ううん、嬉しかったよ。お誘いありがとうはなちゃん』

 あおくんは本当に優しくて、私の急なお願いもちゃんと聞いてくれるしニコニコしてくれる。

(はあぁ……好きぃ♡)

「あおくんの飲み物はコーヒー? ブラック?」
『うん、ブラック』
「ランチの時のブレンドコーヒーもブラックで普通に飲んでいたもんね」
『まぁね』
「私はミルク入れたり入れなかったりかなぁ。インスタントコーヒーだったらミルクたっぷり入れちゃう」
『そうなんだね』
「そうなのーふふふ♪」

(ふあああぁぁぁ~……どんどん好きになっちゃうよぅ)

 コーヒーにミルクを入れる入れないだけの話しかしていないのに、あおくんへの好きが止まらなくて暴走するんじゃないかというところまできていた。
 声も優しくて素敵だしウェーブがかった髪も顔もかっこいいし、時々クンッと動く喉仏はやっぱりセクシーだと感じていたから。

『はなちゃんの飲み物は何? 紅茶だったっけ?』
「うん、いつもね寝る前にミルクティーを飲むの。ディスカウントショップで売ってる100個入りの安いティーバッグのヤツで手軽に作るんだよ」

 正直に答えるしかないけど、かっこよくてセクシーなあおくんに対して私はダサい女だなぁとも思う。

(安いのは一番だけど、別にそこまで明かす必要はなかったかなぁ……)

『安いティーバッグなんだ?』
「うん! 毎日飲むものだもん、そういうので充分♪」
『充分……か』
「そりゃあ高級なものの方が美味しいんだろうけど、毎日の生活をながーく考えたらお得な方がいいでしょ?」

(みどりちゃんに叱られちゃいそう……もうやめようかな、安いとかの話題は)

 毎日の事だから、安くてお得な方が生活しやすい。
 それも良い事だと思うんだけど、わざわざリモートデート中に話す内容でもなかった。と、少し反省した。

『確かに……』

(んっ?)

 でも、あおくんはそこまでつまらなさそうな表情をしていない。寧ろ私の話にうんうんと頷いて納得してくれているようだ。

(あおくんの事、かっこよくて素敵だなって思っていたけど……私と同じ大学生だし、価値観は似ているのかなぁ?)

「ちなみに私のお菓子はちっちゃいクッキーだよ~!」

 試しに私は今日のお供であるクッキーの包みを見せると、あおくんの表情はパァッと明るくなった。

『あ、それっていっぱい種類出てるやつ!』

 どうやらあおくんも好きなシリーズの商品だったらしい。

「そうそう♪ 安いし種類豊富だし容量もそれなりに入っててお気に入りなの♡」
『わかる! 俺はそれの、ホワイトチョコが挟まってるヤツが好き!』

(良かったぁ~あおくんもお安いお菓子好きなんだぁ♪)

 さっきは「安い」のワードを避けようって決めたクセに

「おぉ~♪ あおくんオシャレなチョイスぅ♪」
『オシャレなんかじゃないよ、はなちゃん大袈裟だなぁ』

 トークが止まらない。

「大袈裟じゃないよぅ。だってあおくんはコーヒーの味が分かるすごい人なんだもん」
『雨上がりブレンドを知っていたのはたまたまだよ。これ、インスタントコーヒーだし』
「えー! そうだったんだ~! てっきり土曜日以外も珈琲屋さんのを買って飲んでるんだと思ってた!」
『はなちゃんがさっき言ったのとおんなじ事だよ。そもそも雨上がりブレンドはサービスで飲めてるから良いってのがあるし、普段は安いインスタントで充分なんだよ』

 「普段は安いもので充分」という考えが一致したのは嬉しいし

「そっかぁ~」
『ま、同じ商店街の一員だから買って応援するに越したことはないんだけど。学生はお金がないからね』
「だよね~私もぉ」

 文字のやり取りの時以上に親近感が湧いて、また好きになっていく。

「じゃああおくんにクッキーをお裾分けしてあげるね! あーんして♪」
『あーん』
「はい、どうぞ♪」
『もぐもぐー、おいしーよはなちゃん』
「ふふふ♪ 食べるフリしてくれてありがとうあおくん」
『えへへ♪ こちらこそ楽しいよ、ありがとうはなちゃん』

 あーんやもぐもぐのフリをするのも楽しくて……

「そういえばあおくんのお菓子ってなぁに? 見せて見せてー」
『ああそれがね、大したものなくってここに持ってこなかったんだ』
「大したものないって、具体的に何があったの?」
『つまらないものだよ、ラーメンスナック』
「え~! いいじゃんラーメンのお菓子!! 私大好きだよ」
『本当に? 細いタイプじゃなくて太麺のやつだよ?』
「実は私ね、太麺の方が好きなんだ♪ ボリボリッて食べ応えあるんだもん」
『じゃあ、持ってこようか?』
「うんうん♪ 持ってきてー♪ 一緒に食べよう!)

 ずっとニコニコが止まらなくて……

『はい、持ってきたよ』
「開けて開けて♡」
『はーい、焦らないで』
「食べたいよぅ」
『ふふっ、はーいお待たせ』
「あーんするから食べさせてね♡」
『うん』
「あーん……」
『はい、食べさせたよー』
「もぐもぐもぐもぐっ! おいしー♪ ありがとうあおくん♪」
『どういたしまして』

(めちゃくちゃ幸せだぁ……)

「残しは各々食べようね」
『そうだね』
「ふふっ」
『えへへ』

 ずっとずーっとこの時間を共有したいと強く願った。

(あおくんのこと、好き過ぎて困ってしまいそう……)
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