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俺と彼女と可愛い甘え
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「お飲み物おまたせしましたー!向こうの席はもう始めちゃってる感じなんで、こっちもガンガン楽しんでくださいねー♪」
注文したボトルやグラス、水割りのセットを軽々運んできた例の男性店員が、持ってきたものをテーブルに素早く配り小声で
「稟ちゃんの手料理って美味しいんですよー皆さんご存知ですかー?」
と一つ暴露したのが少し面白く、他の食べ物を注文しようとした俺の手元が震える。
この店員、滉とそっくりなようで中身はかなり違うようだ。単に明るいと言っても夏実や茉莉に向ける滉の様子とはやはり違っていた。
雰囲気的に野崎さんの彼氏だと確定した店員「ともき」に食べ物のオーダーを通したら、俺と野崎さんとで急いで焼酎の水割り4杯分を作り乾杯の準備をする。
野崎さんが水割りのグラスを手渡しする間に冷酒も注いでいこうとしたら先輩事務員方に「こっちで酌し合うからいいよ」と言われてしまった。
よく見たら最初に座っていた並びと異なり、今は焼酎を飲むグループと日本酒を飲むグループとできっちり分かれて席を座り直していて「水割りも私達で作るから」と水割りセットまで奪われてしまう。
「野崎ちゃんは冷酒でしょ? 注いであげる」
原田さんが野崎さんに冷酒用の徳利を近付けたら
「あっ……ですが今日は研修と言いましてもこの会は営業事務の皆様に楽しんでいただく為のものですので」
野崎さんは一旦両掌をを原田さんに向けて酌を遠慮しようとした。
酒を一滴も飲まない俺はこういうルールをよく知らないのだが、いくらこちらがホスト側とはいえ酌を遠慮したり断るのはちょっと失礼なのでは?と、俺は即座にそう思ったのだが酒の場に慣れてない所為でこういう時野崎さん原田さんにどういう言い回しをすれば良いのが分からない。
「大丈夫大丈夫! さっきの野崎ちゃんの可愛い顔見れて私達充分楽しんでるし♪ 野崎ちゃんも飲んじゃお飲んじゃお!」
俺のそんな戸惑いを跳ね返すように、原田さんは嫌な表情一つせず、笑顔で野崎さんのその手をお猪口に向けると
「はい野崎ちゃんその手をちょっと上にあげてー
じゃあ皆さん1日目の研修お疲れ様でしたー!! かんぱーい!!」
野崎さんのお猪口に冷酒が注がれるや否や、俺が言うべき乾杯の音頭を原田さんがそのまましてしまった。
「かんぱーい!!」
「かっ……乾杯」
(原田さんのご配慮は有り難いのだが、逢坂部長がこの場に居たら怒られやしないだろうか?)
後輩に酒のなんとかも軽く注意も出来ず、乾杯という決めるべきところを決められず……自分的になんとも情けない飲み会スタートとなってしまった。
「ところで広瀬くん、噂の彼女とはどんな感じなの? 引っ越ししたし、かなり順調なんだよねぇ?」
乾杯から数分後、原田さんが上目遣いで俺を見つめながら急な質問を投げかけてきた。
「えっ!? ……あっ、まぁ…………」
「何故にそんな質問を俺に?」と疑問に思ったが、乾杯前の野崎さんのアレであれ以上恋愛の突っ込んだ話をするのは野暮だと7人のベテラン事務員方はそう御判断されたのだろう。
だとすると、恋愛話の標的は俺に向いてしまうのは当然となる。
「前回の研修の時は広瀬くんの彼女が高校生って衝撃が大き過ぎで聞きたいことも聞けなかったしー、社員旅行もなかなか行けない私達じゃこういう機会でしか広瀬くんの楽しい話聞けないワケよ」
「あー……そりゃ、そうですよね………」
先程の野崎さんへのぶっ込み質問もそうであったように、原田さんは一際「社員の恋バナ」というものに興味がある人だ。
2年前俺と夏実が付き合っているのが会社にバレた直後に行われた前回の研修でも彼女が一番俺と話をしたい雰囲気の目線を遠く離れた席から送っており、「今回ようやくその話が出来る」と原田さんは心待ちにしていたのだと思われる。
「で、どうなの? 高校生と付き合って結婚の約束までするって」
「いや、どうなのと仰られても……なんと言いますか…………」
嫌悪感を抱かれたり気持ち悪がられるより原田さんのように好意的な興味を持たれる方が気分的には楽だし、質問を投げかけられたらなるべく正直に返答した方が双方の都合が良いのも分かっている。
