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Chapter1:出会い
②
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「じゃあ、行ってきます」
「うん、夜道気をつけてね」
「はい、お先に失礼します」
「うん、お花見楽しんできてね」
健人さんに手を降り、俺は教えてもらった桜並木へと自転車を走らせた。
(あんな場所にも桜スポットがあったのか……高校の途中からだから、この地域で暮らすようになって4年半だろ? 桜の時期を4回も通り過ぎているのに全然知らなかったっていうのも不思議だなぁ)
そもそもこの進行方向は俺の生活圏内とは真逆になる。距離としては大した事がないのに、反対方向っていうだけで異世界へのゲートを潜って突入しているような気分になって、ドキドキとザワザワが混じったような心境でいた。
(あ、コンビニがある)
ふと、数十メートル先にコンビニの特徴的な看板が建っている事に気付いた。
「いいなぁコンビニ……」
何故か自然と「いいなぁ」が口からついてしまう。俺のマンションにはスーパーやドラッグストアがすぐ目の前にあるしバイト先は地元民に愛されている商店街にあるから普段の買い物には困らないんだけど、コンビニがないという不満が一つだけある。学生……そしてこの先社会人になる俺にとってはコンビニは癒しエリアでそれが近くにない生活を続けていると、なんとなく胸にぽっかりと穴が空いたようなっていうか。
「単に真夏の夜とかアイスが食べたくなる時に気軽に買いに行きたいよなぁっていうだけの話なんだけど」
ガキみたいな理由を吐き捨て、また自転車のペダルを大きく漕ごうとしたその時———
「やめてくださいっ……」
店舗の前で女の子が小さく縮こまっていて、苦しくて辛そうな声を出しているのに気付いた。
「っ」
瞬間的に俺は自転車を降り、その場に停める。
「おっぱいおっきいねー♪ 何カップ?」
「田舎っぽく三つ編みとでかいメガネしてるけどさー、なんで? コンタクトしたら良くない?」
「そっ……そんなのあなた達に関係ないじゃないですかっ!」
「えー? 怒られたの? 俺ら」
「アドバイスしてあげてんだけど? 『こんな風にしたら付き合ってあげるよー』って」
「ま、その『付き合う』もワンナイトかもしんないけどねー♪」
「確かにっ! なんかね、たまには違うの食べてみたいなーって気まぐれのヤツね」
(なんだ? アイツら……)
状況がよく掴めないから駐車場の端から様子を見ていたんだけど、明らかに普通の会話じゃない。
「うぅ……」
180センチもあろうかというチャラついた2人の男に阻まれている女の子は、長い柄の掃除用具にしがみつき立っているのがようやくといった様子でいる。
「今ってバイト中? 何時に終わるの? 終わるまで待っててあげよっか?」
「そしたら3人でさぁ、楽しい事しよっ! ねっ!」
(ヤバい……なんとかしてやらないと)
俺がオロオロしているうちに男達は女の子の腰やお尻を触り、グイッと引き寄せて俺とは対角方向の隅へと連れて行こうとしている。
(店にはあの子しか居ないのかな? もし誰か居るのなら教えてやらないと!!)
