【完結】雨上がりは、珈琲の香り①

受け止める

★7

「ワイン飲んだ事ないけど普通のジュースよりも皮の渋みとかあってめちゃくちゃワインっぽいね！」
「ワインより断然美味しいかも♪」

　共にジュースを口にして各々感想を言い、微笑み合う。

「お子ちゃまワインかな？」
「大人ジュースなんじゃない？」

　少しの冗談を言い合い、クスクス笑い合うのも楽しくて幸せだ。

「あー、幸せ♡こんなに幸せな日は人生初かも」

　りょーくんは急に大人っぽい表情に変え、私をかっこよく見つめてくる。

「りょーくん？」
「大好きな人とこんな風に過ごせる日が来るなんて、この20年思ってもみなかったよ。あーちゃん本当にありがとう」

　それから、グレープジュースを含んだ口で私にキスをしてきて、ふわっと上品な果実の香りがりょーくんの唾液と共に私の口の中へと広がる。

「んっ……」
「おいしい？」

　私の喉がコクッと小さく鳴った後でりょーくんが微笑みながら訊いてきた。

「ん……」

　キスの気持ち良さで味なんか忘れちゃったけど、コクンと私は頷く。

「お子ちゃまワインだった？ それとも大人ジュースだった？」

　りょーくんのその問いに私は頭の中が一面お花畑になりながら

「大人ワイン……だったかも」

　頬と耳を熱くさせ、そう返答した。

「アルコール入ってたっけ？」

　微笑み顔のりょーくんがイケボでそんな惚とぼけた言葉を言い

「りょーくんの唾液で酔っ払っちゃったんだもん」

　私はポーッと頬を熱くさせたまま、冗談のような本気の言葉を言い返す。
　するとりょーくんの顔がフニャッと弛ゆるんで

「エッチに煽あおってきたらマジで襲うよ？」

　と、グラスのジュースをたっぷり口に含んで、私の口内へトクトクと流してきた。

「んんっ」

　予想外の量に軽くパニックになりながら、それでも必死にりょーくんの口内を受け入れ 喉を鳴らしながら舌を絡める。
　本当にりょーくんの唾液にはアルコールが含まれているのか、酔っ払ったかのように頭がボーッとしてきた。

　再びりょーくんの唇が離れた頃には、私の舌がジンジンを熱を含んでいるような気になって 恥ずかしくなる。

「あーちゃんまたトロトロ顔♡」
「だってりょーくんが……」
「『食事しよう』って、あーちゃんが言ったから、飲み物を分けてあげただけだよ」

　そしてまた彼はそんな意地悪なことを言い出す。

「飲み物分けるだけならキス要らないのにぃ♡」

　りょーくんは、恥ずかしさで目線を下げた私を制して顎を持ち上げる。

「俺とキスしたくなかった？」

　顎を持ち上げられ、そんなこと言われながら顔を近づけたらもう「要らない」なんて言える筈がない。

「したい♡」

　顔の熱さを感じながら呟くように答えると、正解のキスが軽く唇に落ちた。

「続きはお腹いっぱいになってからね、エッチなあーちゃん♡」

　でも、そこまで私をその気にさせといて唐揚げに手を伸ばす辺り、「やっぱりりょーくんは意地悪だ」という感想を持つ。