【完結】彼女が18になった

チャフ

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俺と彼女の可愛い主張

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「いや、俺なんかよりも夏実に声かけてやって下さい。あいつ昼飯も食べずに店番してたんで……」
「ああそうか! そりゃいけない!! いや~今日から9月だっていうのにまだまだ注文も修理も舞い込んでしまって」
「残暑厳しいですもんね」
「特にうちなんか今月は日曜日も営業するんです。夏の特需が無くたって向こうのショッピングモールに負けじと店開けてるところも今年は多いなって感じるよ。暑くて天気良いとみんな外出たくなるのかなぁ。だからこっちもそれ受けて臨時で店開ける。商売気質ってやつですよ」
「そんな中、来週も再来週も日曜日に夏実に休み下さってありがとうございます」

 忙しそうにしている店主に対し、夏実にきちんと休みを与えてくれる事に感謝すると

「あー、いいのいいの! なつこちゃんは本当に良い子でうちには勿体ないくらいだしさぁ、今度文化祭もあるでしょう? 大学受験しないからといって『なつこちゃんに休みやらねぇ』っていうのは気の毒だもの。
 ああいういい子を間近で見てるとさぁ、稟や滉の時間を親の所為で奪い過ぎてたって反省するんだよね。ちゃんとしたバイト代も出さずに娘息子を酷使してたって状況を気付かせてくれただけでも有り難いもんですよ」

 汗を拭きながら俺に苦笑いしていた。

「俺はなんと言うべきか……」
「広瀬さんは観に行くんでしょ? 文化祭」
「それはまぁ」
「広瀬さんは良い人だから毎年なつこちゃんの頑張りを見てやってるんだろうなぁ。彼氏だもんねぇ」
「……」
「こんな言い方するのも申し訳ないんだけど、今年はなつこちゃんだけでなく滉の事も見てやって下さい。親の代わりに」
「ええ、それは勿論」

 そしてその野崎父の言葉に俺の胸は痛んだ。

(彼氏だもんねぇ……か。去年も一昨年もちゃんと観に行ってやれば良かった……本当に)

「そういえば広瀬さん、なんでここに立って『長屋ふとん店』のエプロンしてるんです? 静華さんは?」

 不思議そうに帆布エプロンを指差し店の奥を覗き込もうとする野崎父に、俺は慌てて

「あぁ! なんか……静華さんここの店の人がなんか辛そうにしてたんで休憩してもらおうと思って! だから俺が代わりに店番してるんです多分もうすぐ帰ってくると思うんで、気にしないで下さい。
 本当に……夏実を呼びに行ってやって下さい」

 と両手のひらを店主に向け、意識も同様に夏実の方へと向けさせた。
 自分でも何を喋ってるんだとツッコミを入れたいくらい変な言い訳だったと自覚する。野崎父もやはり不思議そうな表情で俺をチラ見したがすぐに

「ああ、お腹空いてるんだったよねなつこちゃん。こりゃいけないっ!!」

 と、一応疑惑の念をおさめてくれ、自分の店へと戻っていった。

(はあぁぁ……ヤバいヤバい。流石は滉の父親だ、絶対俺が静華に浮気かなんかしてんじゃないかと怪しんでただろ)

 野崎父は俺と夏実の関係を把握しているが、息子の親友の相手が12歳上の俺なもんだから「女子高生から未亡人美女へと心が移ろいでいるのかもしれない」と勘違いしたかもしれない……勿論そんなの状況的にあり得ないし、俺の間違った深読みであって欲しいのだが。



「湊人おまたせー!!」
「ごめんみなとっち!! アイス買ってきたからなつこちゃんと食べて!」

 偶然にも、夏実が電器店から元気よく出てくるのと、煙草休憩から静華が帰ってきたのが同時で

「おぅ、お疲れ」

 俺は結んでいたエプロンの紐を引っ張りながら、駆け寄る2人にそう声を掛けたのだった。


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