151 / 317
可愛い彼女と俺の恋
15
しおりを挟む
倒れた2回目は高橋部長から思い出話として聞かされるまで一時忘れていた癖に、何故か視界全体に映る夏実の泣き顔だけはハッキリ覚えていて俺の記憶中枢はどうなっているんだと自問したい。
「いたかったけど、いてほしい」
回想から意識を脱け出す俺の口は、現実の夏実にそう呟いた。
「え? だって重かったでしょ?」
夏実の身体は、既に横たわる俺から離れて頭を撫で続けている。
「夏実は重くないよ。重いのは、俺の想いの方だから」
頭に置かれてる白い手を取って、それを頰に当てて訳の分からない事を言う俺の真意は夏実には伝わらないだろう。
「湊人、何言って……?」
首を傾げる夏実を俺の身の上にゆっくりと乗せて……俺は7年前に言えなかった言葉を発した。
「ありがとう、俺を心配してくれてずっと見続けていてくれて。俺は、そんな夏実がこの世で一番大好きだよ」
本来ならそこで「本当は夏実よりもずっとずっと前から俺の方が好きだった」と真実を伝えれば良かったのに、何故か素直になれなかった。
7年前夏実の目が成し得た涙の行為が今の俺に出来なかったのは、恐らくそれが原因なのかもしれない。
「…………」
俺の言葉に黙り込む夏実に
「少しは王子っぽい事言えた?」
と笑ってみせると
「んもぅ♡」
と夏実は短く言って俺の唇の上に可愛らしいキスを落とす。
(ごめん夏実。口では「王子の幻想を抱くな」と言っておきながら、心の底では「夏実の恋心の中だけでも王子であり続けたい」と自ら願っているんだ。
醜くて汚らしいエゴだよな、こんな想い。
でも……こんな俺は夏実の事が大好きで、大事にしたくて、心の底から愛しているんだよ)
両腕で夏実の身体を包み込むように抱き寄せ、一旦その可愛い顔を視界全体に収めた後……。
目を閉じて自分の世界を可愛い夏実の笑顔でいっぱいにさせながら、可愛い頭を自分の方に引き寄せ……精一杯愛をもって水蜜桃の甘い蜜を舌で慈しむ。
「んぅぅ♡」
甘い蜜は可愛い舌と共に俺の舌へと絡んでトクトクと喉奥へと流し込まれるから……目を閉じていてもそれは桃の果実というガキの記憶ではなく、「夏実」という現実そのものなのだと理解が出来た。
ひとしきり舌の愛撫で甘い蜜を楽しんだ後で俺も風呂に入り身支度を済ませる。
「夏実? 何してる?」
洗面所を出てリビングを覗いたらまた消灯されていたので、寝室の方へと俺の足は向いてドアをゆっくりと開け彼女に声をかけた。
「茉莉ちゃんや滉くんとグループトークしてるー」
夏実はベッドの上にぺたん座りをするもののドア側に背を向けてスマホを弄って俺にそう返答する。
「どうせ俺の悪口で盛り上がってんだろ」
俺もベッドに上がって、スマホ画面を見ないように配慮しつつ可愛い肩の筋肉を揉み始めた。
「んぁん♪ ……違うよぅ。湊人の事、2人共褒めてるもぉん」
マッサージの気持ち良さが混じった甘い声を出す夏実は、俺にスマホの画面が見えるように向けてきた。
「高校生同士のトーク画面なんて見ていいのか?」
「大丈夫だよぅ。ってか、大丈夫だから見せるんだし!」
夏実は口を尖らせて台詞後半を茉莉みたいな口調で俺にそう言う。
「ほんとだ」
彼女の言う通り、トーク画面は俺の褒めワード満載で文字やスタンプが並べられている。
「でしょ? 特に茉莉ちゃんは湊人のノートが気に入ったみたい」
「あいつ文系なのに全部持って帰っていったぞ」
「あとで滉くんに渡す気なんじゃない?」
「いや、滉は全く興味示してなくて予備校のテキストで勉強してたけど」
「じゃあ二学期始まったら渡すのかも」