真っ先に女の子のところへ行って助けてやりたい……けど、俺には腕力がないし二対一じゃ部が悪すぎる。
そしてこれはコンビニの敷地内で従業員の身に起こっているのだから、まずは店に報告しないといけない。
男として情けないしせこいような気もするけど、俺は男達に気付かれないように店の中に入り……
「あのっ! すみませんっ!! 誰か居ませんか?!」
店舗内を歩き回って他の従業員に呼び掛けてみた。
「あれっ? はなちゃん、居ない?」
するとすぐにスタッフルームから中年の女性がのんびりとした声を発しながら出てきたから、俺はすぐに駆け寄って
「早く外へ行って下さいっ! 三つ編みの女の子が今、2人の男に絡まれてて……それでっ!!」
唇を震わせながら目にした事を説明し
「えっ……」
血相を変えた中年女性と一緒に、外へと駆け出した。
「うん、夜道気をつけてね」
「はい、お先に失礼します」
「うん、お花見楽しんできてね」
健人さんに手を降り、俺は教えてもらった桜並木へと自転車を走らせた。
(あんな場所にも桜スポットがあったのか……高校の途中からだから、この地域で暮らすようになって4年半だろ? 桜の時期を4回も通り過ぎているのに全然知らなかったっていうのも不思議だなぁ)
そもそもこの進行方向は俺の生活圏内とは真逆になる。距離としては大した事がないのに、反対方向っていうだけで異世界へのゲートを潜って突入しているような気分になって、ドキドキとザワザワが混じったような心境でいた。
(あ、コンビニがある)
ふと、数十メートル先にコンビニの特徴的な看板が建っている事に気付いた。
「いいなぁコンビニ……」
何故か自然と「いいなぁ」が口からついてしまう。俺のマンションにはスーパーやドラッグストアがすぐ目の前にあるしバイト先は地元民に愛されている商店街にあるから普段の買い物には困らないんだけど、コンビニがないという不満が一つだけある。学生……そしてこの先社会人になる俺にとってはコンビニは癒しエリアでそれが近くにない生活を続けていると、なんとなく胸にぽっかりと穴が空いたようなっていうか。
「単に真夏の夜とかアイスが食べたくなる時に気軽に買いに行きたいよなぁっていうだけの話なんだけど」
ガキみたいな理由を吐き捨て、また自転車のペダルを大きく漕ごうとしたその時———
「やめてくださいっ……」
店舗の前で女の子が小さく縮こまっていて、苦しくて辛そうな声を出しているのに気付いた。
「っ」
瞬間的に俺は自転車を降り、その場に停める。
「おっぱいおっきいねー♪ 何カップ?」
「田舎っぽく三つ編みとでかいメガネしてるけどさー、なんで? コンタクトしたら良くない?」
「そっ……そんなのあなた達に関係ないじゃないですかっ!」
「えー? 怒られたの? 俺ら」
「アドバイスしてあげてんだけど? 『こんな風にしたら付き合ってあげるよー』って」
「ま、その『付き合う』もワンナイトかもしんないけどねー♪」
「確かにっ! なんかね、たまには違うの食べてみたいなーって気まぐれのヤツね」
(なんだ? アイツら……)
状況がよく掴めないから駐車場の端から様子を見ていたんだけど、明らかに普通の会話じゃない。
「うぅ……」
180センチもあろうかというチャラついた2人の男に阻まれている女の子は、長い柄の掃除用具にしがみつき立っているのがようやくといった様子でいる。
「今ってバイト中? 何時に終わるの? 終わるまで待っててあげよっか?」
「そしたら3人でさぁ、楽しい事しよっ! ねっ!」
(ヤバい……なんとかしてやらないと)
俺がオロオロしているうちに男達は女の子の腰やお尻を触り、グイッと引き寄せて俺とは対角方向の隅へと連れて行こうとしている。
(店にはあの子しか居ないのかな? もし誰か居るのなら教えてやらないと!!)
真っ先に女の子のところへ行って助けてやりたい……けど、俺には腕力がないし二対一じゃ部が悪すぎる。
そしてこれはコンビニの敷地内で従業員の身に起こっているのだから、まずは店に報告しないといけない。
男として情けないしせこいような気もするけど、俺は男達に気付かれないように店の中に入り……
「あのっ! すみませんっ!! 誰か居ませんか?!」
店舗内を歩き回って他の従業員に呼び掛けてみた。
「あれっ? はなちゃん、居ない?」
するとすぐにスタッフルームから中年の女性がのんびりとした声を発しながら出てきたから、俺はすぐに駆け寄って
「早く外へ行って下さいっ! 三つ編みの女の子が今、2人の男に絡まれてて……それでっ!!」
唇を震わせながら目にした事を説明し
「えっ……」
血相を変えた中年女性と一緒に、外へと駆け出した。
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