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俺の口吸い彼女の甘噛み
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脱衣所で自分の上半身を映してマジマジと見ながら「まさか俺まで仮装させる気なんじゃないだろうか?」と、静華がいきなり引き戸を開けて入ってくる寸前までその予想を立てようとしていたのだが、こういう形でまさに現実化すると不思議な感覚がする。
何が一番不思議かというと、静華が至近距離で俺の顔を真剣にメイクしているその様子だ。
目の前の女は生稲静華ではないと頭で理解するつもりでいるのにどうしても気持ちの何処かで引っかかり、それは大きな違和感を持つ。
「あのさ……俺が帰ってくる前までに夏実にもこうやってメイクしてやったの?」
また静華に見下されながら「当たり前だ」と言われるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしつつ、素直に疑問をぶつけてみた。
「そうだけど? だって一昨日くらいになつこちゃんからお願いされちゃったんだもん」
「お願いって、仮装のメイク?」
「まぁ……仮装云々の前から、なつこちゃんとハロウィンパーティー用の料理作りを一緒にする約束はしてたんだよね。だからヘアメイクはついでって感じかなぁ」
「静華にとっては、夏実に料理を教えるだけに過ぎなかった約束事が、急遽こんな形になってしまったと……そういう事か」
どうやら、今日うちに来るのは以前からの約束事で、それが急遽「仮装のヘアメイクも追加で」となったようだ。
「昨日もみなとっちが帰ってくる前にここに来て、届いた衣装をなつこちゃんとチェックして……んで、ちゃんと必要なものを揃えて持ってきたの。メイクボックスとか、後はなつこちゃんに貸せそうなものとか」
「そうだったのか……それはすまない。
静華忙しいのに色々苦労かけたんだな」
メイクされながらだから顔を動かす事が出来ないものの、言葉で静華に礼を言った。
いくら女子高生からのお願いとはいえ、夏実の急な要望に静華は「ふとん屋の優しいお姉さん」以上の事をしてくれているのだから。
まして、この2人の関係は俺にとっての「元カノと今カノ」であって、特に夏実は嫉妬の対象であるのだから。
「なーに言ってんの。なつこちゃんにお願いされたら動くのは当たり前でしょ? だって私となつこちゃんは『お友達』なんだから」
だからこそ、静華の言い放ったセリフに俺は両目を見開かせた。
「カラコン入れるのは最後なんだから目を見開くのはまだだってば!」
「カラコンの為に目ぇ開いたんじゃねぇよ」
「じゃなんでわざわざ目を見開くの? 私となつこちゃんが友達関係でいるのがそんなに変な事?」
「変……じゃないのか? 俺が言うのもなんだけど、静華と俺は昔付き合ってたんだし。そもそも夏実が一番その点で気にしてるだろうから」
落ち着いたトーンの声でいる静華の様子に、自分の感覚の方がおかしいのか?と錯覚し始め、段々と口ごもっていく。
「文化祭の時はそうだったかもしれないけど、でも今はお互い『お友達』な雰囲気で接してるのよ。元カノとか今カノとかの意識はほとんど無いかなぁ」
静華は整髪料を俺の前髪に着けながらそう言い、櫛で全て後方へと持っていって額を全開にした。
「本当かよ、それ」
「なつこちゃんから聞いてない? 私の話」
「いつだったか俺の為に桃の缶チューハイとノンアルビールを買ってくれた話は知ってるよ。
けど、具体的に夏実と静華がどの程度仲が良いのかなんて立場的に訊けるわけないだろ?
夏実からは時々静華の話は聞いてたけど、それはあくまでふとん屋のお姉さん的存在での話題であって友達の話をする感覚だったかどうかまでは……」
文化祭の日にあれだけ静華に対して敵意を剥き出しにして嫉妬していたのだから、俺から静華の話題を夏実にふるなんて常識的に有り得ない。そんな事する男は真の馬鹿者だろう。
そんな夏実だって、静華の話題を出す時があるものの茉莉や滉の事を俺に話してくるようなテンションでは語ってこない。
「そっかー……でも実際は仲良い方だと思うよ、私達。今まで以上に喋るようになったし、みなとっちの帰りが遅い時は私もなつこちゃんの夕食作りを手伝うから」
「は? 夕食作り?」
(料理作りの約束は今日だけの話ではないだと?!)