「渡すのは固定なんだな。滉は受け取らないよ絶対」
「いや、絶対受け取るっ! 滉くんは素直じゃないところもあるからねー♪」
「ふぅん」
俺とそこまで喋ると夏実はスマホをパタッと伏せて俺に振り返り「ふふふ」と微笑む。
「素直じゃない繋がりで湊人に教えてあげる。
今日の集まりでね、お母さんがずーっと湊人の事を褒めてたんだよ。」
「褒めてた? 晴美さんが??!」
夏実の発言が信じられなくて、彼女の肩をマッサージしていた自分の手を止める。
「昨日の夜のお母さん、ピリピリしながら『結婚の話は今年しない。事後報告にする』って言ってた癖に、お昼にはペラペラ喋っちゃうんだから! 私もお父さんもビックリしちゃったよ!!」
「えぇ!? 晴美さん、夏実の結婚の事親戚にもう話したのか??」
「そうなの。具体的な日にちとか決めてないのにだよ!? しかも相手が30歳って事まで言っちゃうしさぁ……お母さんの名誉の為に今まで付き合ってる事も内緒にしてたのにおかげで全員から私質問責めに遭ったんだから!!」
「質問責めって……夏実も晴美さんも絶対嫌な思いしたんじゃないか?」
保守的な親戚連中の前で「18の娘が30の中年男と来年結婚する」なんて発表したらどんな目に遭うかその場に居なくても想像がつく。
しかもそういうシチュエーション、晴美さんが一番嫌いとするものだ。今まで三男の嫁という立場にありながら「舐められないように蔑まれないように、粛々とその時間をやり過ごす」をモットーとして毎年この時期を過ごしてきていたのに。
……実際、直くんの一件で少なくとも一度は母親としてそういう経験を経てきたというのに。
「確かに色々言われたけど、大半は『何故そんなに良い人なのに付き合ってる事黙ってるのか』って言われたかなぁ」
「へ? 俺、良い人扱いなのか?」
だから余計に夏実の言葉に拍子抜けした。
「いたかったけど、いてほしい」
回想から意識を脱け出す俺の口は、現実の夏実にそう呟いた。
「え? だって重かったでしょ?」
夏実の身体は、既に横たわる俺から離れて頭を撫で続けている。
「夏実は重くないよ。重いのは、俺の想いの方だから」
頭に置かれてる白い手を取って、それを頰に当てて訳の分からない事を言う俺の真意は夏実には伝わらないだろう。
「湊人、何言って……?」
首を傾げる夏実を俺の身の上にゆっくりと乗せて……俺は7年前に言えなかった言葉を発した。
「ありがとう、俺を心配してくれてずっと見続けていてくれて。俺は、そんな夏実がこの世で一番大好きだよ」
本来ならそこで「本当は夏実よりもずっとずっと前から俺の方が好きだった」と真実を伝えれば良かったのに、何故か素直になれなかった。
7年前夏実の目が成し得た涙の行為が今の俺に出来なかったのは、恐らくそれが原因なのかもしれない。
「…………」
俺の言葉に黙り込む夏実に
「少しは王子っぽい事言えた?」
と笑ってみせると
「んもぅ♡」
と夏実は短く言って俺の唇の上に可愛らしいキスを落とす。
(ごめん夏実。口では「王子の幻想を抱くな」と言っておきながら、心の底では「夏実の恋心の中だけでも王子であり続けたい」と自ら願っているんだ。
醜くて汚らしいエゴだよな、こんな想い。
でも……こんな俺は夏実の事が大好きで、大事にしたくて、心の底から愛しているんだよ)
両腕で夏実の身体を包み込むように抱き寄せ、一旦その可愛い顔を視界全体に収めた後……。
目を閉じて自分の世界を可愛い夏実の笑顔でいっぱいにさせながら、可愛い頭を自分の方に引き寄せ……精一杯愛をもって水蜜桃の甘い蜜を舌で慈しむ。
「んぅぅ♡」
