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俺と彼女と可愛い甘え
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俺の直属の後輩である森田さんも、尊敬している先輩の一人である狭山さんも、これ以上容姿しか褒めるところがないような女の口で汚して欲しくない……そう強く思った俺は、黙って席を立つと
「ちょっと向かいの卓に戻って飲み物取ってくる」
一言それだけを言い、原田さん達がまだ居るであろう先程の卓へと戻った。
廊下に出るとちょうどそこに店員が通りすがったので、何でもいいから新しいグラスを2つ貰えないかと伝え、すぐにそれを受け取り……
「原田さん、そこに残ってる瓶はもらっていいんですよね?」
卓に戻るなり俺が手にした瓶を見て、原田さんも他のベテラン事務員方も目を丸くして驚いていた。
「私達はお酒飲む雰囲気じゃなくなってるから別にいいけど……」
「っていうか、広瀬くんそれ飲むつもり? 正気??」
「広瀬さんお酒飲めないですよね? 鏑木さんに挑発されました?」
口々に「辞めた方がいい」と、先輩方は俺を止めるが
「今まで飲まなかっただけで、体質的に全く飲めない訳じゃないんで大丈夫です」
このイライラした気持ちをどうにかするのはやはりこの方法しかない……と、10年前の出来事とほぼ同じ事を頭の中で思い発言する。
俺はアルコール耐性が弱い……つまりは、少量のアルコールでも酔いやすいのだという自覚をしている。
だが遺伝的にアルコールを摂取しても分解出来ないような体質持ちでない事も知っている。
10年前、行きたくもない合コンに参加して鏑木さんと同じような容姿しか褒めようのないクソみたいな女を相手しなければならず……しかもその女から「酒を飲まないなんて意気地が無い」とまで言われ頭に来た俺はビールジョッキを一気に飲み干して空にした事があった。
それが俺にとって人生初めての飲酒で、翌朝自分のした行動を後悔し二度と飲むまいと当時思ったし、ついさっきまでそれを貫くつもりでいた。
俺は再び鏑木さんの向かいに座ると持っていたグラスを鏑木さんと俺の目の前に置き……続いて残量半分ほどの日本酒の四合瓶を、2つのグラス中間の位置にドンッと置いた。
「広瀬さん、お酒飲めないって聞きましたけど?」
鏑木さんは俺の行動が意外であると少し驚いたものの、すぐに睨み顔へと変化させる。
「聞いたって誰から? もしかして彼氏?」
「そうですけど」
案外あっさりと矢野橋からであるとバラしてきたから思わずフッと笑ってしまい、鏑木さんの睨み顔が更に険しくなる。
「鏑木さんの彼氏さぁ、昔付き合ってた彼女がアルコールに弱いの知ってて無理矢理酒飲ませた事あるらしいよ。最低だと思わない?」
俺は鏑木さんのそんな表情に大したリアクションを見せず、野崎さんから聞いた矢野橋の最低エピソードを目の前の今カノに話しながら瓶を傾けてグラスにドボドボと中身の日本酒を注ぎ入れていく。
「……営業は取引先と飲む機会が多いので、矢野橋さんも彼女にお酒飲めるようになってもらいたくて耐性つけようとしたんじゃないですかぁ?」
鏑木さんの側のグラス半分まで日本酒を注いだところで、鏑木さんは俺の手から瓶を奪い取って俺の目の前のグラスすり切り一杯まで注ぎ、かなり馬鹿にしたような言い方で俺を挑発してきた。
「耐性……ね」
「そうです。広瀬さんは入社してから今まで飲酒断ってきたんですよね? 『アルコール耐性が弱い』って。森田さんは体真っ赤になって吐いちゃったみたいですけど、広瀬さんも普段から鍛えておいた方がいいんじゃないんですか? 私が鍛えてあげますよ?」
鏑木さんは俺を森田さんと同じ体質であると決めつけて、さらにそんな事を言った。
谷川さんが二度見するくらい、森田さんや俺が酒を飲まない事に対して馬鹿にした表情……俺の視界に入る女の目つきや言動はまさにそんな感じだ。
「鏑木さんが鍛えてくれるんだ……へぇ…………」
「手始めにそのグラスの中身、飲み干しちゃって下さいよ。出来るんですか? アルコール耐性の弱い人が」
彼女の脳内の俺は、この後全身真っ赤になって情けなく嘔吐する姿にでもなっているのだろうか?
「そもそも俺がこの瓶持ってきたんだから、責任持って飲むよ」
(この女、本当に馬鹿だなぁ……。)
俺はそんな事を思いながら酒で満たされたグラスに口をつけると、そのまま一気に飲み干した。
「ちょっと向かいの卓に戻って飲み物取ってくる」
一言それだけを言い、原田さん達がまだ居るであろう先程の卓へと戻った。
廊下に出るとちょうどそこに店員が通りすがったので、何でもいいから新しいグラスを2つ貰えないかと伝え、すぐにそれを受け取り……
「原田さん、そこに残ってる瓶はもらっていいんですよね?」
卓に戻るなり俺が手にした瓶を見て、原田さんも他のベテラン事務員方も目を丸くして驚いていた。
「私達はお酒飲む雰囲気じゃなくなってるから別にいいけど……」
「っていうか、広瀬くんそれ飲むつもり? 正気??」
「広瀬さんお酒飲めないですよね? 鏑木さんに挑発されました?」
口々に「辞めた方がいい」と、先輩方は俺を止めるが
「今まで飲まなかっただけで、体質的に全く飲めない訳じゃないんで大丈夫です」
このイライラした気持ちをどうにかするのはやはりこの方法しかない……と、10年前の出来事とほぼ同じ事を頭の中で思い発言する。
俺はアルコール耐性が弱い……つまりは、少量のアルコールでも酔いやすいのだという自覚をしている。
だが遺伝的にアルコールを摂取しても分解出来ないような体質持ちでない事も知っている。
10年前、行きたくもない合コンに参加して鏑木さんと同じような容姿しか褒めようのないクソみたいな女を相手しなければならず……しかもその女から「酒を飲まないなんて意気地が無い」とまで言われ頭に来た俺はビールジョッキを一気に飲み干して空にした事があった。
それが俺にとって人生初めての飲酒で、翌朝自分のした行動を後悔し二度と飲むまいと当時思ったし、ついさっきまでそれを貫くつもりでいた。
俺は再び鏑木さんの向かいに座ると持っていたグラスを鏑木さんと俺の目の前に置き……続いて残量半分ほどの日本酒の四合瓶を、2つのグラス中間の位置にドンッと置いた。
「広瀬さん、お酒飲めないって聞きましたけど?」
鏑木さんは俺の行動が意外であると少し驚いたものの、すぐに睨み顔へと変化させる。
「聞いたって誰から? もしかして彼氏?」
「そうですけど」
案外あっさりと矢野橋からであるとバラしてきたから思わずフッと笑ってしまい、鏑木さんの睨み顔が更に険しくなる。
「鏑木さんの彼氏さぁ、昔付き合ってた彼女がアルコールに弱いの知ってて無理矢理酒飲ませた事あるらしいよ。最低だと思わない?」
俺は鏑木さんのそんな表情に大したリアクションを見せず、野崎さんから聞いた矢野橋の最低エピソードを目の前の今カノに話しながら瓶を傾けてグラスにドボドボと中身の日本酒を注ぎ入れていく。
「……営業は取引先と飲む機会が多いので、矢野橋さんも彼女にお酒飲めるようになってもらいたくて耐性つけようとしたんじゃないですかぁ?」
鏑木さんの側のグラス半分まで日本酒を注いだところで、鏑木さんは俺の手から瓶を奪い取って俺の目の前のグラスすり切り一杯まで注ぎ、かなり馬鹿にしたような言い方で俺を挑発してきた。
「耐性……ね」
「そうです。広瀬さんは入社してから今まで飲酒断ってきたんですよね? 『アルコール耐性が弱い』って。森田さんは体真っ赤になって吐いちゃったみたいですけど、広瀬さんも普段から鍛えておいた方がいいんじゃないんですか? 私が鍛えてあげますよ?」
鏑木さんは俺を森田さんと同じ体質であると決めつけて、さらにそんな事を言った。
谷川さんが二度見するくらい、森田さんや俺が酒を飲まない事に対して馬鹿にした表情……俺の視界に入る女の目つきや言動はまさにそんな感じだ。
「鏑木さんが鍛えてくれるんだ……へぇ…………」
「手始めにそのグラスの中身、飲み干しちゃって下さいよ。出来るんですか? アルコール耐性の弱い人が」
彼女の脳内の俺は、この後全身真っ赤になって情けなく嘔吐する姿にでもなっているのだろうか?
「そもそも俺がこの瓶持ってきたんだから、責任持って飲むよ」
(この女、本当に馬鹿だなぁ……。)
俺はそんな事を思いながら酒で満たされたグラスに口をつけると、そのまま一気に飲み干した。
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