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彼女と俺の可愛い甘え
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しおりを挟む「えっ……」
気が付いたら翌朝で、俺は見知らぬ場所で蛍光イエローの奇抜デザインTシャツを身に付けて敷布団に寝転んでいた。
ガバッ!!!!
「ここは……」
上半身を起こして周囲を見渡す。
(築年数の浅くて、お洒落な小物が点在する広いリビング……それから)
「おっ! 早起きだね広瀬~!! おっはよー!! 頭痛くない? 今ユウちゃんが冷え冷えの豆乳味噌汁仕込んでるんだけど飲めそう?あったかい飲み物の方がいい?」
(茶髪のふわふわ髪と、キンキンするようなデカいミドルトーン……って!!)
「ジュン先輩??!」
こちらにひょっこり顔を出してきた声の主により、ここが誰の家なのかようやく把握出来た。
(会社近くのマンションだ……そしてここはジュン先輩と遠野夕紀さんのお宅!!!!)
正確には遠野夕紀さんではなく、珈琲店マスター穂高夕紀さんなのだが……そんな事はこの際どうでもいい。
(なんで??! なんで俺、ジュン先輩夫婦のお宅にお邪魔してるんだ????)
「あっ!広瀬さんおはようございます」
リビングに敷かれていた布団をいそいそと三つ折りに畳み、隣のダイニングエリアに顔を出すと、朝6時前だというのに穂高夕紀さんが笑顔で朝の挨拶をしてくれる。
「……おはようございます」
「洗面台はあちらになります。ご自由にお使いくださいね」
「はぁ……」
「頭痛や吐き気などはありませんか? まだ残暑厳しい時期ですし、飲むならより栄養価の高いお味噌汁が良いかと思いまして用意してみました。 」
「……」
「それとも温かいものの方がお好みでしたか?」
そして、先程のジュン先輩と同じような質問を投げかけてきた。
「あ………いや、冷たいお味噌汁を……お願いします」
俺はボソボソとした声で返答し、洗面台へと向かう。
「歯ブラシとかどうしよ……って、あった」
洗面台を見ると、真新しい歯ブラシセットが置かれており、「ご自由ににお使いくださいませ」と手書きの付箋が貼り付けられていて
「うおっ! ……スーツ?!」
背後を振り向けば上品そうな上下のスーツがハンガーにご丁寧に掛けられていて驚愕する。
(このスーツは誰のなんだろう?ジュン先輩の? いや……あの人いつも細身のタイプのを着てるから違う…………となると)
「ああ、そのスーツは亮輔くんのだよ~! 昨日俺が取りに行ったの!
広瀬は昨夜電車乗って帰れる雰囲気じゃなかったし、社内行事とはいえ広瀬は酒やらなんやら強い匂いのスーツを連チャンで着ると気分悪くなるかなーなんて思ってさ。亮輔くんのスーツの中で1番上等なヤツ借りてきちゃった♪」
「うわっ!!」
突然俺の隣に現れたジュン先輩によって全てを説明してもらう事となった。
「……広瀬的に後輩のスーツを借りるのってNGだった? ちなみにそのTシャツとハーフパンツも、買ったはいいものの着る機会なくて誰も一度も着てないヤツなんだけど」
「あ……いや……別にNGというわけでは」
「なら良かった♪」
他人の衣服を急遽借りる件がNGでない事を確認出来た先輩はホッと胸を撫で下ろす仕草をすると、洗面台からサッと居なくなってしまった。
(び……ックリ、した………)
ジュン先輩の乱入には会社で慣れているものの、自宅でも「こう」なんだと知り驚く。
(ビックリはしたけど、用意に無駄がなく素晴らしい……)
なんたってここは「伝説の事務員」と「社内一有能な営業マン」が暮らす家。
付箋での情報伝達、部屋着貸与に対するさり気ない心遣い、そして俺の状況を察知して急いで車を走らせスーツ一式を手配するフットワークの軽さに脱帽した。
「歯磨きセット、ありがとうございます。えっと……向こうで着替えてきます」
俺はスーツをハンガーごと両手に抱え、リビングとの中間地点に居る夕紀さんにそう声を掛けると
「まだ時間はありますから、ゆっくりお着替えしてらして下さいね」
と、ニコニコスマイルで返されてしまった。
「あ……いえ、こちらこそすみません」
夕紀さんから立ち登る出汁の香りは上品で、珈琲とは違う魅力があり俺の腹の虫もグルグルと鳴る。
(ああ言われたけど、急いで着替えてこよう……)
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