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俺と彼女の可愛い主張
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「まぁ……夏実が『お姉さんに世話になった』っていうんだから、買うのが筋ってもんだろう?」
「みなとっちはそういう面でも昔から優しいよね。そういうところ、私は好きだったなぁ~」
「それは……どうも。じゃあ、それ踏まえて俺からも質問する。夏実に『その年上彼氏は元彼だ』って、黙ってるの何で?」
実際黙っててくれたのは俺としても有り難いのだが、今静華の口から「好きだった」のフレーズを耳にしたからこそ、なんとなくそこが気になってしまった。
静華は空になったグラスを片手でギュッと強く掴むも、顔は昔の笑い顔を俺に向けながら
「だーって、そんな服装してるんだもん」
と、その言葉にあわせてもう一方の手で自分の首や鎖骨をなぞってみせた。
「!!」
俺はそれが何を意味したのかを察して、同様に俺も首に手を置く。
「唇のキスはしなかったけどさ、みなとっちって私と付き合うずっと前から首と足首にキスマークつけられるの大好きだったでしょ? 私もほぼ毎日付けてたもんねー♪
みなとっちが不機嫌な顔しながら誰も居ない教室とかで『いっぱい噛んで』って私に迫ってきたの……今でも記憶に残ってるから」
「……」
週末の22時前。
都心はどうか知らないがベッドタウンの駅前というのはこの時間帯になると人通りが疎らになっていく。ファミレス内も例に漏れず客も疎らだ。寧ろ今の俺らみたいに何かしらの時間潰しを理由にしているのか喫煙席でゆったりと煙を燻らす成人の方が割合を多く占め、禁煙席なんて広いスペースにポツリポツリと人影が存在するだけ。
そんな中、高校時代に付き合っていた元カノに笑われながら俺の性癖を淡々と述べられるのは一種の辱しめ行為だと感じて
「……」
俺は何も言えないまま、さも「そこに蚊が止まって血を吸われたのだ」というような仕草で首の根元と足首の二箇所を己の掌で隠した。
「見た目はもういい歳したおっさんって感じなのに、まだ可愛いところあるんだねぇみなとっち♪」
「からかうんじゃねぇよ、馬鹿が」
当時からそうであったが、やはり今でも俺はこの女に敵わないと感じ精神的な意味合いで屈してしまう。
「なつこちゃんも言ってたけど、みなとっちって首元とか足首が綺麗だから私もずっと前からそういう服着ればいいのにって思ってた」
「キスマークだらけの首や足を晒す馬鹿がどこに居るんだよ」
首と足首に置いた手を退けられないどころか、静華の顔すら今は見る事が出来ない。
それなのに静華の声は意地悪に俺を責め立てた。
「じゃあ今そうやってセクシーな鎖骨や足首丸出しにするのはなつこちゃんが望むから? それとも自分の性癖をなつこちゃんに明かせないから?」
「っう……」
「キスマークだらけのも良かったけど、ついてないのも良いもんね♪すっごく素敵」
(なんなんだよコイツ!! 12年振りに再会して早々、俺をどうしたいんだ!?)