けれども「どうなの?」と実際問われたら大して気の利いた話なんか一切出来ないんだなと実感した。
注文したボトルやグラス、水割りのセットを軽々運んできた例の男性店員が、持ってきたものをテーブルに素早く配り小声で
「稟ちゃんの手料理って美味しいんですよー皆さんご存知ですかー?」
と一つ暴露したのが少し面白く、他の食べ物を注文しようとした俺の手元が震える。
この店員、滉とそっくりなようで中身はかなり違うようだ。単に明るいと言っても夏実や茉莉に向ける滉の様子とはやはり違っていた。
雰囲気的に野崎さんの彼氏だと確定した店員「ともき」に食べ物のオーダーを通したら、俺と野崎さんとで急いで焼酎の水割り4杯分を作り乾杯の準備をする。
野崎さんが水割りのグラスを手渡しする間に冷酒も注いでいこうとしたら先輩事務員方に「こっちで酌し合うからいいよ」と言われてしまった。
よく見たら最初に座っていた並びと異なり、今は焼酎を飲むグループと日本酒を飲むグループとできっちり分かれて席を座り直していて「水割りも私達で作るから」と水割りセットまで奪われてしまう。
「野崎ちゃんは冷酒でしょ? 注いであげる」
原田さんが野崎さんに冷酒用の徳利を近付けたら
「あっ……ですが今日は研修と言いましてもこの会は営業事務の皆様に楽しんでいただく為のものですので」
野崎さんは一旦両掌をを原田さんに向けて酌を遠慮しようとした。
酒を一滴も飲まない俺はこういうルールをよく知らないのだが、いくらこちらがホスト側とはいえ酌を遠慮したり断るのはちょっと失礼なのでは?と、俺は即座にそう思ったのだが酒の場に慣れてない所為でこういう時野崎さん原田さんにどういう言い回しをすれば良いのが分からない。
「大丈夫大丈夫! さっきの野崎ちゃんの可愛い顔見れて私達充分楽しんでるし♪ 野崎ちゃんも飲んじゃお飲んじゃお!」
俺のそんな戸惑いを跳ね返すように、原田さんは嫌な表情一つせず、笑顔で野崎さんのその手をお猪口に向けると
「はい野崎ちゃんその手をちょっと上にあげてー
じゃあ皆さん1日目の研修お疲れ様でしたー!! かんぱーい!!」
野崎さんのお猪口に冷酒が注がれるや否や、俺が言うべき乾杯の音頭を原田さんがそのまましてしまった。
「かんぱーい!!」
「かっ……乾杯」
(原田さんのご配慮は有り難いのだが、逢坂部長がこの場に居たら怒られやしないだろうか?)
後輩に酒のなんとかも軽く注意も出来ず、乾杯という決めるべきところを決められず……自分的になんとも情けない飲み会スタートとなってしまった。
「ところで広瀬くん、噂の彼女とはどんな感じなの? 引っ越ししたし、かなり順調なんだよねぇ?」
乾杯から数分後、原田さんが上目遣いで俺を見つめながら急な質問を投げかけてきた。
「えっ!? ……あっ、まぁ…………」
「何故にそんな質問を俺に?」と疑問に思ったが、乾杯前の野崎さんのアレであれ以上恋愛の突っ込んだ話をするのは野暮だと7人のベテラン事務員方はそう御判断されたのだろう。
だとすると、恋愛話の標的は俺に向いてしまうのは当然となる。
「前回の研修の時は広瀬くんの彼女が高校生って衝撃が大き過ぎで聞きたいことも聞けなかったしー、社員旅行もなかなか行けない私達じゃこういう機会でしか広瀬くんの楽しい話聞けないワケよ」
「あー……そりゃ、そうですよね………」
先程の野崎さんへのぶっ込み質問もそうであったように、原田さんは一際「社員の恋バナ」というものに興味がある人だ。
2年前俺と夏実が付き合っているのが会社にバレた直後に行われた前回の研修でも彼女が一番俺と話をしたい雰囲気の目線を遠く離れた席から送っており、「今回ようやくその話が出来る」と原田さんは心待ちにしていたのだと思われる。
「で、どうなの? 高校生と付き合って結婚の約束までするって」
「いや、どうなのと仰られても……なんと言いますか…………」
嫌悪感を抱かれたり気持ち悪がられるより原田さんのように好意的な興味を持たれる方が気分的には楽だし、質問を投げかけられたらなるべく正直に返答した方が双方の都合が良いのも分かっている。
けれども「どうなの?」と実際問われたら大して気の利いた話なんか一切出来ないんだなと実感した。
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