【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺の口吸い彼女の甘噛み

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 10年前から密かに俺への恋心を寄せていた夏実。
 それを醜い疑似恋愛で、可愛らしく健気な少女の恋心を踏みにじっていた俺。

 10年前から、「好き」「みなとくんのお嫁さんになりたいな」なんてストレートな言葉を俺にかけてくれていた夏実。
 それを「12歳も離れているのだから本気にしてはならない」と軽くあしらっていた俺。

 誕生日の夜に俺との進展を強く望み、「本能の湊人も知りたい」と言ってくれた夏実。
 一度は本能のまま行動しようとしてみせるも、己の気色悪さを実感してそれ以後「夏実の王子でやはりありたい」などと言う絵空事を頭に思い浮かべる狡い俺。

 ……恋仲になっても、肉体的な繋がりを得た仲になっても、それでもまだ夏実への尊さが眩しく感じられるのは全て俺が不甲斐ない所為だ。

 
 夏実と俺が初めて顔を合わせて18年3ヶ月。
 この年月の中で、俺は数え切れない程彼女の淡い恋心を裏切ってきた。
 いつから夏実に恋していたかを明かさず「みなとくんのお嫁さんになりたい」を幾度となくスルーしてきた俺に、夏実は幾度となく失望した事だろう。
 そして肉体的繋がりという経験を経てきた俺は尚、彼女の王子様でありたいと心の中で願う癖にこうして醜い中年像を晒し続けている。
 普通ならこんな男、切り捨てられて当然なのだ。

 しかし夏実はそれでも変わらない態度で居てくれて、今この瞬間にもこんな俺にやわらかくて温かな愛情をかけてくれているのだ。
 俺はそんな夏実が大好きだし、生涯をかけて愛したい。
 だから不甲斐ない俺の部分を、夏実への密かな恋心を、今すぐ彼女の心に届けなければならないのではないかと反省をした。

 静華に指摘されたからこの言葉を言うのではない。
 己の照れや恥ずかしさなどを投げ棄てて、この言葉を今から言うのだと自分に言い聞かせた。

「夏実が褒めてくれる、俺の首や……鎖骨や……足首を、もっともっと触って欲しい。舐めて欲しい。
 ……夏実の想いのまま、めちゃくちゃにしてくれたっていい。
 俺…………そういうの、頭がおかしくなるくらいに好きなんだ」
「えっ?」

 俺は夏実の頰に手を置いたまま、16年以上前から秘め続けていた重たい想いを夏実に伝える。

「本当は俺の方が先に、夏実に恋したんだ。
 夏実が2歳になった頃かな……幼馴染の俺を『パパ』って間違えた事があって。誰もがそれを言い正そうとしても、それでも俺を『パパだ』と信じてやまなかった夏実が可愛くて、愛おしくて、大事にしたいって思った。
 とはいえ14歳の俺が2歳の夏実に恋をするなんてどう考えたって普通じゃないし、この感情は偽りだと……まやかしだと何度も否定しようとした」
「湊人……」
「だから俺は、夏実以外の……同年代の彼女を無理矢理作って『首や足首を強く噛んで』って、そう言い続けてきた。キスやエッチよりもそうされる事に快感を覚えて、噛まれた部分を撫でながらオナニーした事だって何度もある。そのくらい、俺は気持ち悪い男で夏実に好かれてるような男でもなくて…………」

 俺はとても醜い。
 俺はとても汚い。
 ……それも言おうとしたのに鼻の奥がツンとしてきて一瞬言葉に詰まり、視界が涙でにじむ。

「だから、夏実が俺の事を好きだと言ってくれるのが信じられないくらい幸せで……逆に、嫌われたくないという感情が芽生えた。
 夏実が俺との差を埋めようと努力してくれる事に甘えて、本当の事を言えずに……ずっと隠しておこうだなんて狡く考えた。」

 俺の秘めた想いを、16年以上の時を経てようやく目の前の愛する者に伝える事が出来たと……その安堵から、目尻に溜めていた涙を流した反面「この涙は、11歳の夏実が成し得たあの行為に少しでも似せる事が出来たのだろうか?」という、淡い期待も抱いてしまった。

「俺は夏実の事が好きだ……ずっとずっと前から、夏実が大好き。
 普段の夏実も大好きで可愛いって思うし、今みたいな格好の夏実も大好きで、セクシーで、すごく興奮する。だから夏実は俺に対して不安を抱かなくていいんだよ。だって夏実の想像以上に俺は夏実の事を好きで好きでたまらなくて、頭がおかしくなるくらい夏実の事ばかり想っていて、気持ち悪いくらい深く愛しているんだから」

 言葉をつむぐ度に、身体の奥が締めつけられるような感覚がする。
 果たしてこの言葉は、夏実に有効なのだろうかと不安になり、自問する。
 それでも夏実が「言葉にしてほしい」と望む限り、今は自分の素直な気持ちを言葉にして伝えなければと……締めつけの精神的な痛みを抱えながら、それでもなんとか絞り出すように目の前の愛する存在へと己の口を動かした。




 俺が口を閉じた後……夏実は尚、紅い目のまま俺を見つめて黙っている。



「ごめん」

 その沈黙が苦しくなって、俺はそう短く言うと夏実の頰から自分の手を離し、顔も逸らした。
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