「お前もう帰れよ。もう夏実達迎えに行かなきゃなんねぇ時間になったから」
辱しめの限界に達した俺は、その場から逃げるように席を立って会計のレシートを掴む。
「迎えの時間までまだもうちょっとあるじゃん。それにここは私が奢るからさぁ」
静華は俺の手首を掴んで制止させただけでなく、俺の手をこじ開けてレシートまで抜き取ってしまった。
「あっ」
「いじめてごめんねみなとっち。ドリンクくらいはちゃんと奢らせてよ、元カノのよしみでさぁ」
会計レジへと軽快に歩む静華に
「なんだよ元カノのよしみって」
と俺が言い返すと
「じゃあ元同級生の仲って事で♪」
静華は言葉を言い直してレジにポイントカードと千円札をキャッシュトレイの上に置く。
「ごちそうさん」
「こっちこそ焼肉ごちそうさま♪
ねぇねぇ、まだもうちょっと話しようよ」
「帰れ」と言ったのに、静華はゲーセンに向かう俺の背中を追いかけた。
「話す事なんてもうないだろ」
静華なんかと喋ってたら今以上の辱しめを受けるに違いない……と、早足になっても静華は負けじと同じスピードで付いてくる。
「もういじめたりしないからさぁ、だって私このまま帰ったら寂しいもん」
「うっ……」
静華の「寂しい」に俺の足はピタリと止まり、文字通り俺は「ぐぬぬ」となった。
寂しさを埋める為に煙草の本数を増やしていたような女なのだから、俺と付き合っている間その言葉にどれほどの拘束力を持っていたか……静華はちゃんと覚えているのだ。
仕方なしに俺は腕時計の長針が12を指すまでの5分間、ゲーセンの照明が足元に当たるくらいの位置に立って静華の言うことを聞くことにした。
「1つ質問していい?」
静華は俺の立ち止まった位置に不満を言う事なく、笑い顔を向けそう言ってくる。
「なんだよ」
静華から香る臭いの所為で、こっちは静華のような表情を作る事が出来ない……高校当時、周囲から口々に言われていた「不機嫌顔」かつ「偏頭痛」の状態で俺は静華の顔を見た。
その顔や口調は当時の俺を知らない者が見たら本当に機嫌の悪い中年男だと思うんだろう。しかしそれを「普段の俺」と認識している静華は平然とした様子でいる。
「みなとっちと付き合ってる間、煙草の本数減らしてたの……気付いてた?」
静華のその問いに対し、俺は頷く。
高2の春にあの会話を交わした手前、静華が実際本数を減らしていた努力に気付きつつも……俺はどう反応すれば良いのか分からず、敢えてそれには触れずに静華と接していた。
「もしかして……褒めてほしかったとか?」
思えば俺にはそういう配慮が足りなかったと当時を振り返り軽い反省を自分の中だけでしていると
「なんだかんだいって私も女だからね。普通の彼女らしく唇のキスをしたかったし、愛されてるって実感出来るセックスもしたかった」
と静華は語る。
「みなとっちはそういう面でも昔から優しいよね。そういうところ、私は好きだったなぁ~」
「それは……どうも。じゃあ、それ踏まえて俺からも質問する。夏実に『その年上彼氏は元彼だ』って、黙ってるの何で?」
実際黙っててくれたのは俺としても有り難いのだが、今静華の口から「好きだった」のフレーズを耳にしたからこそ、なんとなくそこが気になってしまった。
静華は空になったグラスを片手でギュッと強く掴むも、顔は昔の笑い顔を俺に向けながら
「だーって、そんな服装してるんだもん」
と、その言葉にあわせてもう一方の手で自分の首や鎖骨をなぞってみせた。
「!!」
俺はそれが何を意味したのかを察して、同様に俺も首に手を置く。
「唇のキスはしなかったけどさ、みなとっちって私と付き合うずっと前から首と足首にキスマークつけられるの大好きだったでしょ? 私もほぼ毎日付けてたもんねー♪
みなとっちが不機嫌な顔しながら誰も居ない教室とかで『いっぱい噛んで』って私に迫ってきたの……今でも記憶に残ってるから」
「……」
週末の22時前。
都心はどうか知らないがベッドタウンの駅前というのはこの時間帯になると人通りが疎らになっていく。ファミレス内も例に漏れず客も疎らだ。寧ろ今の俺らみたいに何かしらの時間潰しを理由にしているのか喫煙席でゆったりと煙を燻らす成人の方が割合を多く占め、禁煙席なんて広いスペースにポツリポツリと人影が存在するだけ。
そんな中、高校時代に付き合っていた元カノに笑われながら俺の性癖を淡々と述べられるのは一種の辱しめ行為だと感じて
「……」
俺は何も言えないまま、さも「そこに蚊が止まって血を吸われたのだ」というような仕草で首の根元と足首の二箇所を己の掌で隠した。
「見た目はもういい歳したおっさんって感じなのに、まだ可愛いところあるんだねぇみなとっち♪」
「からかうんじゃねぇよ、馬鹿が」
当時からそうであったが、やはり今でも俺はこの女に敵わないと感じ精神的な意味合いで屈してしまう。
「なつこちゃんも言ってたけど、みなとっちって首元とか足首が綺麗だから私もずっと前からそういう服着ればいいのにって思ってた」
「キスマークだらけの首や足を晒す馬鹿がどこに居るんだよ」
首と足首に置いた手を退けられないどころか、静華の顔すら今は見る事が出来ない。
それなのに静華の声は意地悪に俺を責め立てた。
「じゃあ今そうやってセクシーな鎖骨や足首丸出しにするのはなつこちゃんが望むから? それとも自分の性癖をなつこちゃんに明かせないから?」
「っう……」
「キスマークだらけのも良かったけど、ついてないのも良いもんね♪すっごく素敵」
(なんなんだよコイツ!! 12年振りに再会して早々、俺をどうしたいんだ!?)
