【完結】彼女が18になった

チャフ

文字の大きさ
上 下
207 / 317
俺と彼女の可愛い悋気(りんき)

3

しおりを挟む


「そういえば今でも金券ってやってるんだっけ?」
「やってるっぽい。事前に理由なく滉の彼女から千円札抜き取られたから、多分金券に替えてくれてると思うんだが」

 教室棟の階段を上りながら静華に訊かれた事を淡々とした感じで返事すると、 

「何それ」

 とクスクス笑われる。

(いや、俺も正直思ったよ「何だそれ」って)

 俺がまだ文化祭の日程も何も聞かされてない頃に茉莉から「損させないから! 絶対損させないから!」と滉や夏実の居る前で千円札取られてその時は本当に意味が分からなかったのだが、数日前に夏実経由からメール画像で金券に換金した旨と茉莉のクラスの模擬店商品を確保しておく連絡が届いてようやくその意味を知った。

「滉の彼女のクラスへ行けば、金券とかき氷がゲット出来る筈」
「へー、模擬店かき氷やるんだ! ……って、今日暑い日だし時間も昼過ぎだし残ってんのかな?」
「そう、滉の彼女……茉莉まつりっていうんだけどアイツ信用ならない時あるからそれが心配でさぁ。金券だけ受け取って何も食えないとかあり得そうなんだよ」
「そうなったらすぐに他の模擬店行って金券消費しなきゃね」
「そういう事だな。もうこんな時間だから他の模擬店も商品残ってんのか怪しいけど」

 盆休みの勉強会で昼飯買いに行かせたら勝手に北海道フェア行って肉弁当を購入し、残りの金を自分の買い物の足しにするような女だ。「損させないから」の言葉を信用しようとすると痛い目に遭うことを俺は既に経験済みだ。
 何も食えない、買えないとなったら帰りに売店行って現金に戻しておくしかないだろう。


 茉莉のクラスに近付くと、静華はとびきり嬉しそうな表情になった。

「なつかしー! かき氷のクラスって、8組だったんだ! 私達も3年の時8組だったよね!」
「えっ? ……あぁ、そうだっけ?」

 かつての自分のクラスを忘れた訳ではないのだが、静華の目の輝きの所為でついそのような口をついてしまう。

「あっ! 看板もTシャツもパロってて可愛い♪」

 静華が嬉しそうな声をあげた3年8組の教室出入り口には、ハワイの有名かき氷店を担任の名前に差し替えたパロディ的店名がド派手に掲げられており、そこに貼り付けられたかき氷画像もやはりそれに寄せた感じの見た目をしている。

 だが、教室内を覗いてみるとメニュー欄の上から「売り切れ」の文字が貼り付けられていて、「悪い方の予想が当たってしまった」とガックリ来てしまった。

 静華も俺と同じように教室内を目でグルッと見回し、それから微笑み顔で俺の肩をポンッと叩く。

「懐かしの教室、じっくり見たかったけど仕方ないねー」
「茉莉呼んで金券だけ受け取るか……」

 今日は一日中真夏のように暑かったのだから、俺らの分を確保しておきたいと言っても無理な話だったのだろう。
 片付け作業に入っている生徒の中から背の低い茉莉を探そうとしたその時、かき氷店のパロディTシャツ姿の女子生徒がこっちにパタパタと小走りに近付いてきた。

「すみません! 今ちょうど売り切れになってしまったんです」

 教室出入り口でボーっと立っている長身の大人2人がよっぽど邪魔だったのだろう、説明なくとも理解できる状況をわざわざ言いに来てくれたようだ。

「……そうみたいなんで、西里茉莉にしざとまつり呼んでいただけますか?彼女に用があるんで」

 俺も俺で、この位置から身長150センチ未満の茉莉を探すのに限界があったから女子生徒に呼んでもらった方が早いんじゃないかと考えを切り替えた。

 女子生徒は俺の要求に一瞬「えっ」と小声で俺らを交互に見てからすぐ後ろに振り向いて……

「西里さーん!! なんかぁ、から呼ばれてるよー!」

 と、大声で呼び掛ける。

「「??!!」」

 それに対し、俺も静華も驚いて互いの顔を見合わせたのは言うまでもない。
 尚且なおかつその所為で片付け作業中の生徒全員が俺らの方へ視線を集中させてきて一気に恥ずかしくなってしまった。

「えっ? ご夫婦って、誰と誰?」

 かき氷器を置いた作業台周辺で何やら話をしていた女子生徒の集団の中から耳慣れた声がして、その中から茉莉がひょっこりと姿を現わす。
 そして茉莉の目が俺を捉えた瞬間お腹を抱えて笑いだし、「おいでおいで」のハンドサインをしてきた。

「何?」
「どしたの西里さん?」

 周囲も不思議そうにその様子に首を傾げる中、茉莉だけが爆笑していて、ヒーヒー引き笑いをしながら

じゃないよー! 私が予約って言っといた『』だよ!」

 と、生徒達に俺と静華の説明をする。

「えええ!? あの人達が?」
「おっさんじゃないし! イケメンだし!」
「じゃあ、ふとん屋さんってあのお姉さんの事?!」
「お姉さん超美人なんだけど!!」

 俺も静華も全く状況が掴めないまま、高校生に勝手に笑われたり勝手に驚かれたりしている事実にたじろいでしまうが、俺らをご夫婦呼びした女子生徒が

「えっと……中に入って下さい」

 と教室内に招き入れた。

「本当に入っていいの?」
「さぁ? かき氷の確保はしてたっぽいけど」

 俺らも首を傾げたが、女子生徒にまだ残してあった席に案内され言われるがままに着席する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...