「みなとっちって、いつも仕事終わったらなつこちゃんに帰宅時間のメール入れるでしょ? なつこちゃんは18時までバイトしてるからさぁ、その段階でメール入れて来ない日に夕食作りを手伝ってるんだよ」
「手伝ってるって……お前んとこの閉店時間もっと遅かっただろうが。
定時に帰れないっつっても閑散期だから19時過ぎには大体帰ってくるし」
確か長屋ふとん店の閉店時間は19時だった筈だ。
焼肉一緒に食いに行った日だって20時まで店に居たんだし、18時台にわざわざ店を中座してまで夏実の料理を手伝うなんて有り得ないだろうと思って言い返すと
「だって閉店時間、今月から18時半に変更したんだもの」
と、なんとも都合の良い返答が静華の口から出てきた。
何が一番不思議かというと、静華が至近距離で俺の顔を真剣にメイクしているその様子だ。
目の前の女は生稲静華ではないと頭で理解するつもりでいるのにどうしても気持ちの何処かで引っかかり、それは大きな違和感を持つ。
「あのさ……俺が帰ってくる前までに夏実にもこうやってメイクしてやったの?」
また静華に見下されながら「当たり前だ」と言われるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしつつ、素直に疑問をぶつけてみた。
「そうだけど? だって一昨日くらいになつこちゃんからお願いされちゃったんだもん」
「お願いって、仮装のメイク?」
「まぁ……仮装云々の前から、なつこちゃんとハロウィンパーティー用の料理作りを一緒にする約束はしてたんだよね。だからヘアメイクはついでって感じかなぁ」
「静華にとっては、夏実に料理を教えるだけに過ぎなかった約束事が、急遽こんな形になってしまったと……そういう事か」
どうやら、今日うちに来るのは以前からの約束事で、それが急遽「仮装のヘアメイクも追加で」となったようだ。
「昨日もみなとっちが帰ってくる前にここに来て、届いた衣装をなつこちゃんとチェックして……んで、ちゃんと必要なものを揃えて持ってきたの。メイクボックスとか、後はなつこちゃんに貸せそうなものとか」
「そうだったのか……それはすまない。
静華忙しいのに色々苦労かけたんだな」
メイクされながらだから顔を動かす事が出来ないものの、言葉で静華に礼を言った。
いくら女子高生からのお願いとはいえ、夏実の急な要望に静華は「ふとん屋の優しいお姉さん」以上の事をしてくれているのだから。
まして、この2人の関係は俺にとっての「元カノと今カノ」であって、特に夏実は嫉妬の対象であるのだから。
「なーに言ってんの。なつこちゃんにお願いされたら動くのは当たり前でしょ? だって私となつこちゃんは『お友達』なんだから」
だからこそ、静華の言い放ったセリフに俺は両目を見開かせた。
「カラコン入れるのは最後なんだから目を見開くのはまだだってば!」
「カラコンの為に目ぇ開いたんじゃねぇよ」
「じゃなんでわざわざ目を見開くの? 私となつこちゃんが友達関係でいるのがそんなに変な事?」
「変……じゃないのか? 俺が言うのもなんだけど、静華と俺は昔付き合ってたんだし。そもそも夏実が一番その点で気にしてるだろうから」
落ち着いたトーンの声でいる静華の様子に、自分の感覚の方がおかしいのか?と錯覚し始め、段々と口ごもっていく。
「文化祭の時はそうだったかもしれないけど、でも今はお互い『お友達』な雰囲気で接してるのよ。元カノとか今カノとかの意識はほとんど無いかなぁ」
静華は整髪料を俺の前髪に着けながらそう言い、櫛で全て後方へと持っていって額を全開にした。
「本当かよ、それ」
「なつこちゃんから聞いてない? 私の話」
「いつだったか俺の為に桃の缶チューハイとノンアルビールを買ってくれた話は知ってるよ。
けど、具体的に夏実と静華がどの程度仲が良いのかなんて立場的に訊けるわけないだろ?
夏実からは時々静華の話は聞いてたけど、それはあくまでふとん屋のお姉さん的存在での話題であって友達の話をする感覚だったかどうかまでは……」
文化祭の日にあれだけ静華に対して敵意を剥き出しにして嫉妬していたのだから、俺から静華の話題を夏実にふるなんて常識的に有り得ない。そんな事する男は真の馬鹿者だろう。
そんな夏実だって、静華の話題を出す時があるものの茉莉や滉の事を俺に話してくるようなテンションでは語ってこない。
「そっかー……でも実際は仲良い方だと思うよ、私達。今まで以上に喋るようになったし、みなとっちの帰りが遅い時は私もなつこちゃんの夕食作りを手伝うから」
「は? 夕食作り?」
(料理作りの約束は今日だけの話ではないだと?!)
「みなとっちって、いつも仕事終わったらなつこちゃんに帰宅時間のメール入れるでしょ? なつこちゃんは18時までバイトしてるからさぁ、その段階でメール入れて来ない日に夕食作りを手伝ってるんだよ」
「手伝ってるって……お前んとこの閉店時間もっと遅かっただろうが。
定時に帰れないっつっても閑散期だから19時過ぎには大体帰ってくるし」
確か長屋ふとん店の閉店時間は19時だった筈だ。
焼肉一緒に食いに行った日だって20時まで店に居たんだし、18時台にわざわざ店を中座してまで夏実の料理を手伝うなんて有り得ないだろうと思って言い返すと
「だって閉店時間、今月から18時半に変更したんだもの」
と、なんとも都合の良い返答が静華の口から出てきた。
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