「お前もう帰れよ。もう夏実達迎えに行かなきゃなんねぇ時間になったから」
辱しめの限界に達した俺は、その場から逃げるように席を立って会計のレシートを掴む。
「迎えの時間までまだもうちょっとあるじゃん。それにここは私が奢るからさぁ」
静華は俺の手首を掴んで制止させただけでなく、俺の手をこじ開けてレシートまで抜き取ってしまった。
「あっ」
「いじめてごめんねみなとっち。ドリンクくらいはちゃんと奢らせてよ、元カノのよしみでさぁ」
会計レジへと軽快に歩む静華に
「なんだよ元カノのよしみって」
と俺が言い返すと
「じゃあ元同級生の仲って事で♪」
静華は言葉を言い直してレジにポイントカードと千円札をキャッシュトレイの上に置く。
「ごちそうさん」
「こっちこそ焼肉ごちそうさま♪
ねぇねぇ、まだもうちょっと話しようよ」
「帰れ」と言ったのに、静華はゲーセンに向かう俺の背中を追いかけた。
「話す事なんてもうないだろ」
静華なんかと喋ってたら今以上の辱しめを受けるに違いない……と、早足になっても静華は負けじと同じスピードで付いてくる。
「もういじめたりしないからさぁ、だって私このまま帰ったら寂しいもん」
「うっ……」
静華の「寂しい」に俺の足はピタリと止まり、文字通り俺は「ぐぬぬ」となった。
寂しさを埋める為に煙草の本数を増やしていたような女なのだから、俺と付き合っている間その言葉にどれほどの拘束力を持っていたか……静華はちゃんと覚えているのだ。
仕方なしに俺は腕時計の長針が12を指すまでの5分間、ゲーセンの照明が足元に当たるくらいの位置に立って静華の言うことを聞くことにした。
「1つ質問していい?」
静華は俺の立ち止まった位置に不満を言う事なく、笑い顔を向けそう言ってくる。
「なんだよ」
静華から香る臭いの所為で、こっちは静華のような表情を作る事が出来ない……高校当時、周囲から口々に言われていた「不機嫌顔」かつ「偏頭痛」の状態で俺は静華の顔を見た。
その顔や口調は当時の俺を知らない者が見たら本当に機嫌の悪い中年男だと思うんだろう。しかしそれを「普段の俺」と認識している静華は平然とした様子でいる。
「みなとっちと付き合ってる間、煙草の本数減らしてたの……気付いてた?」
静華のその問いに対し、俺は頷く。
高2の春にあの会話を交わした手前、静華が実際本数を減らしていた努力に気付きつつも……俺はどう反応すれば良いのか分からず、敢えてそれには触れずに静華と接していた。
「もしかして……褒めてほしかったとか?」
思えば俺にはそういう配慮が足りなかったと当時を振り返り軽い反省を自分の中だけでしていると
「なんだかんだいって私も女だからね。普通の彼女らしく唇のキスをしたかったし、愛されてるって実感出来るセックスもしたかった」
と静華は語る。
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