【完結】彼女が18になった

チャフ

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【追加エピソード③】美味しい桃の食し方(side静華)

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「お風呂でのぼせながらみなとっちにエッチ迫っちゃうなんて、なつこちゃん可愛い♪」
「えぇ~そうかなぁ……なんか恥ずかしい♡」

 年が明けて、私にもようやく正月というものがやってきた。
 そして本来ならば自宅で1人きりの時間を過ごす筈だったのに、晴れて明確な結婚の約束をしたカップルの三が日に私は何故かお邪魔をしていて、ここの家主がお酒の買い出しに行ってくれている隙にガールズトークをしてしまっている。
 話題はズバリ、「初体験の思い出話」だ。

「普通にしてても可愛いなつこちゃんなのに、お風呂でピンク色のお肌になって甘えちゃうんでしょ? みなとっち絶対にメロメロになってたと思う!」
「そうかなぁ~? どっちかっていうと湊人は私がのぼせた事を怒ってたような……」
「いくら真面目バカのみなとっちだって、本気で怒ってた訳じゃないと思うの! 私がみなとっちの立場ならそうしちゃうもん。こんなに可愛いなつこちゃんなんだから♪」

 なつこちゃんとこたつの中に足を入れ、酔いに任せて抱きついてみたり頬ずりしてみたりするのは結構楽しい。
 しかもガールズトークする女友達が出来るなんて、今までの私の人生の中ではあり得ない事だったから余計に嬉しいし、30歳を目前に控えた女がスキンシップするのを照れ笑いするばかりで一切拒絶しないのだから、一回り歳下のお友達は人間的にも優れているのだと感じる。

「じゃあ、なつこちゃんの初体験はとっても甘々で良い思い出だったんだね♪」
「確かに……そうですね。えへへ♡」
「ふふふ♡」

 なつこちゃんのお相手は私にとっての元彼であり、唯一セックスした相手でもある。
 けれどもなつこちゃんの口から出る幸せそうな雰囲気の思い出話は聞いてて和むというか……ほんわかした気持ちになるのだから不思議だ。

 ここのお宅で呑む際にはすっかりお馴染みとなり、わざわざ家主に買ってもらった梅花形の冷酒グラスを唇にくっつけて「いいなぁ」なんてぼやく私に、なつこちゃんは上目遣いで見つめてきて……

「静華さんの初体験って……」

 と、言いにくそうにそれだけを言ってきた。

「そうだよ、私の初体験の相手はみなとっち。時期は高2の夏辺りだったかなぁ」

 私はもう充分過ぎるくらいに大人になってしまったのだから、そこは正直に堂々と答える。

「高2の夏……っていう事は、湊人にとっても静華さんが初体験のお相手だったっていう事かぁ」
「みなとっちから、初体験の年齢聞いたんだ?」
「はい、話の流れで」

 私の態度に反して、なつこちゃんはとても気まずそうな表情をしている。
 それはみなとっちや私に嫉妬を抱いているというよりは、何というか「申し訳ない」と言った様相だろうか。

「みなとっちって、嘘つけないっていうか、バカ正直なところがあるからどうせ『今まで彼女を喜ばせるエッチをしてこなかった』みたいな話をなつこちゃんにしちゃってるんじゃない?」

 だから私は少し違う切り口でその様相の理由を言い当ててみると、なつこちゃんは「何故分かったのだろう」とでも言いたげな表情に変えて私をまじまじと見つめ続けた。

「さすが、湊人の元カノさんだぁ……」
「元カノ関係ないないっ! みなとっちの性格が高校時代と変わってないのだとしたら、そうなんじゃないかなと思っただけだよ」
「元カノ関係なく……同級生としての意見って意味?」
「あー……100%同級生的意見によるものかって言われたら嘘になるかぁ。実際みなとっちと別れる時も私は『愛された実感がなかった』みたいな理由をアイツにぶつけちゃったからね。
 私の後に出来た彼女に対しても似たような感じだったかまでは分かんないけど今のなつこちゃんの顔からして、まさにそうだったんだねーって思ってる。そんだけの事だよ。別になつこちゃんに対して元カノ面した訳じゃないって意味」
「……実はね、『愛された実感がなかった』に関しては、湊人からも話を聞いたの。静華さんからそう言われて振られたんだって。だからその分私の事をちゃんと愛したいって言ってくれてて」

 私は女の心情というものにうとい人間だけれど、だいたいこういう時ってなつこちゃんの立場にいる女性は元カノの私に対して優位に立てるし、今だってマウント取るような表情でいていいんじゃないかと思う。
 それなのになつこちゃんは眉を下げて申し訳なさそうな顔で私を見つめ続けている。

「もう12年以上も前の話だし、今でも私は旦那の事が大好きでみなとっちは単なる友達としか見てないんだから。
 だからなつこちゃんはそんな悲しそうな表情しちゃダメだよ」

 私はなつこちゃんの頭を撫でて、「気にしないで」の意味を持つ言葉を掛ける。
 確かに私にとって彼は初体験の相手で唯一の相手でもあるけれど、それはとうの昔の出来事だ。

「だって……なんか、私だけが幸せに浮かれてていいのかなって思っちゃったから……」
「いいんだよ。だってみなとっちは、私と付き合う前からなつこちゃんの事が大好きだったんだもん。
 付き合ってる最中もなんとなく私以外の誰かを想っているような雰囲気をアイツは醸し出していたし、今思えばその相手がなつこちゃんだったんだろうから……だからなつこちゃんは浮かれてていいんだし、初体験が幸せな思い出となったのならそこは堂々と胸張っていいと思うな」

 とうの昔の出来事だから、この話は自分の胸にしまっておこうと決めていたのだけれど………。

「じゃあ、みなとっちが帰ってくるまでその昔話をしてあげよっか」

 目の前にいる可愛くてとても大事なお友達の為に、その話を明かしてあげようと……私はなつこちゃんの頭を撫でなから微笑みを向けてみた。

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