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俺と彼女と彼女の事情
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「2人の言う通りだよ。始業時間直前の本社フロア全体に響き渡るくらいの大声で穂高所長が驚いたんだ。『広瀬、お前JKと付き合ってんのかーーーーーーーー!!!!!!』って」
それが、俺と夏実の交際が会社バレした理由だった。
花火大会の日は夏実も大人っぽい柄の浴衣を身に付けヘアメイクも落ち着いたまとめ髪にしていたから、彼もまさか俺の隣にいた女性が高校生だとは思わなかったんだろう。夜の暗さで顔がハッキリ見える訳じゃなかったし、余計にだ。
だからこそジュン先輩は真面目な俺が付き合う女性は20代のごく普通な女性だと思い込み、始業時間前の社内という空間であっても軽い気持ちで俺に絡んできたのだと俺も推測する。
もし花火大会ではなく真っ昼間の街中で俺と夏実を見掛けたとしたら、先輩だって色んな空気を読んであんな風に会社で絡むなんて行動は取らなかったのではないだろうか。
「なぁんか、ウケますねその状況……しかも本社所属の社員みんなそこに居たんですよね?私も居たかったなぁその場に。めちゃくちゃ面白そう♪」
自分語りを中断して俺に話を振った森田さんは、俺の話が終わった後しばらくは菓子に手をつける事なくお腹を抱えて笑っていた。
「あー、主任と所長とのそんな面白話聞いちゃったら自分の話しにくくなっちゃった」
と、明るく呟いたので俺も村川くんも彼女を心配する表情になる。
「森田さん大丈夫ですよ、無理に話して下さらなくても何となくで分かりますから」
「俺も、ただでさえ森田さんに悪いことしてる身として、『自分で話して自分で傷付く』みたいな真似を森田さんにしてもらいたくないし」
「優しいですね、主任も村川くんも。可愛くて素敵なパートナーがいる理由も分かります」
「いやいや、森田さんだって自分のあの過去を話すのだって勇気がいる事だと思うからね」
「別れちゃった男の事で森田さんは心を乱す必要はありません。俺もなんとなーく大阪の矢野橋さんがジュンさんの100万倍ゲスで酷い人って事くらいは察せますから」
「とにかく矢野橋は入社時から俺に執着してるんだ『俺にJKの彼女が出来た』と知れば、可愛い森田さんに『正式に付き合おう』って彼女持ち状態にするし、『俺がそのJKと結婚する為に引っ越しした』なんて知れば、その場に居る女性社員と関係やらなんやら持ってSNSで交際宣言が出来てしまうし、通勤電車の件で俺を貶める事もしてしまう男なんだ」
「私も今朝、鏑木さんと矢野橋さんが交際宣言みたいなのをSNSでしたって知った時、『あの人またやってる』って思いました。
私と付き合ってる時も主任の悪口言ってて『広瀬サゲ自分アゲ』ばっかりしてて、私もそれを真に受けて……もう洗脳ですよあれは。途中で私は正気に戻れて、矢野橋さん殴って別れられたから良かったけど。多分鏑木さん、矢野橋さんと一緒に住み始めたのかも。『主任が引っ越ししてなつこちゃんと住み始める』って知ったらそういう行動に本気で出る人ですから」
俺の先程の発言は森田さんの心を抉る行動に当たるのではないかと心配したが、苦しい表情をする事も甘い菓子に手をつける事もなく淡々とそう述べたので、森田さんにとってその件はデトックス済みだったようで少し安心する。
「……なんか話ずっと聞いてると矢野橋さん、冗談抜きでめちゃくちゃ悪い男じゃないですか。森田さんが大阪に居られないようにしたのって今日の話からして森田さんに振られたのが原因みたいだし、そもそも広瀬さんに嫉妬心剥き出しにして女々しいし」
村川くんはまた奥歯を噛み締める顔をした。
「でもね村川くん。我々は立場上、そういう態度を取ってはいけないんだ」
しかし、ここまで話しておいて無茶な話を俺はする。
「なんでですか? 人間なら感情が動くでしょう?」
「年齢の若い君にここまで話を聞かせておいてこんな事を言うのは酷だと思う……でも村川くんは賢い人だと判断しているから野崎さんの話もしたし森田さんとの話にも付き添ってもらったんだ。森田さんの話の聞き役になるのは本来俺だけで良い筈なんだから」
村川くんは夏実同様賢く素直な人間だ。
野崎さんの教育係に俺は失敗してしまったけれど、教育係3年目の経験からして彼への指導は業務以外の面でも失敗してないのではないかと自負している。
「うちの会社みたいな規模の小さな会社はね、社員が皆結束して助け合いながら仕事に取り組まなければならない。だからこそアットホームな雰囲気になりがちだし、特に俺みたいな真面目なフリしてアブノーマルな恋愛嗜好を持つ男はプライバシーがダダ漏れしやすいし揶揄されやすい……でも皆大人だからそこと仕事上とは区別して俺に接してくれるんだ。だから俺もそこを踏まえて皆に感謝しながら仕事をしているし、俺も俺で他者に嫌悪も憎悪も向ける事なく仕事しているつもりだよ」
それが、俺と夏実の交際が会社バレした理由だった。
花火大会の日は夏実も大人っぽい柄の浴衣を身に付けヘアメイクも落ち着いたまとめ髪にしていたから、彼もまさか俺の隣にいた女性が高校生だとは思わなかったんだろう。夜の暗さで顔がハッキリ見える訳じゃなかったし、余計にだ。
だからこそジュン先輩は真面目な俺が付き合う女性は20代のごく普通な女性だと思い込み、始業時間前の社内という空間であっても軽い気持ちで俺に絡んできたのだと俺も推測する。
もし花火大会ではなく真っ昼間の街中で俺と夏実を見掛けたとしたら、先輩だって色んな空気を読んであんな風に会社で絡むなんて行動は取らなかったのではないだろうか。
「なぁんか、ウケますねその状況……しかも本社所属の社員みんなそこに居たんですよね?私も居たかったなぁその場に。めちゃくちゃ面白そう♪」
自分語りを中断して俺に話を振った森田さんは、俺の話が終わった後しばらくは菓子に手をつける事なくお腹を抱えて笑っていた。
「あー、主任と所長とのそんな面白話聞いちゃったら自分の話しにくくなっちゃった」
と、明るく呟いたので俺も村川くんも彼女を心配する表情になる。
「森田さん大丈夫ですよ、無理に話して下さらなくても何となくで分かりますから」
「俺も、ただでさえ森田さんに悪いことしてる身として、『自分で話して自分で傷付く』みたいな真似を森田さんにしてもらいたくないし」
「優しいですね、主任も村川くんも。可愛くて素敵なパートナーがいる理由も分かります」
「いやいや、森田さんだって自分のあの過去を話すのだって勇気がいる事だと思うからね」
「別れちゃった男の事で森田さんは心を乱す必要はありません。俺もなんとなーく大阪の矢野橋さんがジュンさんの100万倍ゲスで酷い人って事くらいは察せますから」
「とにかく矢野橋は入社時から俺に執着してるんだ『俺にJKの彼女が出来た』と知れば、可愛い森田さんに『正式に付き合おう』って彼女持ち状態にするし、『俺がそのJKと結婚する為に引っ越しした』なんて知れば、その場に居る女性社員と関係やらなんやら持ってSNSで交際宣言が出来てしまうし、通勤電車の件で俺を貶める事もしてしまう男なんだ」
「私も今朝、鏑木さんと矢野橋さんが交際宣言みたいなのをSNSでしたって知った時、『あの人またやってる』って思いました。
私と付き合ってる時も主任の悪口言ってて『広瀬サゲ自分アゲ』ばっかりしてて、私もそれを真に受けて……もう洗脳ですよあれは。途中で私は正気に戻れて、矢野橋さん殴って別れられたから良かったけど。多分鏑木さん、矢野橋さんと一緒に住み始めたのかも。『主任が引っ越ししてなつこちゃんと住み始める』って知ったらそういう行動に本気で出る人ですから」
俺の先程の発言は森田さんの心を抉る行動に当たるのではないかと心配したが、苦しい表情をする事も甘い菓子に手をつける事もなく淡々とそう述べたので、森田さんにとってその件はデトックス済みだったようで少し安心する。
「……なんか話ずっと聞いてると矢野橋さん、冗談抜きでめちゃくちゃ悪い男じゃないですか。森田さんが大阪に居られないようにしたのって今日の話からして森田さんに振られたのが原因みたいだし、そもそも広瀬さんに嫉妬心剥き出しにして女々しいし」
村川くんはまた奥歯を噛み締める顔をした。
「でもね村川くん。我々は立場上、そういう態度を取ってはいけないんだ」
しかし、ここまで話しておいて無茶な話を俺はする。
「なんでですか? 人間なら感情が動くでしょう?」
「年齢の若い君にここまで話を聞かせておいてこんな事を言うのは酷だと思う……でも村川くんは賢い人だと判断しているから野崎さんの話もしたし森田さんとの話にも付き添ってもらったんだ。森田さんの話の聞き役になるのは本来俺だけで良い筈なんだから」
村川くんは夏実同様賢く素直な人間だ。
野崎さんの教育係に俺は失敗してしまったけれど、教育係3年目の経験からして彼への指導は業務以外の面でも失敗してないのではないかと自負している。
「うちの会社みたいな規模の小さな会社はね、社員が皆結束して助け合いながら仕事に取り組まなければならない。だからこそアットホームな雰囲気になりがちだし、特に俺みたいな真面目なフリしてアブノーマルな恋愛嗜好を持つ男はプライバシーがダダ漏れしやすいし揶揄されやすい……でも皆大人だからそこと仕事上とは区別して俺に接してくれるんだ。だから俺もそこを踏まえて皆に感謝しながら仕事をしているし、俺も俺で他者に嫌悪も憎悪も向ける事なく仕事しているつもりだよ」
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