甘い蜜は可愛い舌と共に俺の舌へと絡んでトクトクと喉奥へと流し込まれるから……目を閉じていてもそれは桃の果実というガキの記憶ではなく、「夏実」という現実そのものなのだと理解が出来た。
ひとしきり舌の愛撫で甘い蜜を楽しんだ後で俺も風呂に入り身支度を済ませる。
「夏実? 何してる?」
洗面所を出てリビングを覗いたらまた消灯されていたので、寝室の方へと俺の足は向いてドアをゆっくりと開け彼女に声をかけた。
「茉莉ちゃんや滉くんとグループトークしてるー」
夏実はベッドの上にぺたん座りをするもののドア側に背を向けてスマホを弄って俺にそう返答する。
「どうせ俺の悪口で盛り上がってんだろ」
俺もベッドに上がって、スマホ画面を見ないように配慮しつつ可愛い肩の筋肉を揉み始めた。
「んぁん♪ ……違うよぅ。湊人の事、2人共褒めてるもぉん」
マッサージの気持ち良さが混じった甘い声を出す夏実は、俺にスマホの画面が見えるように向けてきた。
「高校生同士のトーク画面なんて見ていいのか?」
「大丈夫だよぅ。ってか、大丈夫だから見せるんだし!」
夏実は口を尖らせて台詞後半を茉莉みたいな口調で俺にそう言う。
「ほんとだ」
彼女の言う通り、トーク画面は俺の褒めワード満載で文字やスタンプが並べられている。
「でしょ? 特に茉莉ちゃんは湊人のノートが気に入ったみたい」
「あいつ文系なのに全部持って帰っていったぞ」
「あとで滉くんに渡す気なんじゃない?」
「いや、滉は全く興味示してなくて予備校のテキストで勉強してたけど」
「じゃあ二学期始まったら渡すのかも」
「渡すのは固定なんだな。滉は受け取らないよ絶対」
「いや、絶対受け取るっ! 滉くんは素直じゃないところもあるからねー♪」
「ふぅん」
俺とそこまで喋ると夏実はスマホをパタッと伏せて俺に振り返り「ふふふ」と微笑む。
「素直じゃない繋がりで湊人に教えてあげる。
今日の集まりでね、お母さんがずーっと湊人の事を褒めてたんだよ。」
「褒めてた? 晴美さんが??!」
夏実の発言が信じられなくて、彼女の肩をマッサージしていた自分の手を止める。
「昨日の夜のお母さん、ピリピリしながら『結婚の話は今年しない。事後報告にする』って言ってた癖に、お昼にはペラペラ喋っちゃうんだから! 私もお父さんもビックリしちゃったよ!!」
「えぇ!? 晴美さん、夏実の結婚の事親戚にもう話したのか??」
「そうなの。具体的な日にちとか決めてないのにだよ!? しかも相手が30歳って事まで言っちゃうしさぁ……お母さんの名誉の為に今まで付き合ってる事も内緒にしてたのにおかげで全員から私質問責めに遭ったんだから!!」
「質問責めって……夏実も晴美さんも絶対嫌な思いしたんじゃないか?」
保守的な親戚連中の前で「18の娘が30の中年男と来年結婚する」なんて発表したらどんな目に遭うかその場に居なくても想像がつく。
しかもそういうシチュエーション、晴美さんが一番嫌いとするものだ。今まで三男の嫁という立場にありながら「舐められないように蔑まれないように、粛々とその時間をやり過ごす」をモットーとして毎年この時期を過ごしてきていたのに。
……実際、直くんの一件で少なくとも一度は母親としてそういう経験を経てきたというのに。
「確かに色々言われたけど、大半は『何故そんなに良い人なのに付き合ってる事黙ってるのか』って言われたかなぁ」
「へ? 俺、良い人扱いなのか?」
だから余計に夏実の言葉に拍子抜けした。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる