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猫になる

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「あーちゃん本当にごめん! 嘘は絶対にもうつかない!! っていうか、いっぱいいっぱい謝らせて!」

 りょーくんは私の重ねた手を優しく握り、スリスリと撫でてきた。

「謝るのはもう充分だよ。りょーくんが私の事を嫌ってないって分かればそれで私は幸せだよ」

 私はそう返事をして、スリスリする掌の触れ合いに心地良さや幸福感を感じる。

「許してあーちゃん」
「うん」
「もう、絶対にあーちゃんに対して酷い態度を取らないから」
「ん……」
「本当は、すっごくすっごく好きだよ。あの時の下着姿のあーちゃんに萎えるどころかドキドキしてたし、さっきのブラもエッチで可愛くて……ちょっと、がヤバかったし」
「うん」
「今も『あーちゃん大好き』って気持ちを掌のスリスリでしか表現出来ないもどかしさを感じているっていうか」

 そのスリスリや謝る彼の口調は、「野獣くん」と呼ばれているとは思えないくらい甘えた「子猫ちゃん」みたいになっていて、それが凄く嬉しいと思う反面……

「んん?」

(もしかしてりょーくんって今、私にかなりエッチな話をしてくれてるんじゃない?)

 1つ2つ前の彼のセリフがいつもと雰囲気が全く異なっている事に私は目を見開かせた。

「目をカッて開くあーちゃんは可愛いんだけど、このタイミングでしないでよ……なんか恥ずかしい」
「えっ……あっ、や……」

 私のその驚きリアクションは、どう考えてもりょーくんの「男の部分がヤバい」「大好きって気持ちを掌のスリスリでしか表現出来ないもどかしさ」にかかっているわけだから、りょーくんが恥ずかしくなる気持ちも理解出来る。

「変なリアクション取ってごめんねりょーくんっ!」
「謝らなくてもいいんだよ。俺のあーちゃんに対する愛がダダ漏れなのがヤバいって話なだけで」

 焦って頬を熱くする私の視界には、同じく頬を真っ赤にしているりょーくんの姿がある。
 同じ赤面でも私と彼とでは意味が違っていて……勿論私は彼の赤面の意味がしっかりと理解出来ていた。
 
「あっ、愛?」
「こんな気持ち、あーちゃんにとって迷惑だって俺も気付いてる。だけど俺はそれが止められないくらい、あーちゃんに対してめちゃくちゃ愛情あるんだ。
 あーちゃんと初めて、そこの外階段のところで顔を見合わせた時から縁を感じてて……あーちゃんの大事な体を痴漢から救えたって時には舞い上ってて、バイクの後ろにあーちゃんを乗っけてる時も、あーちゃんの美味しい手料理食べてる時も、今日のデートしてる時だって『めちゃくちゃ彼氏っぽい事出来てる』って嬉しくて、今日のランチ食べてる時まですげー浮かれてたんだ。
 でも俺は『野獣くん』だからあーちゃんに愛情持ち続けてるとつい興奮してエッチな事をしたくなってしまうし。純白純粋なあーちゃんを俺の汚い行為でぐちゃぐちゃにしてしまったら、あーちゃんが泣いちゃうんじゃないかって……不安な気持ちの方がまさってきて」

 りょーくんは尚も私の目を見つめながら、自分の正直な気持ちを更に私に話してくれた。

「りょーくん……」
「あー、まとまりのない話をダラダラ続けて本当にごめん! 昼間にあーちゃんに暴言吐いてからずっと、俺の頭の中ぐちゃぐちゃなんだ。
 ……ぐちゃぐちゃだから、バイトしようにも心ここにあらずって感じになって、店長からすぐに『帰って休め』って言われちゃったんだよ俺。あーちゃんはちゃんと真面目に仕事してるっていうのに、俺だけなんか恥ずかしい」

 私を見つめる彼の目が潤んでいる。

「ねぇりょーくん、金髪の綺麗な頭をなでなでしてみてもいい?」
「えっ?」

 私は彼がビックリするような提案を躊躇ためらう事なく口にした。

「りょーくんが嫌ならしないよ。ただ『頭の中ぐちゃぐちゃ』って言ってるりょーくんに何かしてあげたくて」

 りょーくんは最初物凄くビックリしていたんだけど、私の言葉に納得したのか自分の頭を私に少し傾けてくれた。
 
「じゃあ……おでこに近いとこなら」
「ありがとうりょーくん」
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